気になること:「国策捜査」と「ミサイル」
小沢氏周辺への捜査についての反応も一段落してきたようなので、ちょっと気になることを。
民主党は、あれは「国策捜査である」ということで検察(及び与党)を批判する戦術をとっているようだが、どうなのだろうか。
民主党は、明日にでも政権を取ろうかと窺っている政党であり、また多くの議員が実際に与党を経験している。当の党首からしてかつては政権の中枢にいたわけだ。そういう勢力が、疑惑をつきつけられた時に、ただ「国策捜査だ」ということで批判していて済むのだろうか?
可能性としては3つ-(1)本当に国策捜査である、(2)国策捜査ではない、(3)その中間。まあそれ以外ないわけだが。で、現状では本当のところどうなのか、まだ明らかではない。万人を納得させるだけの証拠は出ていない。だから、どれも可能性がある。
もし(2)だったとしよう。だとすれば、民主党は政権政党としては失格である。自浄作用が完全にないことを強く示唆する。(1)あるいは(3)だったら?それでも、証拠が出るまでは、検察批判は(してもいいけど)好ましいものではない。
もし本気で自民党を追い込みたいんだったら、「我々は徹底的に自らを調べた。その結果、~である(疑惑が払拭できるような証拠があるなら出せばいいし、一部でも検察の主張を認めざるを得ないのであれば、認めた上でどう対策をとるかを言えばよい)ことがわかった。我々はこれだけやった。それにひきかえなんだ自民党は。」と迫るのが政治というものではないのだろうか。それでこそ、ああ、政権につく資格があるなあ、と国民に思わせる政党になるのではないのか。
実際にやっていることは、単に検察を非難するだけである。自民党だって同様の疑惑は報道されているのに、自らに火の粉がかかるのを恐れてか、切り込もうとしない。結果的に、馴れ合っているだけだ。
仮に、本当に国策捜査だったとしよう。だとすれば、それこそ与党の思う壺ではないのか。自分が追及されずに済むのだから。民主党が自らの疑惑を自分で晴らした上で(あるいは疑惑を認めた上で改善の方向性を示して)、与党の追及をするというのが、自民党が最も恐れる道ではないのだろうか。そこまでやっての検察批判だったら、誰しもが納得するだろうが、いまのままでは結局どうなのかが明らかにされないままズルズルと進んでいっているだけだ。疑惑が疑惑のままである以上、そんな政党に政権についてもらっちゃ困る、というのが常識的な発想だろう。
いやもちろん私は民主党に政権についてほしいなんてこれっぽっちも思っていないのだが、現実に政権につく可能性のある政党が陰謀論めいたことをふりまいて、カネについてテキトーなことをやってもらってちゃ困るのだ。相手につけ入るスキを与えないよう万全の注意を払い、その上で切り返すのが正しい戦術ってもんではないのかなあ。これではまるで「批判対象についてロクに理解せぬままいい加減な批判をする(ごく一部の)ニセ科学批判」みたいだ。
いちおう言っておくと、私は、民主党に政権についてほしくないのと同程度に自民党にはさっさと下野してほしいと思っている。つまり、どちらも同程度にいてもらっちゃ困る、ということだ。だって、どっちも同じじゃない。小沢氏なんて、ついこないだまで自民党の中枢にいたんだし。大体、彼が仕えた田中角栄はそれこそ金権腐敗で検察とはずっとやりあっていたではないか。単に自民党が肥大化して派閥が政党化しただけとみるのが最も素直な見方ではないかと思うのだが、どうだろう。
両者で政権交代をしたところで(細かいところはさておき)政策なんてほとんど変わらないんだから(対立軸を作らないといけないなんて言ってる時点で発想が間違ってる。対立軸があるから異なる政党に結集するんだろうに)、財界・企業としては、両方に金やっときゃいいわなあ。国民から収奪して企業に分配するという構造が不変のものになるんだから。
で、もう一つ、最近の北朝鮮の「ロケット」騒ぎとの発想の関連を見る思いがするのだ。国際的には日本に自重を求めるのが大きな流れになっているが、まあ政府やメディアの騒ぎようは異常だろう。まるで戦争前夜のようだ。
