緊迫感が増している米朝問題を前にして、

「北朝鮮を挑発(刺激)するべきではない」という意見をよく耳にする。

「あくまでも話し合いで解決するべきだ」という意見も多いが、

北朝鮮以外の国はこぞって話し合いに応じる柔軟な姿勢は崩していない。

アメリカにしても「話し合いは金正恩氏の決断しだいだ」と述べている。

話し合いを拒否しているのは北朝鮮のみだ。

が、そのことについての言及があまりにも稚拙で知性乏しく感じられる。

現状において、国内の評論家や学者が言うべきは、「北を挑発するべきではない」ではなく、

「北は話し合いに応じるべき」であるはずだ。

それがいつの間にか、主語が入れ替わってしまっている。

「日本はどうするべき」とか、「アメリカはどうするべき」というのは、論点がズレている。

これは、ヤクザに対する姿勢とそっくり同じだ。

ヤクザに脅されている庶民が、
「ヤクザを挑発(刺激)するべきではない」と言っている姿とほとんど変わらない。

「話し合いで解決するべきだ」というのは、他の誰でもない「(ヤクザは)話し合いで解決するべきだ」ということであり、「(庶民が)話し合いで解決するべきだ」では意味を為していないし、何の解決策にもならないことがなぜ理解できないのか。


現在の北朝鮮は、ある意味、「人質を取って篭城している連合赤軍」のようなものだ。

ただ一つ大きく違うところは、「立て篭った建物内で殺傷兵器を製造している」というところだ。

通常の立て篭り事件と違い、「兵糧攻めによる時間稼ぎが必ずしも功を奏す」とは限らず、

「兵糧が尽きる前に、その殺傷兵器が完成してしまえば、皮肉なことに、その建物を包囲している警官達も逃げざるを得なくなる」という危険性も同時進行中だ。


テレビの刑事ドラマの登場人物のある者はこう言う。

「甚大な被害が出る前に犯人を狙撃するべきだ」

しかし、別のある者はこう言う。

「犯人を挑発(刺激)するべきではない」

それとまるで同じではないか? 


アメリカ大統領トランプ氏はこう言っている。

「もし、警官に向かって発砲するような真似をすれば、突入する」


これに対して北朝鮮の独裁者・金正恩はこう述べている。

「愚かな警察の行動をもう少し見守る」


まさに、「人質篭城事件」の様相を呈していると言える。

で、ここでもう一度、先に述べた言葉を思い出してみよう。

「北を挑発するべきではない」

ちゃんとした頭脳を持っている者なら、この言葉が如何にズレた意見かが分かるはずだ。