親父さんが言うにはこうだ。


「君たちは正規の帝国軍では無いのでホワイトラン衛兵隊という扱いはしてやれないが、従士率いる自警団としての活動ならばこちらからの援助も行える」 と。


椿は内心かなり喜んだ。

バルグルーフの約束した内容は傭兵稼業とは違い、安定した収入が期待できるからだ。


ただし、その分今まで以上に頑張らないとね。


自分の心にそう語りかけ、椿は気を引き締める。

なんせ相手は吸血鬼だ。

恐らくタムリエルでももっとも忌み嫌われる、『サングイネア吸血症』の発生源でもある。

さらに人に紛れ、姿をくらます事に長けているのだからドラゴンより危険な存在と言えるだろう。




衛兵

「おお、椿さん!聞きましたよ、哨戒活動に助力して下さるそうで!」


椿

「はい、微力ですけどお手伝いさせてもらいます」


衛兵

「いやあ、首長の次は椿さんとは!これで我々哨戒部隊の士気もMAXですよ!」


椿

「あはは、お互い気を付けましょうね!」


椿達3人は、その容姿からかホワイトラン衛兵の間で妙な人気があった。

従士と言う肩書きを知らなかった者ですら、よそ者である彼女たちを同族のように受け入れてくれている。

もっとも、だからこそ椿達もホワイトランに貢献したいと考えるようになったのだが。





椿達が哨戒活動に加わってからすぐに、事件は起きた。

森の中から悲鳴が聞こえ、複数の足音が聞こえたのだ。


彼女たちが駆けつけると、一人の狩人が慌てた様子でこちらに走ってくる。


狩人

「助けて!吸血鬼に襲われたの!!」


椿

「落ち着いて、どこで襲われたの?」


狩人が言うには、丘を越えた先で一団に襲われたのだと言う。

仲間の狩人が次々にやられ、命からがら逃げ出したそうだ。


シャル

「とりあえず、手当てをしなさい」


シャルロットがそう言い、あらゆる疾病に効く薬を狩人に手渡した。

サングイネア吸血症も、初期段階ならこれで治療が出来る。


メアリー

「とりあえず、早く近くの村まで逃げときな。あたしらが始末しとくからさ」


メアリーがそう言うと、狩人の女性は礼を言って走っていった。




なんでや!サルモール関係無いやろ!




狩人の言っていた丘に到達すると同時に、見たことも無いモンスターが襲い掛かってきた。

どうやらこの犬のような生き物は、狩人の死体を食べていたようである。

3人はすぐに応戦し、生存者の確認を急いだ。


「・・・うぅ・・・・」


倒れている狩猟団の一人が、声を上げる。


メアリー

「椿!シャル!生存者だ!!」


メアリーの叫びに椿とシャルロットも駆け寄る。


椿

「大丈夫!?今すぐ手当てを!」


椿はそこまで言ってふいに言葉を止める。

狩人が何か訴えようとしているのだ。


「あ・・・あいつらは・・・・」パクパク


虫の息・・・と言えばわかるだろうか。

死にかけたその男から発せられる言葉は、ほとんどが風にかき消されてしまう。


狩人

「きゅ・・・吸血・・・鬼・・・の・・・猟犬・・・」

「襲わせて・・・・血を・・・・」


男はそこまで言って事切れてしまった。

吸血鬼の猟犬?

奴らはこの狩猟団を襲わせて血を飲んでいたと?


3人は顔を見合わせた。

これは一刻も早く手を打つ必要がある。

これ以上犠牲を出すわけにはいかない。




その晩から、彼女たちはホワイトランからロリクステッド、果てやリバーウッドまでの夜間警備に当たることにした。

バルグルーフもそれに合わせて衛兵の配置を変えたようだ。

吸血鬼の脅威を微塵も感じていなかった先日までに比べて、夜がとてつもなく恐ろしく感じた・・・。


つづく




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