セラーナ
「な・・・何をしているんですの?」
倒したドラゴンから魂を吸収する椿を見て、セラーナが言う。
一緒に行動し始めてから、彼女がドラゴンを見るのは初めてのことである。
椿
「うーん、私も良く分かってないんだけど・・・」
椿は自分がドラゴンボーンである事を説明したが、その説明はかなりあやふやだった。
椿自身、何故「自分なのか」わかっていない。
セラーナ
「ドラゴンボーン・・・と言う事は、椿も『スゥーム(シャウト)』を使えますの?」
椿
「一応ね。でもノドが痛くなるし、私には過ぎた力だと思ってるから。」
セラーナ
「椿はドラゴンが怖くありませんの?」
椿
「最初は怖かったよ~!
なんていうか、『蛇に睨まれたカエル』になった気分だった。」
セラーナ
「ですわよね・・・。」
椿
「でもドラゴンが町を焼いているのを見て、何とかしなきゃって思ったの。」
セラーナ
「理不尽な世界ですわね・・普通の女の子がある日突然凶悪なドラゴンと対峙する・・・。」
椿
「あはは!女の子なんて柄じゃないよ~。」
セラーナ
「投げ出したくなったりはしませんでしたの?」
椿
「どうかなぁ・・・色んな人に聞かれるけど、不思議とそう思わなかったんだよね。
まあ、内乱で国境が封鎖されてから帰れなくなってるのも事実だけど・・・。」
セラーナ
「反逆を起こしたのは・・・ウルフリック・・・でしたっけ?」
椿
「そうそう!スカイリムにいるノルドの大半は彼を支持してるみたい。
・・・というよりタロスを、かも。」
セラーナ
「全く鎮圧できて居ない所を見ると、シロディールの帝国は及び腰なのかしら?」
椿
「ソリチュードにいるテュリウス将軍も
こんなに手こずるとは思って居なかったんじゃないかな。
スカイリムは領土が大きいから、その分反乱軍に加担する人も多いわけだし・・・。」
セラーナ
「噂をすれば、ウィンドへルムですわね」
椿
「おっと・・・声を落としていこ・・・!」
セラーナ
「スカイリムはノルドのものだ!」
椿
「似てる似てるw」
セラーナ
「椿達が帝国を支持する理由は?」
椿
「ストームクロークを支持する理由がないから・・・かな?
シャリーはアルドメリを毛嫌いしてるけど、帝国は秩序のために必要だって言ってた。
メアリーはノルドだけど、ハイロック生まれのハイロック育ちだしね。
それに、私はアカヴィリの家系らしいし。」
セラーナ
「アカヴィリ・・・本当に!?」
椿
「もうすっかりブレトンだけどね(笑)」
椿
「けどまあ、自警団はこの内乱に関わらないよ。」
セラーナ
「そんな義理ありませんわ」
椿
「所詮よそ者だからね(笑)
親父さんも中立を保ってるし。」
セラーナ
「確か、ホワイトランの首長ですわね」
椿
「そうそう!なんかお父さんみたいな人だなって思う時があるんだよね。」
セラーナ
「あらあら、お父様が聞いたらやきもちを焼くんではなくって?」
椿
「・・・・・。」
セラーナ
「・・・椿?」
椿
「ヒイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
セラーナ
「椿はお父さんっ子だったのかしら?」
椿
「お母さんの方が大好き!」
セラーナ
「即答ですわね(笑)」
椿
「もちろん2人とも好きなんだけどね(笑)」
椿
「セラーナは、お母さんとは仲良かったの?」
セラーナ
「親友みたいな存在でしたわ・・・母となら、何でも話し合えた。
一緒に母の庭園を歩いたり、錬金術の仕方を教えてくれたり。
母は優しく、偉大な人でした。
・・・全てが変わってしまうまでは。」
