5月13日は「愛犬の日」。

犬は大事な家族の一員だが、過剰な触れ合いは要注意だ。

なぜなら、人に感染すると病気の原因になる病原菌を持っているからである。

犬からの感染症で最も怖いのは発症すると100%死亡する狂犬病。

国内では狂犬病予防法(予防注射)で封じ込められている。

では、どんな病気に注意すべきなのか。

国立感染症研究所・獣医科学部の鈴木道雄主任研究官が説明する。

「ペットと生活していればかまれることも多いはずです。
かまれて感染する病気には、『パスツレラ症』や『カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症』があります。
どちらも病原菌は、犬や猫の口の中にいる常在菌です」

菌は唾液に含まれるので、傷口をなめられたり、なめた爪で引っかかれたりしても感染する可能性がある。


保健所への届け出義務がないので国内の発症数は分かっていないが、比較的に多いと考えられるのは『パスツレラ症』。

「パスツレラ症はかまれて半日~1日内に発症します。かまれたところがはれて、激しい痛みを伴うのが主症状。ただし、持病をもつ高齢者など免疫力が低下している人では、かまれなくても菌を吸い込むことで気管支炎や肺炎を起こす場合があります」


一方で、『カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症』の発症はまれ。

しかし、発症して重症化すると死亡する恐れがあるから要注意だ。

「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は噛まれて腫れることはあまりありませんが、全身症状(別項)が現れるのが2~3日後と遅い。そこから急激に悪化して、敗血症を起こして亡くなるケースがあるのです」

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の致死率は約30%。

患者の9割は40歳以上で、なぜか男性が7割近くを占めるという。

噛まれた傷口の大小が発症や重症度に関係するわけではない。 

小さな傷でも症状が現れたら、すぐに医療機関へ行くべきだ。

できれば感染症科のある病院を受診しよう。

ちなみに、治療は抗菌薬を投与する。


「『カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症』は、受診が遅れて救急車で搬送されて集中治療室に入ることが多い。症状が軽いうちに治療を開始することが重要になるのです」

ペットの犬からうつる感染症は噛まれなくても、口移しでエサを与えたり、スプーンやはしを共有することでもリスクが高まる。

キスなどの過剰な触れ合いもできるだけ控えた方がいいという。

「過敏になる必要はありませんが、愛犬家であるのなら感染症のリスクを十分認識しておくことが大切です」

 

【パスツレラ症の症状】

噛まれて半日~1日内に発症。かまれたところがはれ、激痛がする。
死亡することはない。


【カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の症状】

噛まれて2~3日後に発症。
発熱、悪寒、吐き気、腹痛、下痢、筋肉痛など。
重症化すると敗血症で死亡する。