緊張を高める軍事威嚇やめよ

 海洋進出を強める中国に対抗し、日米などによる共同訓練の実戦的な強化が進んでいます。自衛隊は6月下旬にフィリピン海で潜水艦から実弾の魚雷を発射し、標的の艦船を撃沈する訓練をしていたことが分かりました(本紙8日付報道)。アジア太平洋地域の緊張を高める軍事的な威嚇は互いにやめるべきです。

■実弾の魚雷を発射

 魚雷発射訓練は、米軍主催の多国間共同訓練「バリアント・シールド26」(6月22日~7月1日)で行われました。自衛隊は明らかにしていませんが、米軍が「海上自衛隊の潜水艦が退役した米揚陸艦ジュノーに対し魚雷を発射した」と発表しました。バリアント・シールドに参加していた海上自衛隊の最新鋭潜水艦「じんげい」が実施したとみられます。

 自衛隊は、米軍とフィリピン軍が主催する多国間共同訓練「バリカタン26」(4月20日~5月8日)でも実射訓練を行っています。陸上自衛隊がフィリピンのルソン島から88式地対艦誘導弾(ミサイル)を発射し、約75キロ先の海上に浮かぶ標的の艦船に命中させ、沈没させました。

 バリカタン26では、米陸軍がフィリピンのレイテ島から、中距離ミサイル発射装置「タイフォン」を使って巡航ミサイル「トマホーク」を発射する訓練を同国で初めて実施しています。発射されたトマホークは、約600キロ離れたルソン島にある演習場内の標的に着弾しました。

 トマホークの射程は約1600キロで、北京など中国の内陸部にも届きます。タイフォンは、2024年4月のフィリピンでの共同訓練で持ち込まれて以降、そのまま配備が続き、事実上の常設となっています。

 米陸軍のタイフォンは、バリアント・シールド26のため、6月から海自鹿屋基地(鹿児島県)にも展開しています。防衛省の説明によると、9月に実施される日米豪の共同訓練「オリエント・シールド」でも使用します。いずれの訓練も実射訓練はしないとしていますが、10月をめどに鹿屋基地から撤収された後は在日米軍基地に保管されるとしています。恒久配備につながる危険があります。

■軍縮へ切り替えを

 自衛隊は3月末から他国領土を攻撃可能な長射程ミサイルの部隊配備を始めています。射程約1000キロの25式地対艦誘導弾を陸自健軍駐屯地(熊本県)に、今後射程を約2000キロにまで伸ばす計画がある25式高速滑空弾を富士駐屯地(静岡県)に配備しました。同月には、イージス護衛艦「ちょうかい」がトマホークの発射能力を獲得したと発表しています。

 こうした日米の動きは、日本国民にはほとんど知らされていません。一方で中国は強く反発しています。中国軍が今月6日、原子力潜水艦から弾道ミサイルを発射する実験を行い、太平洋上に落下させたことは重大です。

 軍事力の強化に軍事力の強化で対抗すれば際限のない軍拡競争の悪循環に陥り、戦争の危険を高めます。軍拡から軍縮への転換を実現するため、憲法9条に基づく外交の強化が今こそ必要です。