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第四話 「ゼロから始める......」

 

 正直に告白します。はい。

 

俺、悟道聡志はリアルからまた逃げました。ごめんなさい。

 

「仮想世界を題材にしたゲームを作成し大会委員に提出してもらいます」

 

なんてことを美人・学長・笑みつきの人に言われたら逃げたくなりますよ、フツーは。

その人の名前は新藤イリア。聞いた話によるとかなりの悪らしい。

いや、いい意味での悪で。入学早々に前学長の不正をあばき、崩壊しつつあった学校を一ヶ月で立て直したのである。

 

「ムリだろ~」

 

聡志は自宅のベッドで枕を叩きながら呻く。

 

一階から聡志の母親である留依の声が聞こえた。

 

「あー、今行くから先食っていいよ」投げやりな答えを返し寝返りをうつ。

 

 結論。大学に行きました。

最終的にはイリアからのメールで行く羽目になってしまった聡志は今日も國賀大学の門をくぐった。昨日と同じように同じ建物に向かう聡志。

 

「あ、おはようございます」昨日と同様にイリアがドアの前で待っていた。

 

「おはようございます聡志教授......」

 

「えっ?」

 

「今日から本格的にVRを設計して頂きたいので」

 

「いやいや、何で俺...私が教授なんですか?」

 

「昨日もお話ししたとおり、当学園にはPC関係の学部が存在しないので当校のYR代表者は聡志先生ですので教授という肩書がふさわしいです」後ろを振り返り講義室内を確認すると笑顔で続ける。

「昨日より若干、学生の人数が増えておりますがお気になさらず」

 

いや、めっちゃ気になります。とは言わずに聡志は講義室の扉を開く。先程まで騒がしかった室内が水を打ったような静けさに包まれた。

 

「え、えー.......」二日目だから大丈夫と聡志は思っていたが増えた人数は想定外であった。

 

昨日までは男子学生が99%を占めていたが今回は女学生も増え。合計200人程の人数が小さな講義場にひしめき合っていた。

 

「イリア、これはどういうこと?」聡志が小声で聞く。

 

「それは聡志がかっこいいという噂が学園中に広まったからですよ」

 

前にも説明したとおり聡志のみてくれは中々である。

イケメンではないが優しい笑顔と颯爽とした表情を持ち合わせている。

高校の頃に言っていた合コンでもかなり高い評価を受けていた。

 

「なるほど。って納得する訳ないじゃないですか!?」

 

しかし、学生の視線はこの二人の押し問答を楽しんでいる感じだ。

 

あー、メンドクサイ。

でも、ちょっと楽しい。が聡志の現在の心境である。

 

「昨日の講義にいなかった方のために簡単に自己紹介しますね。私の名前は悟道聡志です。ぶっちゃけていうとパソコンのプログラミング以外に特技はありませんがよろしくお願いします」

 

好意と興味が混ざった視線も悪くないが......

 

「今日から皆さんにはこれから創作するVRゲームのタイトルとゲームのシナリオを構築してもらいます。タイトルは10個選んだのち一番、しっくりくるやつで決めます」

 

ディスカッションが始まり、聡志は手持無沙汰に各エリアをまわりそれぞれのディスカッションをのぞき込んでいた。イリアのテーブルに来たところで止められてしまった。

 

「聡志はどういったゲームにするつもりですか?」

 

イリアと一緒にディスカッションしていた学生たちの眼差しが痛い。

 

「むしろ、学長は何がいいんですか?」

 

「私の事は学長、ではなくイリアって呼んで下さいとお願いしましたよね」拗ねた表情でイリアが討論に戻ろうとするが空気は完全に死んでる。

 

イリア!俺の事も考えてくれ。

 

聡志の心の声は届きそうにない......