衆議院の選挙制度は比例代表だけにしよう | ほたるいかの書きつけ

衆議院の選挙制度は比例代表だけにしよう

現行の衆議院の選挙制度は「小選挙区比例代表並立制」というものになっているわけですが。私は、この小選挙区制というものが、色々な点で政治を歪めていると常々思っているのです。無論、大量の死票が生まれ、得票率と議席率の乖離が甚しいという点が大きいわけですが、それだけではない。国会のありかたという点からも、小選挙区制が望ましいとはとても思えないのです(もちろん、この二点は強く関連しているわけですが)。

いまの選挙戦も、まるで争点が「政権選択」であるかのような-その先がどうなるかは付加的な問題であるという気にさえさせられる報道で満ちている-感じですが、果たして国会というものはそれでいいのか。国会が議論をする場である以上(代議士というくらいですからね)、国民の意見をなるべく反映してもらうように議席を配分するのが良いのではないかと思うわけです。小選挙区制の「メリット」として語られるものの中に、「どちら」が政権を担当するかが明瞭に出る、というのがあるわけですが、それを「メリット」などとはとても思えないのです。

それに、小選挙区にしたら政権交代がおこりやすくなるかというと、そんなことはない。試しに総務省のデータ を見てみましょう。下に、小選挙区、比例代表区それぞれの得票率を示します。数値は前回2005年のものと、前々回2003年のものです。前回は小泉郵政「改革」選挙のもので、自民党が300議席取ったやつですね。

総選挙小選挙区得票率(%)
自民党 民主党 公明党 共産党 社民党 国民新党
2003 43.85 36.66 1.49 8.13 2.87 --
2005 47.77 36.44 1.44 7.25 1.46 0.64

総選挙比例代表区得票率(%)
自民党 民主党 公明党 共産党 社民党 国民新党
2003 34.96 37.39 14.78 7.76 5.12 --
2005 38.18 31.02 13.25 7.25 5.49 1.74

小選挙区は、公明党や社民党など一部の選挙区にしか候補を立てない政党があるので、政党間の力関係を正しく反映したものではありませんが、それでも自民党は過半数の得票ではないのですよね。2005年の小選挙区での議席数は、自民党219、民主党52。実に4倍以上の違いですが、得票率では高々1.2倍の違いしかありません。

比例区ではより正しく政党間の関係がわかると考えられますが(小選挙区とのバーターをやってる場合もあるので多少のズレはあるでしょうが)、自民党の得票率は、2005年でさえ38%しかない。公明党と合わせてギリギリ過半です。その前2003年では、自公で50%を下回ります。もちろん議席配分をドント式で行えば多少は大政党に有利になりますから、議席は2003年でも自公でなんとか過半数になるかもしれません。でも、こっちの方が、政権交代は起きやすそうですよね。

比例代表一本に絞ることのメリットは、ストレートに政策で投票できることです。自公を政権から降ろしたければ、とにかく自公以外に投票すればよい。これが小選挙区だと、自公を落とすためにはどうしよう、という判断が入ってくることになります。今回の選挙でも、民主党が地滑り的勝利を納めそうですが、新政権への有権者の期待はかなり低い。これは政策で選んでいるのではなく、政権を誰が担当するのか(彼らが何をやるのかはさておいて)で選んでいるからでしょう。

比例代表制になっていれば、自公を降ろすのに、どういう政策が望ましいのかまで合わせて示すことができます。つまり、単に政権担当者を変えるというのではなく、どういう方向で変えたいのかを有権者の意思として示すことができる。国会の姿としては、この方がはるかに健全ではないでしょうか。

もう一つ付け加えると、なにせ複雑な世の中ですから、議員といえども個人で理解できる範囲というのは限られます。そこで政党という集団が必要になる(という言い方は、本当はあまりにも皮相なのですが、そのあたりは今回は措いといて)。とすると、どういう候補をどういう順位でリストに並べるかまで含めて、本来は選ぶべきだろうと思います。いまの(参院)比例区のように、個人へも投票するような方式はやめるべきでしょう(リストへの投票に絞るべき)。もちろん、小選挙区を廃止するほうがずっと重要ですけれども。

比例にしても政権交代は十分起き得ます。それに対して、小選挙区にして「二大政党」以外の意思が淘汰されることのデメリットは民主主義という観点からは破壊的に大きいと言わざるを得ません。小選挙区の本家と言われるイギリスでも、比例代表を求める世論は年々大きくなっている と聞きます(EU議会選はイギリスでも比例代表だし、最近設置されたスコットランドなどの議会も実質比例代表[小選挙区比例代表併用制]ですね)。

国会を、まるで我々から隔絶した「お上」のようにするのではなく、我々の意見を反映した「精鋭」によって議論する場としていくためには、比例代表一本にするのがいいと考えます。民主党は比例区の定数を減らしたがっているようですが、それはいかんでしょう。

(つづき:どんな比例代表制が望ましいのか )