歴史の岐路 希望の明日を切り開く生き方を
幹部会委員長 田村智子

 日本共産党の田村智子委員長が18日に行った党創立104周年記念講演は次のとおりです。(動画はこちら➡


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(写真)講演する田村智子委員長=18日、党本部

 みなさん、こんにちは。田村智子です。

 党創立104周年記念講演会にご参加いただきまして、本当にありがとうございます。そして、日本共産党への期待と激励のメッセージをいただいたみなさまにも、心から感謝を申し上げます。

 今年の記念講演は、「歴史の岐路、希望の明日を切り開く生き方を」と銘打ちました。戦後81年間、世界が歩んできた道、日本が歩んできた道、どちらも大きな分かれ道――歴史の岐路にさしかかっています。どういう道を選び、切り開くのかが問われる、とても大切な時代を、私たちは生きています。この時代にどう生きるのか、ともに考え合う契機となることを願い、心をこめてお話しいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

1、国連憲章を巡る岐路--平和の国際秩序をつくる道か、形骸化を許すのか

 第一は、世界の岐路――国連憲章にもとづく平和の国際秩序をつくる道を歩むのか、それとも形骸化を許してしまうのかという岐路です。

 国連憲章は、2度にわたる世界大戦の悲惨な体験から、1945年に生まれました。その大原則は、紛争の平和的解決であり、理想としたのは「戦争のない世界」です。

 それから81年、戦争や紛争は繰り返されてきました。しかし、紆余(うよ)曲折はありながらも、世界の国々は国連憲章を守ることを共通の約束として歩んできました。

無法な戦争によって国連憲章にもとづく秩序が揺らいでいる

 ところが、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのパレスチナ・ガザへのジェノサイド(集団殺害)、そしてアメリカのトランプ政権によるベネズエラ攻撃とイラン戦争――こうした無法な戦争によって、国連憲章にもとづく秩序が揺らいでいます。

 最悪の破壊者は、アメリカのトランプ大統領です。「私には国際法は必要ない」「私を止められるのは私自身の心だ」とまで公言して、第2期トランプ政権発足以来、ソマリア、イラク、イエメン、イラン、シリア、ナイジェリア、ベネズエラに軍事介入し、今年2月のイラン戦争へと突き進んだのです。キューバに対する燃料封鎖も、病院の停電や深刻な物資の不足で、子どもを含む多くの人々が犠牲となっており、決して許されない国際法違反の暴挙です。

 これまでもアメリカは、ベトナム戦争やイラク戦争など、無法な戦争や武力攻撃・介入を繰り返してきましたが、ここまであからさまに国連憲章・国際法を破り捨てて、身勝手な蛮行を繰り返す大統領が登場したのは、第2次世界大戦後、初めてのことです。「力による支配」への歴史の大逆行の危険が生まれていると言わなければなりません。

 しかし、この道に未来はあるでしょうか。アメリカが持っている軍事の力だけを見れば、世界でも抜きんでて強大であり、無敵のようにも見えます。しかし、大きな視野でとらえて見れば、トランプ政権は、いま世界で孤立を深め、アメリカ国内でも強い批判がわきおこり、内外ともに行き詰まり、その支配は大きく揺らいでいます。

米トランプ政権の国際的孤立--イラン戦争、NPT再検討会議

 一つは、国際的な孤立です。2月28日にトランプ政権がイスラエルとともに始めたイラン攻撃は、アメリカをどういう立場に追い込んでいるでしょうか。女子小学校への攻撃でおびただしい子どもたちの命を奪った蛮行などが、世界の批判をあび、NATO(北大西洋条約機構)諸国からも「国際法違反」との批判が広がり、日に日に孤立が深まっています。

 6月16日、アメリカはイランとの間で戦闘終結にむけた「覚書」を交わしましたが、そこには「互いの主権および領土保全を尊重し、内政干渉を控えることを約束する」とあります。これは「体制転換」を求めて開始したアメリカの無法な戦争が大失敗したことを意味するものでした。なお戦争終結への道は見通せない状況が続いており、「覚書」にもとづいて一刻も早く戦争を終わらせることを、私たちは強く求めます。

 同時に、2月以来の戦争ではっきりしていることがあります。それは、アメリカがこの無法な戦争で「得たもの」は何もなく、自ら孤立と没落を深めたということです。日本共産党は、昨年3月に開いた全国会議で、トランプ大統領のアメリカについて、「アメリカ帝国主義の“落日”が始まった」と情勢を分析しましたが、今起こっていることは、まさにその通りのことではないでしょうか。

 アメリカの国際的な孤立は、4~5月にかけてニューヨークの国連本部で行われた、核兵器を巡る国際会議、NPT(核不拡散条約)再検討会議でも表れました。

 NPTというのは、五つの核保有国だけが核兵器を持つことができ、他の国が持つことを禁止するという、戦後の世界の歴史のなかでも他に類例のない差別的な条約です。それでも世界の大多数の国がこの条約を認め、加入したのは、NPTが第6条で核軍備撤廃のための交渉を誠実に行うことを、核保有国に対して義務付けているからです。

 ところがいま、アメリカをはじめとする核保有国は、この義務を履行するどころか、核兵器をさらに増やす競争を進め、核兵器使用の脅しを行い、条約が定めた義務に反する態度をとっています。そのことに対する強い批判が、今回のNPT再検討会議で噴き出しました。各国代表、各地域の代表が次々と討論に立ち、条約締約国の実に7割以上が、核兵器国に対して、「NPT第6条にもとづく核軍備撤廃の約束を守れ」と迫ったのです。

