小説といえば星の数ほどありますが、
そのなかで古典的名作といえばドン・キホーテです。
今日はそのドン・キホーテを読んだ感想を書かせていただきます。

この小説の凄いところは喜劇なのか悲劇なのか分からないところにあります。
素直に読むと妄想と現実の区別が付かなくなった男がおりなすこっけいな物語、
つまり喜劇と取れるのですが、
読みようによっては遍歴の騎士になるというかなわない夢を見続けて奮闘し、
そしてついに力尽きる男の悲劇とも読めるわけです。

私は後者の解釈をしました。
だからこの本を読むとすごく切なくなってしまうのです。
ドン・キホーテは頑張っても頑張ってもついに報われず、
最後には自分の信じる騎士道物語という理想を否定して死んでしまうのですから。
もう少し何かしらの救いがあってもいいのではないか、
私は強くそう思いました。

この小説で一番有名なシーンといえば風車を巨人に見たてたドン・キホーテが
馬に乗って突撃するシーンです。

このシーンは後世色々な解釈がされています。
これは騎士道物語を皮肉ったシーンだとも、
ドン・キホーテ(スペイン)が風車(オランダ)との競争に負けることを
予見したシーンだとも言われています。

しかし私にはそのどちらでもなくこう見えました。
風車(変えられない現実)に立ち向かおうとしたドン・キホーテ(愚かな道化師)、
そう、見えたのです。

この物語は騎士道物語とは違い中世のスペインが舞台になっています。
なので彼が追い求める強大な怪物などいませんし、
1人で何万もの敵をなぎ倒す遍歴の騎士もいません。
ついでに言えばドン・キホーテはただの老人であり、
英雄でも豪傑でもありません。

つまり、ドン・キホーテは絶対にかなわない夢を求めて、
たったひとりで戦っているのです。
(お付きのサンチョはドン・キホーテを何歩も引いたところから見ているので
同行者であっても仲間といえるのかどうかは疑問です)
私はそんな彼の愚かさと偉大さに凄く心惹かれるのです。

彼は英雄ではなく道化師です。
それも皆に笑われたりおちょくられたりする愚かで哀れな道化師です。
けど私には、そんな彼がどんな物語の英雄よりも偉大な男に見えたのです。

私はこの小説を読むまでは、
偉大な男というものは信長やヒトラーのように、
強くて冷酷な独裁者的人間のことだと思っていました。
けどドン・キホーテを読んでその考えが変わったのです。
道化の英雄というものも世の中には存在するのだと、
そう考えるようになったのです。