統一協会信者の印鑑販売「会社」幹部逮捕に思うこと
報道にある通り、印鑑販売会社「新世」の社長ら7名が、特定商取引法違反容疑で逮捕された。社長らは統一協会信者で、さらに購入者を信者に仕立て上げるまでのマニュアルを公安が押収したと言う。
関連報道記事を挙げておく。
特定商取法違反容疑で7人逮捕 統一教会関連施設を捜索
『読売』2009年6月11日15時55分
印鑑販売→入信…霊感商法事件、統一教会の手順書押収
『読売』2009年6月13日14時35分
最後の記事のリードを引用する。
まあ統一協会系のサークル・団体なんていくらでもあるので、こういう形で信者を獲得することが発覚したからと言って今更驚くにはあたらないが、むしろ漸く警察が実態を明らかにし始めた、というところが驚きと言えば驚きか。公安部だし。
記事を見ると、被害者がどのように勧誘されたかが語られている。
最初のきっかけは、手相なのだ。
もちろん、どのように声をかけられたのかこれだけではわからないし、色々な話の一つとして手相が出てきただけかもしれない。断りにくい性格で、ついついついていってしまったのかもしれない。
だけど。
1年半ほど前、このブログを始めてから間もない頃、「江原啓之から統一協会への道 」というエントリを書いた。統一協会が勧誘教材として江原の出演したフジの番組「天国からの手紙」を使っていたというもの。江原と統一協会の間にはおそらく関係はないだろうが、やはり親和性はあると見るべきだろう。
で。
手相一般について、いまここでどうこう言うつもりはない。こういう形で悪徳商法に利用されるひどい場合もあれば、実際問題手相はどうでもよくて、実態としては人生相談になっているような手相占いもあるのだろう。現状では、人それぞれの付き合い方があるのだと思う。
ただ思うのは、手相やオーラ、霊に頼る人生でいいのか?ということ。被害者の方に対してではなくて、今の世の中に対して言いたいのだ。手相に頼らざるを得ないようにしたのは誰なのか、と。
占いやオーラ、霊といったものが持つ最も大きな問題は、それが人から主体性を奪うところにあるのだと思う。つまり、本来自立した人間が自主的に決定すべき判断を、他者に委ねているということだ。
いまの日本社会においては、自立した人間が、自律的に民主主義社会の主体として行動するということが大前提だろう。そして、政府は国民がそのように主体的に生きられるよう保障すべきだし、なにより教育によりそのような人間を育成する義務が政府にはあると思う(無論、そのような環境を整え、自立した教師が自主的に教育を進められるようにするべきである、という意味で)。
そう考えると、占いにしろオカルトにしろニセ科学にしろ(全部が全部というわけではないが)、なぜ批判されなければならないかと言えば、人間から主体性を奪うからだ、ということになる。自律的な生き方を阻害する、と言ってもいいかもしれない。だからこそ、「お水様」に教えを乞うような「水伝(水からの伝言)」は問題なのだと思う。血液型で他者を判断する血液型性格判断も、その人を見て判断するのではなく、血液型に判断を委ねているのだ。郵政の問題で総務相が更迭されたが、あれだってそもそも小泉の郵政民営化に端を発しているわけで、そこに国の将来を委ねてしまったというところで同根だと思う。
そういうわけで、今回の事件を見て思ったのは、個別の悪徳商法をその背後も含めて法で裁ける部分はきっちり裁きつつ、主体的に生きるとは、自律的に生きるとはどういうことかを問うていかなければならないのだということ。そのための科学的思考、そのための批判的思考、なのだと思う。
関連報道記事を挙げておく。
特定商取法違反容疑で7人逮捕 統一教会関連施設を捜索
『朝日』2009年6月11日11時15分
印鑑販売拡大、統一教会幹部が指示か メールを押収『朝日』2009年6月12日4時3分
不安あおり印鑑販売した容疑…統一教会信者を逮捕『読売』2009年6月11日15時55分
印鑑販売→入信…霊感商法事件、統一教会の手順書押収
『読売』2009年6月13日14時35分
最後の記事のリードを引用する。
「先祖が地獄で苦しんでいる」などと迫って高額の印鑑契約を結んだとして、社長らが逮捕された東京・渋谷の印鑑販売会社「新世」の関係先から、印鑑の購入者を世界基督教統一神霊協会(統一教会)に入信させるまでの手順を示した資料を、警視庁公安部が押収していたことがわかった。
