「露点」の定義? | ほたるいかの書きつけ

「露点」の定義?

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 で、パラパラ見ていたのだけれども。露点のところでちょっと違和感が。
 まず「露点」とは何かを説明しておくと、これは湿度に等価な量で、何度で結露するか、という温度。露点温度とも言う。湿度が高ければちょっと気温が下がってもすぐ結露するし、乾燥していれば相当気温が下がらないと結露しない。
 じゃ湿度とは何か、というと、水蒸気圧(気圧のうち水蒸気が作る分圧)がその温度での飽和水蒸気圧の何%か、というもの。飽和水蒸気圧というのは、それ以上水蒸気を詰め込んでも気体でいられずに液体(あるいは固体)になってしまう圧力。理想気体の状態方程式としてPV=nRT(圧力x体積=モル数x気体定数x絶対温度)というのがあったと思うけれども、両辺Vで割れば、P∝ρTとなる(ρは質量密度、kg/m^3とか)。だから、温度が一定ならば、詰め込んだ気体分子の量に比例して圧力は増す。
 ちなみに飽和水蒸気圧は温度だけで決まる。これは理想気体の状態方程式という条件に加え「飽和している」という条件が加味されるので、圧力、密度、温度という3つの変数のうち独立なのが1つだけになるからである。

 さて、温度Tの関数であるところの飽和水蒸気圧をe_s(T)、水蒸気圧をeとすると、露点温度Tdは e_s(Td)=e という方程式を満たす温度 Td で定義される。つまり、圧力一定で空気の温度を下げたときに、ちょうど飽和に達する(湿度100%になる)温度が露点温度というわけ。

 で、上の本の2つめ、第2分野のpp.242-243を見ると、どうも露点温度が e_s(Td)=e ではなくて、飽和水蒸気圧に対応する飽和水蒸気量(密度)をρ_s(T)と置き、水蒸気量をρとしたとき、ρ_s(Td')=ρとなるように定義されているようなのだ(混乱を避けるため、こちらの定義の露点温度をTd'とした)。ちなみにe_s(T)とρ_s(T)は理想気体の状態方程式で移れる。つまり e_s(T)∝ρ_s(T)*T となるはず。
 ひょっとしてTd=Td' になるのかとも思ったが、どう考えても Td' < Td になる。直感的には、Td' の定義のほうは圧力ではなくて体積一定(密度一定)で温度を下げていくので、Td(圧力一定の時の露点温度)まで下がったとき、水蒸気圧も下がってしまい、Tdでの飽和水蒸気圧に達していないはずで、もっと温度を下げないと飽和に達しない。つまり、Td'<Td のはず。

 p.242の文章自体は問題がないと思うのだけれども(詳しい定義とかは書いてないし)、p.243の図9-1を解釈すると、上で書いたようなρ_s(Td')=ρという露点温度の定義になっているとしか思えないのだ。

 うーん、何か勘違いしているかな。
 圧力(水蒸気圧)で水蒸気量を考えるのは結構難しいと思うので、飽和水蒸気量(密度)で考えると言うのはアリだとは思うのだけれど。でも、図を描くときは正しいものを描かないといけないと思うのだけどな。