 世界の市民社会もそろって「NPT第6条の約束を守れ」「核兵器廃絶の責任を果たせ」と声をあげました。私たち日本共産党も唯一の戦争被爆国の政党として代表団を派遣し、被爆者のみなさんとともに、再検討会議が成果をあげるようにと、力をつくしました。

 残念ながら、核保有国の抵抗で、再検討会議は成果文書を出すことができませんでした。しかし、この会議で示された国際社会の7割以上の理性の声、これは世界の平和の本流がどこにあるかをハッキリと示すものとなりました。世界は、表面だけを見ると「法の支配」を覆す無法が横行しているように見えますが、深いところでは、「法の支配」にもとづく平和の秩序をつくることを求める声が圧倒的多数になって広がっているのです。

 今年秋には、核兵器禁止条約の初めての再検討会議も予定されています。被爆者のみなさんと手を携えながら、世界の本流に立ち、本流を前に進めるために、日本でも、世界でも、力をつくしているのが日本共産党であることに誇りと確信を持って、被爆81年の今年を、「核兵器のない世界」にむけた前進を記録する年にするために頑張り抜こうではありませんか。(拍手)

米国内で古い政治を揺るがす変革の動き--DSAとの出会い

 もう一つは、トランプ政権の足もと、アメリカの国内で、古い政治を揺るがす大きな変革の動きが起きているということです。

 4~5月に行った北米訪問で、日本共産党代表団は、初めてDSA(アメリカ民主的社会主義者)の指導部と会談し、公式に連帯の関係をつくることで一致しました。ニューヨーク市で、ゾーラン・マムダニ市長を誕生させたDSAは、いまアメリカ国内の選挙で次々と勝利をおさめ、急速に勢力を拡大し、10万人を超える会員が活動しています。

 DSAと言えば、家賃減額、保育無料、バス無料、市営スーパー設立、タックス・ザ・リッチ=「大金持ちに課税を」など身近な要求を掲げて、人々の共感を広げたことはよく知られています。ところが、それだけではないのです。志位和夫議長、吉良よし子参院議員などとの会談では、DSAのメンバーからは次のような発言があったと聞きました。「DSAは日本に人を送って、みなさんの動きを学んでいます。沖縄の新基地建設反対、核兵器に反対する運動を学び教訓を見いだしています。共通の目標があると思います。アメリカの帝国主義をやめさせるということです。外国にある基地の閉鎖縮小などで、アメリカの帝国主義的なやり方を抑え込むことで協力できると思います」

 DSAの綱領には、「US戦争マシンを終わらせる」という項目があり、「US軍事費の大幅削減、外国軍事基地の撤去、外国駐留軍の帰還」と書かれています。この内容を、会員がみんなで共有して、連帯の活動にとりくんでいるというのです。この報告に私も驚きました。そして、私たちの運動に新たな希望がともるような思いになりました。

 この会談で、日本共産党とDSAが、(1)無法な戦争に反対し、国連憲章にもとづく平和秩序をつくる、(2)日本とアメリカで進められている大軍拡に反対する、(3)在日米軍基地を撤去させ、対等・平等・友好の日米関係をつくる、(4)「核兵器のない世界」の実現、核兵器禁止条約を広げる――などで連帯をしていこうと確認したことは本当にうれしいことです。

 さらにその後、6月に、沖縄で革新懇などが主催して行われたシンポジウムに、DSAから連帯のメッセージが寄せられました。DSAのメンバーが日本を訪問し、党中央委員会、日本原水協、日本平和委員会、大阪などで交流にとりくみ、私もごあいさつする機会がありました。すでに平和の連帯が始まっていることに、ますます勇気が湧いてきます。

 アメリカという「帝国」の心臓部で、平和と進歩の希望ある流れが力強く発展し、その流れと私たち日本共産党との連帯が始まった。DSAの友人たちに負けないとりくみをこの日本で発展させ、太平洋をはさんでの日本とアメリカの進歩勢力の連帯で、対等・平等・友好の立場にたった、本当の“日米新時代”をつくろうではありませんか。(拍手)

日米同盟絶対の「思考停止」でいいのか--日本の進路が問われている

 こうしたもとで、日本がどういう道を歩むのかが、いよいよ問われています。イランを先制攻撃したトランプ政権を一言も批判せず、文字通りの「抱きつき外交」を繰り返し、ひたすら日米同盟強化の道を進む。在日米軍基地が、イラン攻撃のために使用されていても見て見ぬふりをする。NPT再検討会議でも、被爆国の政府なのに条約第6条の履行について言及さえしない。私も国会で何度も「アメリカにモノが言えない政治でいいのか」「これが主権国家と言えるのか」とただしてきましたが、まともな答弁はありません。説明もできません。とうてい独立国とはいえない、なんと情けない政治でしょうか。心の底から思います。

 元外務審議官の田中均氏は、5月7日の東京新聞で次のように述べています。「日本は戦後80余年、米国にどっぷりと浸(つ)かりすぎた」「欧州は米国への過度な依存の危機に気づき、多角化を模索し始めた」「日本も真剣に議論する好機といえるが、政府は『思考停止』状態だ。ある国がどこかに完全に従属すると、その国は価値を持たなくなる。日本が国際社会で一定の力を保つには、自立した外交で多角的な関係をつくり、それを巧みに利用していくに尽きる」

 「日米同盟絶対」の「思考停止」で、アメリカ言いなりを続ければ、日本は世界から相手にされなくなってしまうという警鐘乱打です。

 いま世界で起きている戦争、ジェノサイドに胸を痛めながら、自分に何ができるのだろうかと思っている方もおられるでしょう。「戦争には反対だけど、トランプ大統領には逆らえないのではないのか」という声も少なくありません。高市首相の外交も「トランプを怒らせなかったから合格」という評価が横行しました。

