『ロズウェルなんか知らない』篠田節子
面白かった!
いや~、面白かった。通勤時にチビチビ読もうかと思っていたのだが(なんせ文庫で600ページ以上あるので)、段々盛り上がってきて、日曜に一気に読んでしまった。面白くて、イタズラっぽくて、ドキドキして、ヒヤヒヤして、バビンチョ!じゃなくてうーんと唸って、ほっとして嬉しくなって、そして読み終えた後に現実を振り返って少し暗くなる。そんな感じ。
以下、若干のネタバレあり。
東京から中途半端に遠い寂れた町。スキー場は撤退し、温泉や名所もない。青年クラブの連中が、必死になって客を呼び込もうとしたのだが、現代の客商売を知らない頭の固い年寄り連のおかげで観光客の評判は芳しくない。ところが、一部の客がUFOが出たと勘違いし、それがネットで密かに話題になる。それを知った青年クラブの、特に都会から移住してきた連中が、「日本の四次元地帯」で町を売り出そうとする。なかば破れかぶれになったほかのメンバーたちも乗っかり、ストーンサークルをコッソリ作ったり、捨て置かれた遊園地のお化け屋敷を改造して宇宙人の死体解剖の再現場面を作ったりして、段々話題になり、客がわんさか押し寄せるようになる。そして…というお話。
何が面白いかと言うと、状況設定がリアルなのだ。長引く不況(景気のいいのは大企業だけだ)で落ち込む「地方」がとてもリアルに描かれている。また、保守的な年配の人々の姿がいかにもありそうな感じに描かれている。現在私は結構な地方に住んでいるのだけれども(県庁所在地ではあるが)、こちらに来て、仕事のつながりなどでずっとここに住んでおられる方々とお話などしていると、なるほどなあ、と思ってしまうところが多々あるのだ。「そんなのは町の恥だ!」とか、「挨拶は町長がしねえと」みたいな発想。
さらに、当然「四次元地帯」とか「UFO・宇宙人」で売り出せば、雑誌やテレビの取材がやってきて、やがてバッシングに変わる、といういかにもな展開をするわけだが、それがまたリアル。そして、その小説内で展開される批判が実に正しい。つまり、そういうオカルトめいたものを容認・助長する雰囲気こそが、オウムのような事件につながる遠因となるのである、と。
そして、どんなに論理的な批判がなされても、信じる人は信じる、ということがまた冷静に描かれているのが面白い。どれだけバッシングされても、それが逆に宣伝になって、人がわんさかやってくる。UFOとスピリチュアルを一体化したような連中まで現れる。
なのでそのラストの展開は、町を復興させようと必死になっている青年クラブの連中に感情移入して読んでいると、激しいバッシングにもかかわらず町に人を呼び込む展望が見えるので、ホッとするのだ。
ところが、小説の展開があまりにもリアルなので、結局信じたい人は何を言っても信じてしまう、ということもまた正面から見てしまうことになり、日常の自分がやっていることと重ね合わせて考えてみると、一体どうしたらいいんだ、と悩みは深まってしまうのだ。
というわけで、単純に小説としても面白いけど、ニセ科学に興味のある人には、より一層面白いと思う。
いや~、面白かった。通勤時にチビチビ読もうかと思っていたのだが(なんせ文庫で600ページ以上あるので)、段々盛り上がってきて、日曜に一気に読んでしまった。面白くて、イタズラっぽくて、ドキドキして、ヒヤヒヤして、バビンチョ!じゃなくてうーんと唸って、ほっとして嬉しくなって、そして読み終えた後に現実を振り返って少し暗くなる。そんな感じ。
以下、若干のネタバレあり。
東京から中途半端に遠い寂れた町。スキー場は撤退し、温泉や名所もない。青年クラブの連中が、必死になって客を呼び込もうとしたのだが、現代の客商売を知らない頭の固い年寄り連のおかげで観光客の評判は芳しくない。ところが、一部の客がUFOが出たと勘違いし、それがネットで密かに話題になる。それを知った青年クラブの、特に都会から移住してきた連中が、「日本の四次元地帯」で町を売り出そうとする。なかば破れかぶれになったほかのメンバーたちも乗っかり、ストーンサークルをコッソリ作ったり、捨て置かれた遊園地のお化け屋敷を改造して宇宙人の死体解剖の再現場面を作ったりして、段々話題になり、客がわんさか押し寄せるようになる。そして…というお話。
何が面白いかと言うと、状況設定がリアルなのだ。長引く不況(景気のいいのは大企業だけだ)で落ち込む「地方」がとてもリアルに描かれている。また、保守的な年配の人々の姿がいかにもありそうな感じに描かれている。現在私は結構な地方に住んでいるのだけれども(県庁所在地ではあるが)、こちらに来て、仕事のつながりなどでずっとここに住んでおられる方々とお話などしていると、なるほどなあ、と思ってしまうところが多々あるのだ。「そんなのは町の恥だ!」とか、「挨拶は町長がしねえと」みたいな発想。
さらに、当然「四次元地帯」とか「UFO・宇宙人」で売り出せば、雑誌やテレビの取材がやってきて、やがてバッシングに変わる、といういかにもな展開をするわけだが、それがまたリアル。そして、その小説内で展開される批判が実に正しい。つまり、そういうオカルトめいたものを容認・助長する雰囲気こそが、オウムのような事件につながる遠因となるのである、と。
そして、どんなに論理的な批判がなされても、信じる人は信じる、ということがまた冷静に描かれているのが面白い。どれだけバッシングされても、それが逆に宣伝になって、人がわんさかやってくる。UFOとスピリチュアルを一体化したような連中まで現れる。
なのでそのラストの展開は、町を復興させようと必死になっている青年クラブの連中に感情移入して読んでいると、激しいバッシングにもかかわらず町に人を呼び込む展望が見えるので、ホッとするのだ。
ところが、小説の展開があまりにもリアルなので、結局信じたい人は何を言っても信じてしまう、ということもまた正面から見てしまうことになり、日常の自分がやっていることと重ね合わせて考えてみると、一体どうしたらいいんだ、と悩みは深まってしまうのだ。
というわけで、単純に小説としても面白いけど、ニセ科学に興味のある人には、より一層面白いと思う。
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