さいごに見た赤 | 電気羊の夢を見たアンドロイドの憂鬱……

電気羊の夢を見たアンドロイドの憂鬱……

おもにさんだいばなしをのうとれのためにかいている


口内に広がる酸味と、ほのかな甘み。週に一度、日曜の昼にイチゴを食べるのが、私の数少ない楽しみだ。
イチゴは素晴らしい。一般的に可愛らしいものとして認識されているが、よく見てみると赤や緑といった強い色彩に、ブツブツした肌など、どちらかと言えば毒々しいと言っていい見た目をしている。そんな所が、私の特性を表しているようで、個人的に強い親しみを覚える。いかにも善人然とした笑顔で相手を油断させ、その命を奪うという私の特性を。
二つ目のイチゴを口に入れた時、背後の床板が小さな軋みを立てた。しまった、油断した。次の瞬間、私の後頭部に鈍い痛みと衝撃が走る。イチゴの甘みに気を取られ、背後に忍び寄る気配に気付けなかった。油断し切った私の後ろを容易く取ったヒーローが、私のあたまを重く固い棒でカチ割ったのだ。
視界を赤く染めたのは、机に突っ伏した私が潰したイチゴの果汁によるものか、それとも私の血か。どちらが正解にせよ、私の意識はその赤と共に途切れた。
油断につけ込んだ致命的な一撃。ヒーローよ、お前も大したイチゴだよ。


お題:イチゴ、忍び寄る、ヒーロー