椿
「・・・何があったんだろうね・・・?」
セラーナ
「本当に突然でしたの。普通の家族が丸一日立つと赤の他人同士・・・・。そんな感じでしたわ。」
セラーナ
「その日は確か・・・庭園にいる、母の所へ行こうとしましたの。すると彼女は、『忙しい』と言ってわたしをすぐ追い払ったのですわ」
椿
「なるほど、怪しいね・・・それがそこに向かってる理由だね?」
セラーナ
「ええ、母はあの庭で何かをしていたはずですわ。おそらくはそれが、母の居場所を見つける手がかりになるかと踏んでおりましてよ。」
セラーナ
(お母様・・・どうか無事で・・・。)
椿
「ごめん、思い出させちゃったね。」
セラーナ
「いいえ、大丈夫。聞いてくれてありがとう。」
椿、セラーナ
「・・・。」
セラーナ
「・・・椿、あなたの馬がどこか行ってますわ・・・。」
椿
「え!?」
椿
「こら!ベル子!戻ってきなさい!」
ベル子
「ヒヒーン・・・」ショボーン
椿
「もーう!目を離したらすぐにこれなんだから!」
セラーナ
「自由な子なのですわね(笑)」
椿
「ほら、火の傍へおいで?」
ベル子
「ブルルル」
セラーナ
「ひょっとして、飼い主に似たんではなくって?」
椿
「どう言う意味?」ニッコリ
セラーナ
「さあ、今日はゆっくり眠っておきなさいな」
椿
「そうしよっか~」zzz
セラーナ
「おやすみなさい」
椿
「・・・って、セラーナは眠らないの?」
セラーナ
「ええ、吸血鬼が眠るときは『棺の中』ですわ」
椿
「ほんとに?てっきりただの作り話かと思ってた・・・」
セラーナ
「まあ、そもそも眠気を感じにくいので・・・気にせずに椿は休んでおいた方がいいですわ」
椿
「気が引けるなあ・・・zzz」
セラーナ
「早いですわ」
次の日―。
椿
「ああ・・・首がいたい・・・」
セラーナ
「おはよう、椿」
椿
「おはよう~・・・火を守っててくれたんだ、ありがとう!」
セラーナ
「どういたしまして。もっとも、他にする事もないですしね(笑)」
椿
「さ、出発しよ!」
セラーナ
「いつでもよしなに。準備は出来ておりますわ」
椿
「運命ってふしぎだね」
セラーナ
「あら、突然どうしまして?」
椿
「わたしがスカイリムから早々に引き上げていたら、セラーナはまだあの暗い棺桶の中だった訳でしょ?お互い存在も知らないまま・・・そんなの寂しいよね。」
セラーナ
「たしかに・・・。あの棺を開けてくれたのが椿達で良かったですわ。
正直あなたの顔を見た時、なぜかホッとしましたの。」
椿
「なら嬉しいな。
正直、怖がらせちゃったと思ってたよ(笑)」
セラーナ
「全然。あなたは人の良さが顔から出ておりますもの(笑)」
椿
「そんなの初めて言われたよ(笑)」
椿
「ありゃ?道を間違えちゃったみたい・・・」
セラーナ
「対岸に見える場所・・あれはあの時通った道?」
椿
「うん、前はもっと迂回したんだねー・・・。仕方ないか、戻ろ!」
セラーナ
「その必要はなくってよ」
椿
「ええ!!??ウソ!?」
セラーナ
「ほら、行きますわよ!」
椿
「さ、寒いんじゃ・・・」
セラーナ
「着いてらっしゃいな」
椿
「ハァ・・・仕方ないか・・・。
行くよ、ベル子・・・」
ベル子
「ヒヒ~ン・・・」
椿
「「くううううう・・・さ”・・・さ”む”い”い”い”い”!!!!」」
セラーナ
「そうだ、舟歌でも歌いましょう!
I thought I heard the Old Man say♪」
椿
「「り・・・りーぶはーじゃーにーりーぶはー・・・」」
つづく