国際的にもそうだし、国内でも、誰もがあれは実質的にはミサイルだと思っているというところでは異論はないだろう。問題は、ではそれを「ミサイル」という表現を使って批判するかどうか、だ。北朝鮮は「ロケット」だと言い張っているわけだ。だとすれば、こちらとしては、実質的にどうかはともかく、批判の上では「ロケット」ということにしておかないと、議論の入口でつまずくだけで、さらには向こうにつけ入るスキを与えるだけではないか。ロケットとして飛ばすつもりがまったくなかったという証拠なりなんなりが出たときに、「言ってることが違うじゃないか」とツッコめば良いのであって、それまでは相手の矛盾を突く形で批判していかないと、話は前に進まないだろう。
で、こういうあたりが、安易に「国策捜査だ」と主張するメンタリティと通ずるものを感じてしまうわけですよ。
ちなみに北朝鮮は何を考えているかわからん国家だから、とかいう話もよく聞くわけだが、だったら尚更こちらはロジックを通さないといかんだろう。同レベルで争って、どうやって国際的に支持される立場が得られると思ってるんだろう。
というわけで、どうも、政界には、ロジックを重視する雰囲気が欠け、安易に陰謀論に飛びつく素地があるような気がするのだ。まあ民主党には陰謀論でその筋では有名になってしまった議員もいることだし、なあ…。
***
これとは関係ないが、エントリ起こすには至らないのだが別の気になること。
ここのところずっと、毎日「奥健夫」での検索でやってくる人がいるのだ。最近何冊も本を出しているようだし、ちょっと浸透しつつあるのかもしれない。注意のレベルを上げておく必要がありそうだ。
とは言え、まだ古本屋には出てないし…新刊で買うのもバカらしいからなあ。現役の物理研究者であるだけに、罪が大きい。まあ古本屋で見かけたら、少し高目でも入手して批判しておく必要があるかもしれない。
やれやれ。
民主党は、あれは「国策捜査である」ということで検察(及び与党)を批判する戦術をとっているようだが、どうなのだろうか。
民主党は、明日にでも政権を取ろうかと窺っている政党であり、また多くの議員が実際に与党を経験している。当の党首からしてかつては政権の中枢にいたわけだ。そういう勢力が、疑惑をつきつけられた時に、ただ「国策捜査だ」ということで批判していて済むのだろうか?
可能性としては3つ-(1)本当に国策捜査である、(2)国策捜査ではない、(3)その中間。まあそれ以外ないわけだが。で、現状では本当のところどうなのか、まだ明らかではない。万人を納得させるだけの証拠は出ていない。だから、どれも可能性がある。
もし(2)だったとしよう。だとすれば、民主党は政権政党としては失格である。自浄作用が完全にないことを強く示唆する。(1)あるいは(3)だったら?それでも、証拠が出るまでは、検察批判は(してもいいけど)好ましいものではない。
もし本気で自民党を追い込みたいんだったら、「我々は徹底的に自らを調べた。その結果、~である(疑惑が払拭できるような証拠があるなら出せばいいし、一部でも検察の主張を認めざるを得ないのであれば、認めた上でどう対策をとるかを言えばよい)ことがわかった。我々はこれだけやった。それにひきかえなんだ自民党は。」と迫るのが政治というものではないのだろうか。それでこそ、ああ、政権につく資格があるなあ、と国民に思わせる政党になるのではないのか。
実際にやっていることは、単に検察を非難するだけである。自民党だって同様の疑惑は報道されているのに、自らに火の粉がかかるのを恐れてか、切り込もうとしない。結果的に、馴れ合っているだけだ。