 しかし、世界をありのままに捉えれば、いまの世界は、アメリカ一国の大統領に左右される世界ではありません。国連憲章・国際法を力として、平和の秩序をつくろう、核兵器を廃絶しようという多くの国々と市民社会の連帯が世界の揺るぎない本流であることが、鮮やかに見えてきます。

 世界は変わらないと諦めてしまうのではなく、世界の平和の本流に立って、平和の国際連帯で歴史を前に進める生き方をしようではありませんか。日本共産党綱領が指し示す道――国民多数の合意で日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係へと変えていく、この希望の道をともに切り開こうではありませんか。心から呼びかけます。(拍手)

2、日本国憲法を巡る岐路--公布80年、憲法の力を発揮するのか、根本から覆す逆流を許すのか

 第二は、日本国憲法を巡る岐路です。今年は、憲法公布から80年の節目の年です。憲法9条を壊してしまうのか、それとも、憲法9条を生かして平和をつくる道を歩むのか――まさに日本は戦後最大の歴史的岐路に立っています。

戦後、最も危険な政治に、私たちは直面している

 憲法9条のもとで、戦後日本において「平和国家」の原則とされてきたものが、第2次安倍政権以降、次々と壊され、高市政権は、その動きを加速させています。

 大きな転機となったのは、2015年、安保法制を強行し、集団的自衛権行使容認にかじを切ったことでした。

 「軍事費GDP比1%以内」という、1976年に決めた上限枠は、わずか3年で2%となり、さらに3・5%への引き上げが狙われています。

 「敵基地攻撃能力は持てない」という長年の憲法解釈を投げ捨て、外国の領土を攻撃できる長射程のミサイルが次々と配備されています。

 これらの全体は、「専守防衛」――日本が持てるのは、日本を守るための「盾」だけで、相手を攻撃する「矛」は持たないという大原則さえも形骸化するものとなっています。

 さらに「国是」とされてきた「武器輸出禁止」は、高市政権によって、殺傷武器も輸出できる、紛争当事国にも輸出できるという、まさに全面解禁へと変えられてしまいました。

 そして「憲法9条」そのものの改悪の危険です。戦後、最も危険な政治に、私たちは直面しています。

新しい市民の運動の広がりは大きな希望--連帯して断固たたかう

 同時に、高市政権の「戦争する国づくり」に立ち向かう、新しい市民の運動がわき起こっていることは、日本の政治にとっての大きな希望です。

 市民のみなさん、とくに若い世代のみなさんが、手作りのプラカードやのぼり、ペンライトなどを持って、自主的に国会前や全国各地でデモ行動に立ち上がり、「戦争反対」「NO WAR」「憲法守れ」と声をあげる。静かに読書する、子どもさんも一緒のピクニックなど、一人ひとりがやむにやまれぬ思いで立ち上がっている姿に接して、政治を動かす力はここにあると、強く確信しています。

 また、長射程ミサイル配備、弾薬庫の建設、南西諸島の軍事要塞(ようさい)化など、「戦争する国づくり」の最前線に立たされている沖縄をはじめとする地域で、「戦争と隣り合わせで生きていけというのか」――。こういう切実な声があがっています。

 日本共産党は市民の皆さんの運動や声に連帯して、「戦争する国づくり」を許さないために断固としてたたかうことを、表明するものです。(拍手)

「戦争はいや」から出発し、平和の道を探求する、学習と対話の国民的な大運動を

 どうしたら戦争への危険な動きを止め、大軍拡と憲法改悪を許さない、ゆるぎない国民多数派をつくることができるでしょうか。

 私は、そのためには、「日本を守るためには防衛費を増やすこともやむをえないのでは?」「抑止力の強化は必要では?」など、国民のなかに広く存在している疑問や意見と向き合い、対話によって前途を見いだしていくとりくみが大切だと思います。そうした対話を国民的な規模で行っていく、その条件はあるでしょうか。大いにあります。それは、国民の圧倒的多数が「戦争はいや」という気持ちを持っていることです。

 私たちは第8回中央委員会総会で、「戦争はいや」という共通の思いを入り口に、「どうしたら平和をつくることができるのか」を一緒に考える、学習と対話を呼びかけました。

 その実践としてとりくまれた志位議長の『Q&A 戦争と平和』学習会は、「トランプ大統領言いなりで平和はつくれるのか?」「軍事的抑止力の強化で平和はつくれるのか?」「中国との関係をどうするのか?」「憲法9条を守り、生かすことがどうして大切か?」という四つの角度で、疑問にとことん答え、平和をつくる道筋を明らかにしています。

 学習した方が、さっそく「憲法署名」を手に訪問行動に立ち上がって、熱く憲法を語りあう対話になって署名が広がり、「しんぶん赤旗」の購読も広がったという経験もお聞きしています。

 「戦争はいや」から出発し、平和の道を探求する、学習と対話の大運動を国民的な規模で起こそうではありませんか。(拍手)

「軍事的抑止力強化」では平和はつくれない、それは戦争への道

 私は、高市政権との国会論戦を通じても、こうした学習と対話の大切さを実感しています。

 日本共産党国会議員団は、長射程ミサイル配備の危険性、武器輸出、沖縄の基地問題など、「戦争する国づくり」に正面から対決して論戦を行っています。高市(早苗)首相や小泉(進次郎)防衛大臣は、どんな問題でも、私たちの質問にまともに答えることができません。政権の側から返ってくるのは、質問の内容とは関係なく、中国の“脅威”をあおり立てて、“戦後最も厳しい安全保障環境のもとで、日本を守るためには日米同盟の抑止力、対処力の強化が必要だ”という答弁の繰り返しです。何を聞いても「脅威がある」「抑止力強化は必要」、この一点張りです。それさえ言えば何とかなると思っている。耳にたこができるほど聞かされてきました。

