最近の私は、まるで終の始末をしているようだなと、心のどこかで思っていた。
アルバムの整理、子供たちへ遺すもの
遺影の写真をピックアップし
それらの全てが終わった時に心から安堵した。
もう大丈夫。
(.....何が?)
ここ最近はまるで死神にとりつかれているようだよと友人に話した。PETの待ち時間、薄暗い部屋の中で何故かやっと楽になれると思っていた。死がとてもとても甘いものに感じた。
心底、うっとりするほどに。
今思えば、辛くにっちもさっちもいかない人生から裸足で逃げ出したいという、ただのくだらない現実逃避だったのだろう。
本当に下らない。
だけど逃げ出したくもなるんだよ、こんな無理ゲーやってらんねえよって。
主治医に話すと、静岡に行く事を許可してくれた。そして戻ってきても治療をしてくれると言ってくれた。
私はまた泣いた。
もう最近は泣いてばかりだな。
やってらんないよほんとに。
続けて先生はこう言った、ここまで進行した私の癌に対して果たしてその治療が効果があるのかは不明であるという事。そもそもエビデンスとは多数の症例をもってしてエビデンスとするもので、そこから外れるという事は、ある意味人体実験と言っても過言ではないという事。
そして、一通り医学的な見解を述べた後に
「でも僕はエビデンスから外れた事にチャレンジする事を否定するタイプでもないので。」
と、軽く笑って先生は言った。
ほんとかっこいいな。今の主治医。
子供たちと少しでも一緒に居たいなくらいの思いでは、おそらくこの先戦っていけないと思った。
もっと貪欲に生に執着しなければ、あっという間に刈り取られて行く気がする。
行く道は険しく、辿り着く先も今は見えない。