「江原スピリチュアルの大嘘を暴く」
- 読んだ↓(また画像がないよ…)
- 江原スピリチュアルの大嘘を暴く/大槻 義彦
- ¥880
- Amazon.co.jp
ちょっと前に買っておいたこの本、今日一気に読んだ(すぐ読めます)。
まあ大槻さんについては、ニセ科学を批判する側からも色々言いたいことはあるだろうし、この本の論調も、そういう意味では相変わらず、なのだけれども。
この本の形式、どちらかというとQ&A集みたいな感じで、「前世に特別な職業の人物が多いのは何故?」とか「前世の国籍が偏っているのは何故?」のような問いに対し、2,3ページ程度で答を与える、というものになっている。だから、問いの数が70個ぐらいあり、なかにはまあ揚げ足取りのようなものもあると言わざるを得ないだろう。
また、そういう形式だから、江原啓之のスピリチュアルが抱える問題の本質をえぐるというよりも、江原トリビア集的なものになっている面もある。
さて、現代において、多くの人々に科学はトリビアの集積と思われているのではないか、と学習院大の田崎晴明さんは指摘したが(出典がどこかわかりません。すいません)、それと似たような意味で、この本は江原のトリビアの集積であり(勿論、物理学に基づく批判的検討がされたトリビアであるが)、決して江原、あるいは現代社会がなぜ江原を受け入れるか、という本質的な部分を解明するものではない。だから、この本がいくら売れても、江原を信じる人はほぼまったく影響を受けないだろう。残念ながら。
では、どういう人がこの本を読むべきかというと、おそらく次の二種類の人だ。
- 江原について、なんとなく胡散臭く感じてはいるが、どこがおかしいかハッキリ知りたい
- 江原はおかしい、間違っていると思っているが、「そんなものほっとけ」「わざわざ労力かけて批判するほどのこともない」「騙されるやつが悪い」と思っている
江原を信じている人はもちろんだが、なんとなく「いいな」と思っている人、テレビに江原が出てるとついつい見てしまう人を説得する力は、たぶんこの本にはない。
ついでに言えば、kikulog を普段から読んでいるような人にとっては、今さらあまり得るものはないだろう。江原のトリビア集という以上の意味はない。
しかし、それはそれでいいのだと思う。ニセ科学の批判の仕方は一通りではない。例えばTAKESANさんが述べておられる通り、万能包丁 などないのであって、大事なのはこの本の有効な使い方を考えることなのだ。きっと。信じかけている人を説得できるような文章が書ければ、もちろんそういう本も出して欲しい(かなり難しいと思うけど)。でも、いずれにしても、色々なアプローチがあっていい。
もう一つ、この本の意義を挙げるとするならば、やはり江原を正面から批判した本を、流通ルートに乗せて、本屋に並べることに成功したことだろう。週刊誌などでようやく批判が活字になってきたものの、まだまだ江原の影響は大きい。それを覆すには、本の力は有効だ(もっといえば、テレビの力がいる。ネットは大衆への影響という意味ではまだまだ非力であろう)。とにもかくにも、江原を大々的に批判した本が本屋で平積みになっている。そういう本を書けたのは、大槻さんの力量だろう。