福島第1原発で始まった陸上自衛隊のヘリコプターや警視庁の高圧放水車を使った注水作業。

使用済み燃料を冷却し、放射性物質が放出しないようにするのが目的だ。

燃料プールの水位が低下したままの状態が続き、燃料がむき出しになればどうなるのか?

「格納容器が破壊された原子炉と同じぐらいの危険性がある。」と指摘する専門家もいる。

 

原子炉で使い終わったウラン燃料は核分裂反応を終えても熱を出すため、冷やし続ける必要がある。

燃料プールは、この使用済み燃料を水中で保管し冷やすための施設だ。

建屋の最上階にあり、深さ10メートルほど、通常の水温は40度前後に保たれている。

プールの冷却水の蒸発が進めば、燃料棒が空気中に露出する。

燃料棒を覆っているジルコニウム合金製の被覆管と水が化学反応を起こしてもろくなり、燃料棒が破損する恐れもある。

そうすると、高いレベルの放射性物質が大量に放出される恐れがある。

宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)によれば、
「燃料プール内の過熱はいわば残り火の状態。
核分裂の連鎖反応は止まっており、チェルノブイリ原発事故(1986年)のような暴走はありえない。」
と冷静な対応を呼びかける。



17日に始まった、ヘリや地上からの注水作戦の効果はあるのだろうか?

宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)によると、
「燃料が完全に浸るにはプール内の水位を5~6メートルまで上げる必要があり、現在の水位を考慮すると、プール一つにつき1千トン近い水が必要。」だという。


一方、自衛隊ヘリのバケットの容量は、最大約7.5トン。ヘリの放水作業だけで水位を満たすのは難しい。

しかし、「火事現場に雨が降る程度だが、温度上昇を抑える効果はある」との見方は多い。

宮崎名誉教授は「ヘリからの放水でまず燃料を冷やし、地上からの放水作業でプールの水位を上げる手順は妥当。」と評価。

一方で、「3、4号機では、貯蔵燃料の一部が水面に露出し、1300度前後の高温になっているとみられる。
頭から放水すると火鉢の炭に水をぶっかけるようなもので、大量の放射性物質が水蒸気とともに拡散する恐れもある。」とも懸念する。

 
宮健三・東京大名誉教授(原子力工学)も、
「一度プールを冠水させたとしても、使用済み燃料が発熱して水が蒸発するので、失われた分の水を補給し続ける必要がある。」と、作業の難しさを指摘する。

 


使用済み燃料の過熱による火災が相次いでいることや、今後も断続的な余震が予想されることから、核分裂反応が再び始まる「再臨界」に至る可能性を指摘する声も一部にはある。

 
原発に詳しい技術評論家の桜井淳さんは、
「再臨界を防ぐため、核分裂で生じる中性子を吸収する働きのあるホウ酸を散布すべきだ。」と話す。

 
3、4号機では水素爆発などで建屋が大きく損傷している。

圧力容器や格納容器、原子炉建屋など複数の「壁」に守られた原子炉とは違い、燃料プールは外部放出への備えが弱い。

桜井さんは、
「格納容器が破壊された原子炉と同じくらい危険な状態になる。
同じように燃料プールの水温が上昇している5、6号機への対策も早急に実行に移さなければ…。」と訴える。

 
宮崎名誉教授は、
「とにかくプールの水位を上げることが必要。
だが、安定的に水位を確保する根本的な解決には、何とかして電源の復旧を急がなければいけない。」と指摘している。