 私は、党議員団のみなさんとともに、国会での徹底的な論戦で、政権の側が、こうした議論を容易には口にはできないところまで追い込んでいく決意です。同時に、国会論戦を通じて実感しているのは、政権の側が、「抑止力強化」を呪文のように繰り返しさえすれば、大軍拡への国民の「支持」を得られるだろうと思い込んでいるということです。この思い込みが通用しないことを政権の側にも分からせるような国民的世論をつくっていく、「軍事的抑止力強化では平和はつくれない」という国民的世論をつくっていかなければならない。これが国会論戦をつうじての強い実感なのです。

 いま世界で、「抑止力強化」を理由に、軍拡競争が起きています。世界の軍事費は2001年の1・3兆ドルから、2025年は2・8兆ドル、米ソ対決時代をはるかに上回っています。この事態に、国連事務総長の報告書は、「増大した軍事費はしばしば地政学的な緊張を激化させ、軍拡競争に拍車をかけ、武力紛争のリスクを高める」との警鐘を鳴らしています。軍拡競争が戦争への道であることは、人類の歴史が証明していることです。

 そもそも「抑止」とは、「恐怖によって行動を阻止する」ということです。しかし、恐怖を与えれば、相手も恐怖で応える――恐怖対恐怖、軍事対軍事の悪循環に陥ってしまう。このことを「安全保障のジレンマ」と言いますが、「軍事的抑止力強化」では平和は訪れない、この先にあるのは戦争への道だ。このことをともに学び、語り、大軍拡を止め、憲法9条を擁護する、揺るがない国民的多数派をつくろうではありませんか。(拍手)

「安心」を与える外交でこそ平和はつくれる--「東アジア平和提言」の呼びかけ

 「平和をつくる道」はどこにあるでしょうか。相手に「恐怖」を与えるのでなく、「安心」を与える外交でこそ、平和はつくれます。

 日本共産党は、憲法9条を生かし外交によって戦争の心配のない東アジアを築こうと、2024年4月、「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」を提唱し、この立場で国内外でのとりくみを進めてきました。徹底した対話を積み重ねること、あれこれの国を排除するのではなく、すべての関係する国を包摂――包み込む、「対話と包摂」で平和をつくるというのが、私たちの「東アジア平和提言」の呼びかけです。

 「対話で平和をつくれるのか?」という疑問もあるかもしれません。しかし、それを実践して現に平和をつくっている経験が間近にあります。ASEAN=東南アジア諸国連合です。ASEANは徹底した対話の積み重ねで、半世紀前には「戦争と分断」に覆われていたこの地域を、今では「平和と協力」の地域に劇的に変化させました。さらに、米国、中国、ロシアなどの大国を同じ話し合いのテーブルにつける独自の外交手腕を発揮し、「平和と協力」の地域を東アジア全体に広げる大きな外交戦略――「ASEANインド太平洋構想」=AOIPを提唱して実現のために力をつくしているのです。

 私も、2023年、インドネシアのジャカルタにあるASEAN本部を訪問して、ASEAN域内で年間1500回という会議=対話を行っていると聞き、驚きで目をみはりました。時間がかかっても対話を積み重ね、多数決ではなく合意=コンセンサスを得ることが大切だという、ゆるぎない姿勢に、これこそが憲法9条が求める外交の姿ではないのかという強い思いをもちました。

 ASEANと協力して、東アジアの全体を、東南アジアのような戦争の心配のない地域にしていくための、憲法9条を生かした平和外交こそ、日本は心血を注いでとりくむべきではないでしょうか。(拍手)

中国との関係--「外交を壊しての軍事一辺倒」ではかじ取りの資格なし

 中国との関係も、両国関係を前向きに打開する道は、対話しかありません。

 いま、日本と中国との関係は、1972年の日中国交正常化以降、最悪という状況になっています。

 ここでまず訴えたいのは、日中両国が再び戦火を交えることは絶対にあってはならないということです。誰にとっても災厄をもたらす道、誰も望んでいない道は、理性の力で絶対に止めなければなりません。

 現在の両国関係悪化の直接の原因は、一にも二にも、高市首相が行った「台湾発言」にあります。台湾海峡で米中の武力衝突があることを想定し、そのさいには、「どう考えても存立危機事態になりうる」と答弁した。つまりは日本に対する武力攻撃がなくても、米軍を守るために、自衛隊が中国に対して武力行使をすることがありうると発言した。これは、戦争放棄を定めた日本国憲法に反するとともに、1972年の国交正常化のさいの日中共同声明に反するものです。この発言のために、日本は中国との関係で、まともな話し合いすらできない状況に陥っています。いま世界のどの国も――アメリカも含めて、立場の違いはあっても、中国との話し合いをやっています。そのなかで日本だけが面と向かっての話し合いすらできない、異常な関係となっている。私は高市首相に対して、いまからでも「台湾発言」を撤回することを強く求めるものです。(拍手)

 そのうえで、両国関係を前向きに打開する外交に真剣にとりくむことが必要です。日本共産党は、そのための提言を明らかにし、その立場で行動してきました。とくに2008年の日中首脳会談での合意――「双方は、互いに協力のパートナーであって、互いに脅威とならない」を尊重し、日本も中国も合意にふさわしい行動をとることを、日中両政府に繰り返し提起してきました。

