成長を感じた日本の選手に拍手を送り、アフリカの小さな国の頑張りに感動を覚え、強豪国のひりひりする勝負に息をのむ―。39日間のサッカーの旅が終わりました。

 ワールドカップ(W杯)北中米大会(カナダ、米国、メキシコ)は19日(日本時間20日)、スペインの2度目の優勝で幕を閉じました。輝く選手のプレー、手に汗握る好勝負が多かったこととは対照的に、重くのしかかったのはスポーツを破壊し、もうけ本位の道を突き進む異常な大会のあり方でした。

 最大の問題は、政治権力によるスポーツへの露骨な介入を許したことです。トランプ米大統領が米国代表選手のレッドカードを不服として、国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長に働きかけ、出場停止が猶予されました。

■歴史的な汚点残す

 開催国の大統領の要請政治介入そのものです。大会の公平公正性はなきものにされました。ルールの下でフェアにたたかうというスポーツの本質、価値を根底から揺るがす暴挙で、W杯の歴史的汚点となりました。

 同会長は昨年末、独自に「平和賞」をトランプ氏に授与するなど、そのすり寄りぶりが際立っていました。その責任は重大です。

 FIFAの金満体質も目に余る事態となっています。

 その最たるものがチケットの高騰です。過去にない高額な値段設定に加え、需要で価格が上下する変動価格制を導入するなど、高額化の仕組みまでつくりました。決勝の平均価格が約250万円になるなど、「世界のファンから観戦する権利を奪っている」との厳しい声が上がったのは当然です。

 暑さに配慮するとして前後半に1回3分ずつ「飲水タイム」が設けられました。しかし、それが必要な暑い試合は多くなく、一律に設けたのはテレビCMを入れるためで、「新たな商業機会を生み出した」(英BBC)と指摘されています。これを機に試合の流れが変わるなど、サッカーの本質にかかわる問題があり今後、十分な検討が求められます。

■世界の声で転換を

 FIFAは今大会を含めた2023年からの4年間で150億ドル(約2兆4300億円)と収益の上方修正を見込んでいます。これはその前の4年間の2倍以上にのぼります。サッカーをゆがめ、ファンを犠牲にしながら莫大(ばくだい)な収益を上げることの是非が鋭く問われています。

 W杯が深刻な岐路にある現実を、大会は浮かびあがらせました。しかし、サッカーもW杯も一部の人の所有物ではありません。世界の人々のものです。

 表彰式で米大統領FIFA会長が入場した際、スタジアムは大きなブーイングに包まれました。これはサッカーをみつめる世界の人々の怒りの声です。

 FIFAが今回の運営のあり方を検証し、自浄能力を発揮できるのか―。公平、公正な組織運営、サッカーの発展を願う世界の良識ある声が、転換を促す確かな力となるはずです。