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第一話 「スキってなに???」 

 

ニート

学校にも行かず、就職活動もせず、特別な資格のために勉強している人たちでもない人

 

 就職活動もせず大学卒業後、自分の部屋に舞い戻った悟道聡志(ごどう・さとし)の事である。

 

「あー、めんどくせぇ」

 

親に言われて山積みになった使用済みの洗濯物を途中で運びかけ、そのまま放置しパソコンに向き合いながら聡志が呟く。その時、ドアがノックされ1人の女が入って来た。清楚日本人美女の典型にはまる聡志の母親、悟道留依(ごどう・るい)である。

 

「聡志、洗濯物は?」

 

「今からやるからちょい待ち」一瞬の空白。小さな溜息。

 

「もぉ~、しょうがないわね」留依が洗濯物の山を部屋の外に持ち出す。

 

お気づきかもしれないが留依はいわゆる、ちょー親バカである。聡志が小さい時に夫が死に今の再婚相手が現れるまで女手一つで聡志を養っていたのである。

 

「お、ありがと」再びパソコンの世界に引き込まれながら聡志が礼をいった。

 

 聡志が朝食を食べに行ったのは最終的に午前10時だ。

平日。しかも、月曜日。世界が慌ただしく動いているが聡志はゆっくりと行動する。

 

「なんだ、義親父。生きてたのか?」

 

椅子に座り留依が朝ごはんを持って来るのを待つ間、向かいで新聞を読んでいる父親に問いかける。

 

「可愛い息子の顔を一度も見ないで出社できるかよ」

 

義父だが留依と同様、聡志には甘々な悟道熊生(ごどう・くまお)がコーヒーを飲みつついう。

 

「会社はいいのかよ?」

「社長というものがいなくても立ちゆくのが会社だよ。それに今日は友達とゴルフに行く予定だから大丈夫だぞ」

 

なんだそうか、などと呟きながら聡志が運ばれてきた朝食に手を付けはじめる。

今日の朝食は聡志の好物であるフレンチトーストとヨーグルトのイチゴ添えだ。

 

「ところで、聡志」

 

食事が終わり、熊生が居座りを正して聡志に話しかける。

こういう時は必ず就職活動の進捗状況を聞いてくる。

 

「何だよ、親父?」

 

聡志はニート。もちろん、就職活動などはしていない。

 

「就職活動は......どんな状況だ?」

「上手くいってない」小さなウソ。でも、完全に義親父にはバレる。

「今日から働かないか?」

 

それから、聞かされた話しはヤバかった。

 

出勤日一日目。

天候、異常なし。動機、異常なし。中毒症状、限界に達している。

などなど適当に想いながら風格のある門をまたぐ。

ここは日本最古の大学、國賀大学(こくが・だいがく)である。

風格のある建造物の中にちらほら最近、改修されたばかりの校舎があるが、中央にそびえ建つ校舎にはかなわない。

 

「でかー」などと小学生のような感想を述べながら、改修されたばかりの校舎に向かう聡志。

 

昨日の朝、父親から言われた事はマジでぶっ飛んでた。

 

「お前、パソコン得意だろ?」

「おお」

「明日から國賀でパソコンの入門編用の授業を教えろ。

 

それだけ......ホントに......

 

パソコン専門の校舎に入るとまず目に入ってくるのが、中央にある石壁に彫られた数々の数式だ。簡単な数式から理解不能な数式まで、目眩がするような数の多さだ。

 

「ここはパソコンの使い方が教えられている場所だ。決して数式の受講室ではない」

 

そう自分に言い聞かせながら受付まで歩く。

 

「おはようございます」

 

機械的な挨拶を下さった受付嬢に聡志がどの部屋に行くべきか尋ねた。

 

「聡志様ですね......二階、の一番奥の特別講義室でお願いします。学長がお部屋の前でお待ちしておりますので」

 

ちょっと、待て。内心、めちゃくちゃ焦る。

学長は大学のトップ......

 

「ありがとうございます!」聡志はそういうと階段を駆け上りいっきに講義室の前まで行った。

 

「遅れて申し訳ありません」別に遅れてないですよ。

「学長、直々にお待ちだとは知りませんでした」私こそいきなりごめんなさい。

「今日からお世話になります、悟道聡志です」悟道先生ですね、よろしくお願いします。

 

あれ、反ってくる言葉が全部......妙だ

 

「一つ質問よろしいですか?」質問が来たので。聡志が顔をあげる。

 

驚き。

 

「スキって何ですか?」目の前に立っていたのは20代前半の女であった。

 

 

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登場人物

悟道 聡志:ごどう さとし

 ニート。ずぼら。敬語使用不可能。

欠点だらけの聡志だが、一回友好的になるとそれはそれで面白い。

不思議な性格