 台湾の問題については、あくまでも平和的解決を求める、中国が武力による威嚇や武力を行使することに反対だ、同時にアメリカや日本が軍事的に関与することにも反対だとの立場を明らかにしてきました。そして、中国との対話の機会をとらえて、私たちの意見を直接伝えてきました。「言うべきことは率直に言い、同時に、両国関係を前向きに打開するための外交に心血を注ぐ」――これが日本共産党の立場です。これが責任ある政党のとるべき姿勢ではないでしょうか。

 高市政権に、そうした理性ある外交はあるでしょうか。まったく見られません。反対に、自分の発言によって中国との関係を最悪の状況に陥らせ、これを利用して、危機をあおり、大軍拡の口実にしている。最悪の“マッチポンプ”をやっているのが、高市首相ではありませんか。

 「外交なしの軍事一辺倒」、もっと言えば「外交を壊しての軍事一辺倒」、これが高市政権の姿勢です。このような政権に、日本の政治のかじ取りの資格はないことは、あまりにも明らかではありませんか。(拍手)

歴史の岐路で、声をあげ行動しよう。日本共産党とともに進もう

 日本共産党は、党をつくって104年になりますが、この104年間には、戦争か平和かが問われた歴史の分かれ道が、何度もありました。そして、104年間にわたって、どんな場合でも、どんな困難があっても、戦争を止め、平和をつくるために行動してきた党が、日本共産党です。いまほど、この党が日本に必要な時はない。それが私の強い思いです。

 憲法9条にもとづく「平和国家」が危うくなっている戦後最大の歴史的岐路のもと、一人ひとりが声をあげ、行動しようではありませんか。104年前に党をつくってから、一筋に反戦平和を貫いてきた日本共産党とともに歩もうではありませんか。心から呼びかけます。(拍手)

3、大企業中心が行き詰まるもと、無謀で危険な道を許していいのか--「富の一極集中」に切り込み暮らしを豊かに

 第三に、暮らしと経済です。「物価高で暮らしがたいへん」。ストリート対話でも、まず出てくるのが、この声です。この間続いた物価高のうえに、円安とイラン戦争の深刻な影響で、さらなる物価上昇への不安が大きくなっています。

「物価高騰、暮らしの危機打開へ--経済政策を転換する緊急要求」の実現を

 日本共産党は、7月14日に「物価高騰、暮らしの危機打開へ――経済政策を転換する緊急要求」を発表しました。(1)消費税を一律5%に引き下げる恒久的減税、(2)賃上げの流れを止めず、最低賃金を大幅に引き上げる、(3)社会保障の改悪中止、(4)円安・物価高・資材不足倒産を起こさない緊急の支援策、この四つをただちに実施すること。そのために大企業や軍事費へのバラマキをやめて、大企業や超富裕層への応分の負担を求める財政政策の転換です。

 緊急要求の実現で、暮らしの危機を打開するために、ともに頑張りたいと思います。(拍手)

前代未聞の大企業へのバラマキ--すでに失敗した道を速度をあげて暴走

 自民党が続けてきた大企業中心の政治によって、貧困と格差が広がり、賃金はあがらず、暮らしに希望が見えない、「失われた30年」といわれるほどの長期の経済低迷--この深刻な行き詰まりのもとで、高市政権は、これまでにない無謀で危険な道に踏み出そうとしています。

 高市首相は「日本を強く、豊かに」「強い経済」と掲げていますが、何をしようとしているのでしょうか。来週にも閣議決定しようとしている「骨太の方針」などで、高市政権がやろうとしている、無謀で危険な中身が明らかになってきています。

 その第一は、前代未聞の大企業へのバラマキです。「成長戦略」と称して示されているのは、2040年までの15年間で、「AI(人工知能)・半導体」や「防衛産業」(軍需産業)など17分野で、大企業を中心に、国と民間合わせて370兆円を超える投資を行うというのです。官民の投資額の内訳は示されていませんが、その多くは国が負担をすることになるでしょう。これまでの政府の大企業支援は減税などが中心でしたが、高市政権は大企業減税を温存したままで、大企業に巨額の投資をする――莫大(ばくだい)な国のお金を大企業に入れるというのです。

 しかし、大企業への投資を増やせば経済が成長するというトリクルダウンの政策の失敗は、すでに明らかではありませんか。大企業中心の経済政策で、法人税の減税や優遇、人件費コストカットで非正規雇用を増やし、もうけることを邪魔する規制を取り払ってきた結果、大企業の利益は史上最高を毎年更新し、株主配当も10年間で2倍以上、大企業の内部留保は600兆円に迫ろうとしています。しかし、賃金は30年以上にわたって上がらず、実質賃金はいちばん高かった1996年と比較して平均で70万円も下がり、経済の成長も止まるという深刻な行き詰まりに突き当たっています。

 どんなに大企業に減税や投資をしようとも、ごく一部の大資産家と大企業への「富の一極集中」が進んだだけだった、失敗が明らかになった道を、さらに速度をあげて暴走しようというのでしょうか。

「防衛と経済の好循環」--日本を「落ちぶれた国」にしてはならない

 問題は、それにとどまりません。第二に、これまでにない経済政策の大変質が狙われています。高市首相は、「防衛と経済の好循環」などと言い出し、軍事を「成長戦略」の柱にしました。戦後の自民党政治でも、軍事で経済成長をめざすなどという物騒なことを公然と掲げた内閣はありません。「軍事経済化」に大きくかじを切ろうとしているのです。

