憲章守る多国間協力が本流だ

 ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会で9月22~28日に行われた一般討論演説は、戦争と平和、「力による支配」と「法の支配」を巡って鋭く対決する場となりました。トランプ米大統領が「法の支配」や主権平等を否定する暴論を展開したのに対し、多くの国の首脳らが国連憲章・国際法の順守を強調しました。国連を中心とする多国間協力こそ本流です。

■今すぐ行動始めよ

 国連はさまざまな逆流に直面しています。

 米国はガザ地区を攻撃するイスラエルを支援し、同国とともにイランを攻撃しました。トランプ大統領は国際刑事裁判所(ICC)からの脱退を各国に求めています。演説ではICCを「ならず者機関」と誹謗(ひぼう)しました。イランの「壊滅」やキューバの体制転換も主張しました。

 ロシアのラブロフ外相は演説でウクライナ侵略を正当化しました。安全保障理事会常任理事国のうち2カ国が国連憲章を公然と踏みにじる重大な事態です。

 トランプ大統領の演説に対し、オランダのイエッテン首相は第2次世界大戦後に戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判と東京裁判が礎となってICCが生まれたとし、「ICCに手を出すな」と厳しく批判しました。

 「世界をよくするために今すぐ行動を始められるなんて、なんとすばらしいことでしょう」―同首相は、ナチスによって迫害死させられたユダヤ人少女、アンネ・フランクの日記を引用し、世界がただちに立ち上がるよう呼びかけて拍手を浴びました。

 そのほか多くの首脳がICC支持を表明し、国連憲章に基づく国際秩序を守るよう求めました。

 独立戦争と国際社会の支援によって独立を達成したナミビアのナンディヌダイトワ大統領は建国の歴史を振り返り、「だからこそ、われわれは国際システムの解体、弱体化の傍観者であってはならない」と述べました。

 ブルネイのマティーン外相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)による東南アジア友好協力条約(TAC)の取り組みをあげて、ルールの尊重と対話の重要性を指摘しました。

 イスラエルのネタニヤフ首相はガザ攻撃について「ほかに選択肢はない」と言い張りましたが、各国がいっせいに退席し国際社会の怒りを示しました。

■「法の支配」こそ

 今や一握りの大国が力で世界を支配できる時代ではありません。ウクライナ、ガザ、イランの事態は、国連憲章、国際法に基づく「法の支配」による解決しか道がないことを浮き彫りにしています。

 高市早苗首相は演説で一応「法の支配」に言及したものの、ICC脱退を求める米国への批判はまったくありませんでした。赤根智子ICC所長に米国が「制裁」を科していることに対し、トランプ大統領との会談でも撤回を求めませんでした。所長の出身国首脳として恥ずべきことです。日本政府は世界の流れを直視し、日米同盟絶対の立場から抜け出すべきです。