同庁幹部が明らかにした。この手順は、教会幹部の間で「生産ライン」と呼ばれ、初めは信者であることを隠すよう指示した勧誘マニュアルも押収されている。公安部は、同じように信者が印鑑を販売する企業が都内だけでも20社以上あるとみて「霊感商法」の実態解明を急いでいる。
まあ統一協会系のサークル・団体なんていくらでもあるので、こういう形で信者を獲得することが発覚したからと言って今更驚くにはあたらないが、むしろ漸く警察が実態を明らかにし始めた、というところが驚きと言えば驚きか。公安部だし。
記事を見ると、被害者がどのように勧誘されたかが語られている。
「あなたは今、転機です」。川崎市の女性会社員(39)がJR渋谷駅前で、新世の男性販売員に声をかけられたのは2003年5月。キャリアアップのため大学に通い始めた時期で、手相を見てもらうと、「いい手相だから詳しく見たい」と、近くの新世の事務所に誘われた。このあとに、約一ヶ月後に再び呼び出され、結局1千万近く被害にあう様子が書いてあるのだが、それは本エントリの趣旨ではない(ひどい話ではあるのだけれど)。そこで生年月日や家族構成を細かく聞かれた後、突然、販売員から「あの世でおばあさんが苦しんでいる」「因縁を断ち切るには印鑑が必要」などと印鑑の購入を勧められた。
「お金がない」と断ったが、1本約12万円の印鑑の購入契約を結ぶまで5時間近くにわたって「絶家する」「結婚できない」と迫られ続けた。
最初のきっかけは、手相なのだ。
もちろん、どのように声をかけられたのかこれだけではわからないし、色々な話の一つとして手相が出てきただけかもしれない。断りにくい性格で、ついついついていってしまったのかもしれない。
だけど。
1年半ほど前、このブログを始めてから間もない頃、「江原啓之から統一協会への道 」というエントリを書いた。統一協会が勧誘教材として江原の出演したフジの番組「天国からの手紙」を使っていたというもの。江原と統一協会の間にはおそらく関係はないだろうが、やはり親和性はあると見るべきだろう。
で。
手相一般について、いまここでどうこう言うつもりはない。こういう形で悪徳商法に利用されるひどい場合もあれば、実際問題手相はどうでもよくて、実態としては人生相談になっているような手相占いもあるのだろう。現状では、人それぞれの付き合い方があるのだと思う。
ただ思うのは、手相やオーラ、霊に頼る人生でいいのか?ということ。被害者の方に対してではなくて、今の世の中に対して言いたいのだ。手相に頼らざるを得ないようにしたのは誰なのか、と。
占いやオーラ、霊といったものが持つ最も大きな問題は、それが人から主体性を奪うところにあるのだと思う。つまり、本来自立した人間が自主的に決定すべき判断を、他者に委ねているということだ。
いまの日本社会においては、自立した人間が、自律的に民主主義社会の主体として行動するということが大前提だろう。そして、政府は国民がそのように主体的に生きられるよう保障すべきだし、なにより教育によりそのような人間を育成する義務が政府にはあると思う(無論、そのような環境を整え、自立した教師が自主的に教育を進められるようにするべきである、という意味で)。
そう考えると、占いにしろオカルトにしろニセ科学にしろ(全部が全部というわけではないが)、なぜ批判されなければならないかと言えば、人間から主体性を奪うからだ、ということになる。自律的な生き方を阻害する、と言ってもいいかもしれない。だからこそ、「お水様」に教えを乞うような「水伝(水からの伝言)」は問題なのだと思う。血液型で他者を判断する血液型性格判断も、その人を見て判断するのではなく、血液型に判断を委ねているのだ。郵政の問題で総務相が更迭されたが、あれだってそもそも小泉の郵政民営化に端を発しているわけで、そこに国の将来を委ねてしまったというところで同根だと思う。
そういうわけで、今回の事件を見て思ったのは、個別の悪徳商法をその背後も含めて法で裁ける部分はきっちり裁きつつ、主体的に生きるとは、自律的に生きるとはどういうことかを問うていかなければならないのだということ。そのための科学的思考、そのための批判的思考、なのだと思う。