 高市政権は、今年中に「安保3文書」を改定し、トランプ政権から要求されているGDP比3・5%への大軍拡に突き進もうとしています。そうなれば、今でも9兆円、文教予算の2倍にまで膨れあがっている軍事費を、5年後には24兆円にすることになります。軍事を「経済成長の力」と位置づけることで、軍事費に巨額の予算を振り向けることを「合理化」しようとする異常な経済政策です。

 これは、財界からの要求でもあります。経団連は今年5月、「防衛生産・技術基盤の抜本的強化に向けて」という提言を発表し、軍事費を確実に増やすこと、国内の軍需産業の利益率を上げること、需要に備えて生産基盤を強化すること、武器輸出を増やすことなどを求めています。

 「防衛と経済の好循環」などと、軍事を経済成長とすることは、日本をどういう国にしてしまうのか。それは、兵器をたくさんつくり消費することを経済成長につなげるということです。国内だけで消費するのでは足りないから、武器の輸出で稼ぐ国にするということです。それは平和では成長ができない国、戦争と軍事的緊張が続かないと成長ができない国になるということです。それは世界平和を求めず、戦争を求める国に堕落するということではありませんか。日本を憲法9条を持つ国には最もふさわしくない「戦争待望国家」にしてよいのでしょうか。

 1976年、宮沢喜一外務大臣は国会で、武器輸出についての質問に、「わが国は兵器の輸出をして金を稼ぐほど落ちぶれてはいない」と答弁しました。この答弁から50年後の今年3月、高市早苗首相は、この宮沢発言について「落ちぶれたことだとは思わない」「もう時代は変わった」と答弁しました。

 5月3日にTBS報道特集が、自民党幹事長を務めた古賀誠氏へのインタビューを放映しました。武器輸出についての宮沢外務大臣の答弁について、古賀氏はこう述べています。「いいことおっしゃる、先輩は。強い国というが何を基準に強いと言っているのか、武力を十分準備してどんぱちで負けないことが強い国なのか、それとも世界の国々から信頼と信用され、生まれた国に誇りを持つ国民なのか、それが強い国ということではないのか」

 日本を「戦争をのぞむ」ような「落ちぶれた国」にしたくはない。これは政治的な立場の違いを超えた広範な人たちの思いではないでしょうか。(拍手)

 だいたい「防衛と経済の好循環」などはあり得ないことです。経済にとって、平和こそが最大の基盤だからです。それは戦後の日本の経済の歩みでも証明されています。憲法9条と国民の世論の力によって軍事費を「GDP(国内総生産)比1%以下」に低く抑えてきたことが、戦後の経済成長の力となったことは、誰も否定ができない事実ではないでしょうか。

 戦争と軍事的緊張の悪化こそが、経済にとっての最も大きな障害です。それは、ウクライナ侵略戦争、イラン戦争が、人命を奪うだけでなく、どれほど世界経済に深刻な影響を与えているか。国民の暮らしに深刻な打撃となっているか。この事実をみても明らかではありませんか。

 「防衛と経済の好循環」など絶対に起こりえません。そのような「落ちぶれた国」には絶対にさせない、そのために力を合わせようではありませんか。(拍手)

「骨太ショック」--高市「成長戦略」と「軍事経済化」に市場からも「赤信号」

 高市政権の「成長戦略」と「軍事経済化」は、すでに「赤信号」がともっています。

 大企業と軍事費――二つのバラマキをやれば、財政の急激な悪化は必至です。高市政権は、すぐに増税・負担増策を出すと、「成長戦略」や大軍拡への国民の批判が沸き起こることを恐れて、当面、国債増発、新たな借金で乗り切ろうとしています。

 しかし、赤字国債増発の方向を示した「骨太の方針」の原案が発表されただけで、市場では、財政悪化を見越して国債が売られ、国債価格の低下=長期金利の上昇がすすみ、長期金利は3%にせまる30年ぶりの水準になりました。財政への不安は、通貨である「円」にも及び、1ドル162円という40年ぶりの異常円安になっています。市場やメディアでは「骨太ショック」と言われています。高市首相は、国会の党首討論で「骨太ショック」を否定しましたが、高市内閣の片山財務大臣が記者会見で「『市場骨太ショック』として報じられているのは事実」と認めているのですから、どうしようもありません。高市首相の見識のなさが際立つだけです。

 「責任ある積極財政」と言いますが、その正体は無責任な放漫財政にほかなりません。大企業と軍事費への二大バラマキ財政は、それが実施される前から、市場でも「赤信号」を突き付けられています。この「赤信号」を無視して暴走することは、平和も暮らしも経済も大破綻の危険にさらす、亡国の政治というほかないものです。

日本共産党の経済政策--「富の一極集中」に切り込み、暮らしを豊かに

 それでは、暮らしと経済に希望を開く道はどこにあるのか。長年の自民党政治によってもたらされた、あまりにもひどい「富の一極集中」に切り込むことにこそ、そのカギがあります。

 なんといっても、大企業の株主最優先、とりわけ大株主最優先を規制して、賃上げに回す仕組みをつくり、30年以上進んでいない賃上げを思い切って進めることです。賃上げと一体に労働時間の短縮を実現し、「自由な時間」を取り戻すことです。

 大企業と富裕層に対して利益にふさわしい税負担を求める「タックス・ザ・リッチ」、大企業と超富裕層にため込まれた富の一部への課税で、働く人が生み出す富を働く人と国民の手にもっと回そうではありませんか。

 大軍拡をやめて、安心の医療・介護・保育・教育へ。この道をともに切り開くことを心から呼びかけるものです。(拍手)

