在る日
海へ行こうと 気まぐれに車を西へ走らせた
いつか観た夕日を探しに
記憶を辿りながら
あの日の西日が二人を射した海岸を探
した
若い二人が 気まぐれに歩いた場所は
曖昧で
奔走の末 漸くあの日交わした
「また来よう」
という約束の地に辿り着いた
あの頃から 二人は少し大人に成り
君の伸ばした髪は
あの頃と同じように 夕日に照らされ
煌めき
僕は少し背筋を凛と伸ばし
あの時繋いだ君の手とは違う
小さく柔らかな手をしっかり握り
履いていた靴を脱ぎ捨て
黄金色の砂浜を駆け出した
辺りを茜色に染める落陽を
君は「朝日のようだね」と呟く
東に住む僕達は
水平線近くの太陽は朝日と認識してしまう
此の夕日を浴びる西の人達は
眠い目を擦り
カーテンを開け朝食の準備でもしているのだろうに
君は長く伸びた陰を引き摺りながら小さな手を握り
「朝日が観たいね、西に行こう」と荒唐無稽な事を口にする
「海の向こうで暮らしてみたいね」とも云う
「いいね」と云いながら
屹度何処に生ても
僕達は相変わらずに暮らしていくのだろうと
飽きっぽい君は「海の向こうで暮らしてみたいね」を繰り返し
屹度此の地に帰ってくるのだろうと
夕日に染まった砂浜に無数の足跡を残し
三人はまた東の地へと帰る
幸せは 二人のいる場所に在る
遠ざかる落陽に また明日と 約束の地を離れた
carpe diem






