「スピリチュアル」の蔓延 | ほたるいかの書きつけ

「スピリチュアル」の蔓延

とにかく登録せんと始まらん、ということでブログをスタートできる状況まで持っていったものの、多忙のためエントリをまったくあげられず。が、ちょうど下記の本を読んだので、その感想など。

テレビ霊能者を斬る メディアとスピリチュアルの蜜月 (ソフトバンク新書 57)/小池 靖
¥735
Amazon.co.jp

第1章で江原啓之、第2章で細木和子を取り上げ、第3章ではこの30年ほどの間に現れた「霊能力」者(「超能力」者含む)について概観し、第4章でメディアと「霊能力」者との関係について考察している。少なくとも、ようやく江原の批判が活字になったという点で、大きな意味を持つだろう。批判すべき点も要領よくまとめてあると思える。ただ、新書という制約なのだろうが、全体として「レジュメ」という感は否めない。個別の事象について、より深い考察が望まれる(それは新書では対象を一人に絞るなどしなければ無理なのだろうけれども)。逆に言えば、(著者も書いているけれども)この分野の深さ・広さを示しているとも言えよう。今後に期待したい。

なお、現時点において広く読まれて欲しい内容であるだけに、4章の伝統的宗教の議論がやや上滑り気味なのが気になる。伝統的宗教とオカルトの違いはあるのか?という問題意識は重要であるとしても、(限られた紙面という制約はあるとはいえ)そこから伝統宗教の意義の考察・再評価へと至る論理はあまり整理されていないように感じた。また社会主義とは宗教を根絶しようとする運動である、という捉え方も俗的で、一面的に過ぎる。せめて「スターリン時代のソ連を典型とする」という限定を付して欲しかった。

「おわりに」によると、著者のブログがあるということである。
http://d.hatena.ne.jp/ykoike/
更新頻度はあまり高くないようであるが、しばらくはチェックしてみたい。