4、「資本主義というシステムをこのまま続けていいのか」--「人間の自由」が豊かに花開く未来社会への展望をもつ生き方を

 第四は、資本主義というシステムをこのまま続けていいのか、資本主義を乗り越えた未来社会をめざすのか――「人類史的」ともいうべき大きな岐路が私たちの目の前にあります。

世界資本主義の深刻な矛盾の深まり--貧富の格差の拡大、気候危機の深刻化

 資本主義の深刻な矛盾は、世界中でいまや誰の目にも明らかです。

 イーロン・マスク氏の資産が1兆ドルになったというニュースが世界を駆け巡りました。一握りの富裕層と大企業が資産を増やし続けるもと、世界の人口の半数、数十億人が貧困に陥っている。目もくらむような貧富の格差の拡大が、進んでいるのです。

 気候危機はきわめて深刻となり、干ばつや洪水などで途上国や貧困層の命を脅かすだけでなく、いまや先進国の人々の命も脅かしています。フランス、イタリア、ドイツなどでは熱波によって命を奪われる人が続出し、欧州全体で1万4000人が犠牲となると予測されるほどです。日本でも何カ月も続く猛暑が、命、暮らし、経済に重大な影響をもたらしています。資本主義は、人類の生存の自由さえ脅かしているのです。

「人間の自由」「人間の自由で全面的な発展」を軸にすえた未来社会論の探究

 そうしたもと、資本主義を乗り越えた未来社会への展望を多くの人々が模索しています。そのことは、世界でも日本でもマルクスと『資本論』への「ブーム」ともいうべき注目が高まっていることに表れています。

 日本共産党は、2024年1月の第29回党大会で、「『人間の自由』こそ社会主義・共産主義の目的であり、最大の特質である」と解明しましたが、このことが党内外で大きく歓迎されました。これは、レーニンに由来する旧ソ連流の解釈でゆがめられ、消し去られてしまった、マルクスの未来社会論の本来の輝き――「人間の自由」「人間の自由な発展」を軸にすえた未来社会論を取り戻す解明であり、「社会主義には自由がない」というイメージを百八十度転換する大きな力となるものでした。

すべての人の存在と成長を肯定し、励ます、生きる希望になる解明

 それから2年半、この大会決定の実践・具体化として、志位和夫議長が行った講演が「赤本」=『Q&A いま「資本論」がおもしろい』、「青本」=『Q&A 共産主義と自由』、「緑本」=『自由な時間と「資本論」』と呼ばれる3冊の本となり、未来社会への展望を豊かに広げる力となっています。とくに「自由な時間」――「自由に処分できる時間」を軸としたマルクスの未来社会論に光を当てた探究は、私たちが目指す未来社会の豊かさを、今日、多くの人々が日常の生活のなかで体験しているさまざまな苦しみを解決することと一体につかむ力を発揮していると思います。

 資本主義的な搾取によって奪われているのは、「モノ」や「カネ」だけではない、「自由な時間」が奪われている。搾取をなくすことで労働時間がグッと短くなり、すべての人が十分な「自由な時間」を持つことができる。「自由な時間」こそが「人間の自由で全面的な発展」を保障するカギであり、「自由な時間」こそが人間と社会にとっての真の富である。この解明は、長時間労働に苦しんでいる労働者、ダブルワークで「自分の時間」が持てないシングルマザー、「アルバイト漬け」で勉強する時間も削られている学生など、多くの人々の心に響く解明だと思います。この解明で示された未来社会への展望は、多くの人々の現実の問題に光を当て、それを変えていこうという希望につながることを実感しています。

 6月13日、私は、「ジェンダーと『資本論』入門」をテーマに、「赤本」「青本」を導きとしたQ&A学習会に挑戦しました。これは間もなく発売の『月刊学習』8月号に掲載されていますので、ぜひお読みいただければと思います。日本の女性は国際的に見ても睡眠時間が短く、家事労働が長いという実態、これがいかに異常か、「自由な時間」という視点で見たときに痛感します。そして、こんなに頑張らなくてもよい社会は、搾取をなくせば根本的に実現可能になってくる、その思いを強くしました。

 また、沖縄での若い世代とトーク集会をした時に、「8時間働くことは自分にはつらい。そういう人はこの社会で生きていくことはできないのでしょうか」と発言した方がいました。病気や障害を持つ人、子育てや介護でフルタイムで働くことができない人が、社会から疎外され、貧困になっても仕方ないという社会は、もちろん資本主義社会のもとでも変えていかなければなりません。同時に、労働時間をグッと短縮して、すべての人が「自由な時間」を十分に手にするという未来社会こそ、人類社会の発展の方向だとつかむことは、「この思いは正当なものだ」という希望のメッセージとなるのではないでしょうか。

 さらに、そこにとどまらず、すべての人が「自由な時間」によって自分の内面からやりたいことをする、すべての人が「自由な時間」によって能力を存分に発展させる、この「人間の自由で全面的な発展」こそ、社会主義・共産主義の社会の基本原理となる――この展望は、すべての人の存在と成長を肯定し、励ますものであり、大きな意味での生きる希望になると思うのです。

世界にも共感を広げる生命力--現代の熱い問題を解決する手がかりにも

 日本共産党の「自由な時間」――「自由に処分できる時間」を軸とした未来社会論は、世界にも共感を広げる生命力を持っています。北米訪問では、志位議長が、アメリカの研究者との理論交流、カナダ・ヨーク大学での講演と研究者たちとのディスカッションを行いました。どこでも「自由な時間」というテーマが、マルクスの未来社会研究でも、労働時間の短縮という現実の課題でも、とても重要なテーマだと新鮮に受け止められ、深い共感が寄せられています。さらに、こうした理論交流は、ドイツやフランスなど欧州にも広がっています。

