輝政が提灯の灯りを階下にかざすと……。


ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…。

不気味な足音を立てながら、一人の男が階段をゆっくり上ってきていた。


ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…ギシ…ギシ………。


その男は、輝政が退屈しのぎに琴(こと)を弾かせている男だった。
「なんだ。その方か。何をしにきた?」
輝政が問いかけると、


「殿が大広間で肝試しに興ぜられ、一人で天守閣にお上りになられたと…。寂しくしておられるかと思い、琴でもいかがかと…。」
と、男は答えた。



「なるほど…琴の音を聴きながら物の怪が出てくるのを待つのも一興よな。
よかろう。爪弾く(つまびく)がよい。」



「御意。」
男は手にした爪箱を開こうとしたが、開かない。


「と、殿。琴の爪箱が開きません。」


「なに?じやあ、ワシが開けてやろう。」
輝政は、男から爪箱を受け取り、開けようとした。
だが、開かない。

しかも、爪箱は輝政の手にめり込んできた。

「ば、バカなあせる


足で爪箱を踏みつぶそうとしたが、今度は足に張り付いて取れなくなった。


男は輝政の様子を見て、ニヤリと笑っている。


「何をしておる?手伝え!」
そう言った途端、輝政は仰向けに倒れてしまった。


その様子を見て、男は不気味な笑い声をあげている。「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……」


「無礼者めむかっ何を笑うておるむかっ
輝政が怒鳴るのと、男の口が耳まで裂けたのが同時だった。


メリメリメリ…。
口が耳まで裂け、


ミシ…ビシ…ビキビキ…。嫌な音を立てながら、男の体中の皮膚が裂け、血しぶきをあげながら筋肉が盛り上がっていく…。

ミリ…ベキベキベキ…。
頭の皮を突き破って、大きな角が生えた。

輝政の目の前で、男は巨大な鬼へと変貌を遂げた。


「お、お前は!?
身動きできない輝政はなす術がなかった。


「輝政よ。我こそが、この城の主じゃ。我を疎かにし、ましてや尊ばぬ愚か者は、引き裂いてくれる雷
鬼は、輝政めがけて鋭く尖った爪を振りおろしたあせる



「うわあああっ!!