産経某記者ブログがかなりアレな件 | ほたるいかの書きつけ

産経某記者ブログがかなりアレな件

 幾つかのブログがすでに取り上げていますが。
 『産経』の古森義久記者のブログ がまた凄い(こちらのエントリ でこの前触れたのは、別の阿比留瑠比氏のブログ。それとはまた別)。
 件のエントリのコメント欄で、ここでもni0615さんが奮闘してくださっているので、いまさら付け加えるものでもないのですが、あまりにもスゴイので、引用してみる。
要するに朝日新聞はNHKが海外向けの放送で、日本としての主張をしてはいけない、というのです。
日本の国益を守る主張もしてはダメだというのです。
日本を非難する側、日本を敵視する側の主張をまずきちんと伝えろ、というのです。
あるいは国連の主張が日本の主張よりも優先されるべきだ、というのです。
さて、ホントにこんなこと『朝日』が言っているのだろうか?『朝日』の社説3/26付 を見ると、
 このことは海外向けの放送でも同じだろう。日本の政府の主張だけを色濃く反映していたとしたら、だれがその報道を信じるだろうか。日本とは利害が反する国の主張も公正に伝えてこそ、その放送は権威あるものと認められる。
などと書いてある。古森氏の引用の仕方はフェアではない(というか間違っている)。日本(政府)の主張「だけ」ではなく、対立する国の主張も伝えるのが大事だ、と言っているだけだ。左右を問わず、実に当たり前の主張であろう。BBCなんかそうだし、アルジャジーラの成功もそれを物語っている。
 そもそもメディアが主張するのはそのメディアの主張であって、日本(古森氏の言う「日本」は日本政府のことだと思うが)の主張を代弁するものではないだろう。メディアが政府の主張を代弁するのであれば、世の中に必要なのは大本営発表だけだ、ということになってしまう。

 さらに続ける。
まさに朝日新聞は「日本」という概念が嫌いのようです。
日本という国家も、その政府も、日本国民の代表機関であるという民主主義の基本、さらには主権在民の原則、あるいは国民国家の主権を認めていないようです。
朝日新聞は日本に関しては、国家や政府は国民とは別の場に立ち、国民の意思を表さず、国民をむしろ抑圧する存在であるかのようにとらえているのです。

しかし現実の民主主義システムでは、国家とは国民の集合体であり、政府とは少なくとも国民多数派の公的代表なのです。「国家は人民を抑圧する機関」だというのは、マルクス主義者の主張でしたが、いまの朝日の主張もそれに似ています。

(中略)

国民にとっての利益が国益です。国民の代表である国家や政府はその代弁をしているわけです(何度も繰り返しますが)。日本人拉致被害者の安全確保や帰国を求めることはまちがなく「国益」でしょう。「幅広い論議と慎重な吟味」が必要でしょうか。尖閣諸島が日本領土だと主張することも、「政府と異なる考えが国益にかなう」のでしょうか。
政府が主張する国益は日本のように民主主義国家では国民多数の求める、最大公約数としての国益です。どんな課題でもどこかには異論はあるでしょう。その異論の存在のために国民多数派の意見は対外的に表明してはならない、というのが朝日新聞の社説でもあるのです。
要するに、「政府は国民の代表である、だから政府の主張は国民の主張(の代弁)である」というわけ。いまどきこんな能天気なことが言える人が記者をやってるということに驚く。中学生か。いや、中学生に失礼だな、それは。
 そして、政府の主張はNHKによって一方的に海外に流されるべきである、なぜならそれが国民の主張であり、国民の利益だから、というわけだ。なんという単純さ。

 この記者の主張はいくつもの間違いを含んでいる。
  1. NHKという報道機関に特定の国の政府の主張をさせること(報道ではなく、主張せよと迫る。エントリ後段では、解説という形とか云々などと言っているが、本質的にはそういうこと)
  2. 国際的に対立する意見が存在する場合、自国政府の主張のみを一方的に流せ、ということ(アンフェアな報道をすべし、と)
  3. 国家と国民を同一視していること
 これに従うと、古森氏は、先日の「集団自決」訴訟の判決について、不当判決だとかは言わないわけですよね?選挙で選ばれた議員によって組織された政府が選んだ最高裁裁判官(国民審査も入ってる!)によって任命された裁判官による判決ですよ、「国益」なんですよね?その判決。

 しかしまあこのエントリについてもコメント欄はこわいなあ。疑問を持たないんだろうか?『朝日』の言うことにはとりあえず反対しとけ、で反対したら日ごろの鬱憤が晴らせた気になってオシマイ、なのかな。
 議論の中身が反日か否か、のようになっていて、事実はどうか、とか、論理的整合性はあるか、とか、過去からの積み上げはどうなっているか、とかが全くない。実に非科学的な議論が展開されている。これが日本を(それなりに)代表するメディアの記者だってんだから、日本のジャーナリズムはどうなってるんだ、という気分(ちなみに私は『朝日』についてはその体たらくぶりに普段から腹を立てている一人です。それについてはいずれまた)。