 「自由な時間」――「自由に処分できる時間」の重要性をとらえることは、労働時間短縮への展望だけでなく、ジェンダー平等社会への展望、気候危機打開の道、さらにAIの急速な発展をどうとらえ、どう対応するかなど、現代の熱い課題をどうやって解決していくのかについての手がかりとなることが、国際的な理論交流の中で深められていることはとても重要です。

未来社会への希望を広げるとともに、現実の社会を変えるたたかいの力に

 いま、全国で8000を超える日本共産党の支部が、「赤本」や「青本」の学習にとりくんでいます。党の事務所に「赤本」学習会の看板を立てたら、『資本論』を学んでみたいと学生が参加した、党員がLINEで呼びかけて、大企業で働く人たちがオンラインで学習会にとりくんでいるなど、党の外にも学習の輪が広がっています。

 『資本論』第一部の「ごくごくあらまし」を解説した「赤本」の学習では、「資本主義の搾取の仕組みがわかった」という声がたくさん寄せられています。そして、長時間労働、休憩時間や着替えの時間が削られる、待機時間が労働時間にカウントされない、人手が足りない過密労働、これら全てが搾取の強化だとわかり、声をあげて職場を変えようという力にもなっています。

 「赤本」の「はじめに」で志位議長は、『資本論』について「資本主義がその発展のなかで、未来社会への要素をどのような形でつくりだすのか、社会を変える客観的条件、そして主体的条件がどのようにして発展していくのかということを、事実と論理の力で見つけ出し、労働者と人民のたたかいによってこそ新しい社会への道は開かれることを熱く訴え、『この社会は変えられる』という『希望』を語った書です。『資本論』を貫く『変革と希望の書』という精神を伝えたい」と述べています。

 「赤本」「青本」「緑本」の学習をさらに広げて、『資本論』を読むムーブメントを本格的に発展させることは、未来社会への希望を広げるとともに、現実の社会を変えるたたかいを起こすうえでも土台からの力となることでしょう。

 人間の社会はたいへんに複雑で、表面を見ただけでは混沌(こんとん)としたもののように見えます。しかし、そこには、たしかな発展の法則が存在します。それを科学の力で探究し、明らかにした科学的社会主義の先人たちの古典を学ぶことは、一人ひとりの人生にとっての羅針盤を得ることになり、一人ひとりの人生を生きる甲斐(かい)のある豊かなものとすることは疑いないと、私は思います。

 貧困と格差、気候危機、人間を「使い捨て」る働かせ方、ジェンダー不平等、こんなにも矛盾や苦しみに満ちた資本主義の社会で、人類の社会は終わりでしょうか。そんなことは決してありません。人民のたたかいで社会は変わるし、変えられます。まずは異常なアメリカ言いなり、大企業中心という政治のゆがみをただす民主主義の改革をやりとげ、さらに「人間の自由」があらゆる面で豊かに花開く社会――社会主義・共産主義の日本への道を切り開こうではありませんか。心から呼びかけます。(拍手)

むすび--日本共産党への入党を訴えます

 きょうは生き方ということをテーマにお話をしてきましたが、これは、日本共産党に入党して、ともに生きようという私からのメッセージでもあります。

 第29回党大会で委員長になってからの2年半、3回の国政選挙をたたかい、後退を続けるというもとで苦闘しながらの2年半でした。しかし、その中でも、私たちは、日本共産党を強く大きくできる、選挙で勝利することはできるという可能性・条件を懸命に開拓する挑戦にとりくんできました。

 その一つは、私自身が、全国のみなさんとともにとりくんでいるストリート対話です。昨年の参議院選挙の総括から、「要求対話・アンケート」で国民の中で対話し、要求に応える活動に思い切ってとりくもうという方針を提起しました。私のストリート対話はその実践でもありました。この対話を総選挙の中でも貫いたことが、高市首相への期待がハリボテのようなものであり、要求に本当に応えることができるのは、日本共産党だと、この確信を深めることができました。今、全国で、さまざまな対話がとりくまれ、対話が楽しいと実感され、国民の声に耳を傾ける日本共産党への信頼も寄せられる、日本共産党との新たな出会いが、若い世代の中にも広がっていることは、本当にうれしいことです。

 もう一つの挑戦は、「赤本」「青本」の学習です。資本主義の搾取の仕組みを学び取り、社会変革の力は労働者・国民のたたかいにこそある、「人間の自由」が花開く社会という未来社会への展望、これらは、困難があっても、大きな希望と科学的な展望を持ってたたかう生き方として、私たちの中に根付きはじめていると思います。そして、そうした生き方を国民のなかに広げつつあると思います。

 これらの努力を実らせて、必ず強く大きな党をつくりたい。来年1月の第30回党大会を、長年の党勢の後退に終止符を打ち、前進への歴史的転換を成し遂げて迎えたい、それこそが、次の国政選挙に勝利する力、来年の統一地方選挙から反撃を開始する力だと決意しています。

 党創立から104年、私たちの先輩たちは、どんな困難のもとでも、社会進歩への羅針盤を持ち、国民の多数を結集しようという粘り強い奮闘、たたかいを紡いできました。今日の政治の劣化、世界の逆流がいつまでも続いて良いはずがないし、続くはずもありません。

 ともに、時代を前へと進める生き方をしようではありませんか。日本共産党への入党を心から呼びかけて、私の講演を終わります。ありがとうございました。(大きな拍手)