大学教育への介入と統制 | ほたるいかの書きつけ

大学教育への介入と統制

「大学教育内容に指針 学術会議に審議59年ぶり依頼へ国が一定方向性 文科省方針」  (『東京』)

 ついに文科省が大学教育の内容まで統制をはじめる気らしい。大学の自治や自主性もなにも踏みにじることになるわけだが、こんなことで大学が活性化されると思っているのだろうか?大学の教育をなんだと思っているのだろう。まるで缶詰工場のように学生を教育し、規格品を作り上げればそれでよい、下手に考える能力のあるものなど世に送り出すな、と言っているような気がする。実際、大枠ではその方向で教育改革というのは進んでいるわけだけど。

 研究と教育というのは、たとえ一般教養レベルでも不可分のものであって、自由な発想で推進された研究成果を背景に、現場の人間が実情に応じて知恵を絞って、初めて本物の迫力のある良い教育ができるのだ。上から統制したってうまくいくわけがない。

 もちろん、現状で問題はたくさんあるだろう。しかしまずは、その問題が大学人の問題なのか国からの締め付けによって引き起こされた問題なのか(ここ数年、特に独法化以降は問題だらけだ!)を分ける必要があるし、大学人に責任のある問題であったとしても、このような形の統制で果たして質が上がるのかと言う検証も必要だ。さもなければ、介入するだけ介入し、研究者を疲弊させ、教育の荒廃だけでなく研究の後退も招くことになる。

 学術会議で議論してもらうそうなので、おいそれと文科省に都合の良いようには進まないだろうけれども、アメとムチを使い分け大学をすっかり支配下におさめたかに見える現状では、スルスルと進んでしまうのかもしれない。あまり楽観はできない。

 大学教育に対する統制については言いたいことが山ほどあるのだが、それはまた改めて書いていこうと思います。このままでは日本の高等教育は滅び、人材が枯渇しますよ(高等教育の意義は「人材の育成」だけでは無論ないけれども、国にとっても困るでしょ?)。