はじめに
この小話はその3で終了予定でした。
メールでその3を送信し、テーマを変更した時点で内容が途切れたようです。
以下はその続きになります。途中で切れた小話をだしてしまい申し訳ありません。
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その日は、1時間の遅刻について激しく怒られたが、ダメなところはそれくらいだった。商談は予想以上にうまくいき、打ち上げで飲んだビールはとてもうまかった。星占いはあんがいバカにならない。いい1日だった。
週末に喫茶猫の手に行きたくなって、探してみたが、そんな店は見つからなかった。それらしい場所にあったのは、『窓』という喫茶店。キツネにつままれた気分だった。いや猫につままれたのか。まぁ雨だったし、何かを見間違えたのかもしれないと入ってみた。
喫茶店『窓』の中は明るく清潔な雰囲気だった。机が2つ。カウンターはあるが、白基調だし、マスターではなく痩せ気味のママさんが一人で切り盛りしていた。店に特別変わったところは無く、普通の喫茶店に見える。カウンターにタオルをひいた焦げちゃ色のバスケットがあり、中に倒れたグラスが一つ、半分布をかけられてある。何か変わっているとしたらそれくらいだ。
とりあえずブレンドを頼んでカウンターに座った。他に客がいなかったからよもやま話をしたところ、店は10年も前からあったそうだ。その間ずっと一人で店を見ていたらしい。いつも赤字ギリギリなのよと明るく笑って話ていた。
その時音も無く猫がカウンターにあがってきた。こちらを興味なさそうに一瞥するとバスケットにちょっと窮屈そうに座り、グラスを布でこすり始めた。
「お気に入りなのよ。」
ママがちょっと困ったように言った。
3年ほど前からいるらしい猫は貫禄十分に太っており、少し赤く見えなくもない不思議な縞模様で緑のエプロンみたいな服を着せられていた。毛は長めでボサボサだが汚い感じはない。バスケットが壊れるかと思えるくらい目一杯詰まりながらも、器用にグラスを布でこすっていた。本当にお気に入りらしい。かわいらしく思える仕草に少し微笑むと、抗議の目線が一瞬こちらを向いた。その動きがまたかわいらしく、思わず笑いがでてしまった。笑い声に憮然とする猫にママと二人でまた笑ってしまった。
珈琲も飲み終わってお勘定をお願いすると、猫がのんびり立ち上がってこちらに来た。ママはレジスターの方を向いている。猫は僕が出した手を軽く跨いで通り過ぎ、真横に来ると爪を出さない手で肩を一回、叩いた。
ママが気がついてバスケットに追い払われてしまったが、猫は何も無かったかのようにグラスを布でこすりだした。ごめんなさいね、と言いながらママはお釣りを渡してくれた。僕は猫嫌いじゃないからかまわなかったんだけど、店としてはやっぱりダメなんだろう。
ドアの直前でどうしても気になっるので、失礼を承知で聞いてみた。
「猫の手って喫茶店知りませんか?」
「3年ほど前から毎年何回か聞かれるけど、この近くにそんな名前の店はないわよ。」
ママはちょっと不思議な顔をした。
僕は少し残念に思いながらも非礼を詫びた。
「ごちそうさま。」
ドアを開けながら言った言葉に猫が返事をよこした。鳴き声は低くて気持ちよい、いい声だった。
-- 結 --
この小話はその3で終了予定でした。
メールでその3を送信し、テーマを変更した時点で内容が途切れたようです。
以下はその続きになります。途中で切れた小話をだしてしまい申し訳ありません。
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その日は、1時間の遅刻について激しく怒られたが、ダメなところはそれくらいだった。商談は予想以上にうまくいき、打ち上げで飲んだビールはとてもうまかった。星占いはあんがいバカにならない。いい1日だった。
週末に喫茶猫の手に行きたくなって、探してみたが、そんな店は見つからなかった。それらしい場所にあったのは、『窓』という喫茶店。キツネにつままれた気分だった。いや猫につままれたのか。まぁ雨だったし、何かを見間違えたのかもしれないと入ってみた。
喫茶店『窓』の中は明るく清潔な雰囲気だった。机が2つ。カウンターはあるが、白基調だし、マスターではなく痩せ気味のママさんが一人で切り盛りしていた。店に特別変わったところは無く、普通の喫茶店に見える。カウンターにタオルをひいた焦げちゃ色のバスケットがあり、中に倒れたグラスが一つ、半分布をかけられてある。何か変わっているとしたらそれくらいだ。
とりあえずブレンドを頼んでカウンターに座った。他に客がいなかったからよもやま話をしたところ、店は10年も前からあったそうだ。その間ずっと一人で店を見ていたらしい。いつも赤字ギリギリなのよと明るく笑って話ていた。
その時音も無く猫がカウンターにあがってきた。こちらを興味なさそうに一瞥するとバスケットにちょっと窮屈そうに座り、グラスを布でこすり始めた。
「お気に入りなのよ。」
ママがちょっと困ったように言った。
3年ほど前からいるらしい猫は貫禄十分に太っており、少し赤く見えなくもない不思議な縞模様で緑のエプロンみたいな服を着せられていた。毛は長めでボサボサだが汚い感じはない。バスケットが壊れるかと思えるくらい目一杯詰まりながらも、器用にグラスを布でこすっていた。本当にお気に入りらしい。かわいらしく思える仕草に少し微笑むと、抗議の目線が一瞬こちらを向いた。その動きがまたかわいらしく、思わず笑いがでてしまった。笑い声に憮然とする猫にママと二人でまた笑ってしまった。
珈琲も飲み終わってお勘定をお願いすると、猫がのんびり立ち上がってこちらに来た。ママはレジスターの方を向いている。猫は僕が出した手を軽く跨いで通り過ぎ、真横に来ると爪を出さない手で肩を一回、叩いた。
ママが気がついてバスケットに追い払われてしまったが、猫は何も無かったかのようにグラスを布でこすりだした。ごめんなさいね、と言いながらママはお釣りを渡してくれた。僕は猫嫌いじゃないからかまわなかったんだけど、店としてはやっぱりダメなんだろう。
ドアの直前でどうしても気になっるので、失礼を承知で聞いてみた。
「猫の手って喫茶店知りませんか?」
「3年ほど前から毎年何回か聞かれるけど、この近くにそんな名前の店はないわよ。」
ママはちょっと不思議な顔をした。
僕は少し残念に思いながらも非礼を詫びた。
「ごちそうさま。」
ドアを開けながら言った言葉に猫が返事をよこした。鳴き声は低くて気持ちよい、いい声だった。