仮に、本当に国策捜査だったとしよう。だとすれば、それこそ与党の思う壺ではないのか。自分が追及されずに済むのだから。民主党が自らの疑惑を自分で晴らした上で(あるいは疑惑を認めた上で改善の方向性を示して)、与党の追及をするというのが、自民党が最も恐れる道ではないのだろうか。そこまでやっての検察批判だったら、誰しもが納得するだろうが、いまのままでは結局どうなのかが明らかにされないままズルズルと進んでいっているだけだ。疑惑が疑惑のままである以上、そんな政党に政権についてもらっちゃ困る、というのが常識的な発想だろう。
いやもちろん私は民主党に政権についてほしいなんてこれっぽっちも思っていないのだが、現実に政権につく可能性のある政党が陰謀論めいたことをふりまいて、カネについてテキトーなことをやってもらってちゃ困るのだ。相手につけ入るスキを与えないよう万全の注意を払い、その上で切り返すのが正しい戦術ってもんではないのかなあ。これではまるで「批判対象についてロクに理解せぬままいい加減な批判をする(ごく一部の)ニセ科学批判」みたいだ。
いちおう言っておくと、私は、民主党に政権についてほしくないのと同程度に自民党にはさっさと下野してほしいと思っている。つまり、どちらも同程度にいてもらっちゃ困る、ということだ。だって、どっちも同じじゃない。小沢氏なんて、ついこないだまで自民党の中枢にいたんだし。大体、彼が仕えた田中角栄はそれこそ金権腐敗で検察とはずっとやりあっていたではないか。単に自民党が肥大化して派閥が政党化しただけとみるのが最も素直な見方ではないかと思うのだが、どうだろう。
両者で政権交代をしたところで(細かいところはさておき)政策なんてほとんど変わらないんだから(対立軸を作らないといけないなんて言ってる時点で発想が間違ってる。対立軸があるから異なる政党に結集するんだろうに)、財界・企業としては、両方に金やっときゃいいわなあ。国民から収奪して企業に分配するという構造が不変のものになるんだから。
で、もう一つ、最近の北朝鮮の「ロケット」騒ぎとの発想の関連を見る思いがするのだ。国際的には日本に自重を求めるのが大きな流れになっているが、まあ政府やメディアの騒ぎようは異常だろう。まるで戦争前夜のようだ。
国際的にもそうだし、国内でも、誰もがあれは実質的にはミサイルだと思っているというところでは異論はないだろう。問題は、ではそれを「ミサイル」という表現を使って批判するかどうか、だ。北朝鮮は「ロケット」だと言い張っているわけだ。だとすれば、こちらとしては、実質的にどうかはともかく、批判の上では「ロケット」ということにしておかないと、議論の入口でつまずくだけで、さらには向こうにつけ入るスキを与えるだけではないか。ロケットとして飛ばすつもりがまったくなかったという証拠なりなんなりが出たときに、「言ってることが違うじゃないか」とツッコめば良いのであって、それまでは相手の矛盾を突く形で批判していかないと、話は前に進まないだろう。
で、こういうあたりが、安易に「国策捜査だ」と主張するメンタリティと通ずるものを感じてしまうわけですよ。
ちなみに北朝鮮は何を考えているかわからん国家だから、とかいう話もよく聞くわけだが、だったら尚更こちらはロジックを通さないといかんだろう。同レベルで争って、どうやって国際的に支持される立場が得られると思ってるんだろう。
というわけで、どうも、政界には、ロジックを重視する雰囲気が欠け、安易に陰謀論に飛びつく素地があるような気がするのだ。まあ民主党には陰謀論でその筋では有名になってしまった議員もいることだし、なあ…。
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これとは関係ないが、エントリ起こすには至らないのだが別の気になること。
ここのところずっと、毎日「奥健夫」での検索でやってくる人がいるのだ。最近何冊も本を出しているようだし、ちょっと浸透しつつあるのかもしれない。注意のレベルを上げておく必要がありそうだ。
とは言え、まだ古本屋には出てないし…新刊で買うのもバカらしいからなあ。現役の物理研究者であるだけに、罪が大きい。まあ古本屋で見かけたら、少し高目でも入手して批判しておく必要があるかもしれない。
やれやれ。