早朝、僕が世を忍ぶ仮のバイトをしていると、十代半ば位の少年がレジにやってきました。
客「…フライドチキン」
少々お待ち下さいと言いつつ、注文の品を揚げ物用の袋に入れようとすると、少年が荷物の中からなにやらガサゴソと取り出し始めました。
弁当箱でした。
弁当箱の中には白飯が、白飯のみが三分の二ほど詰まっていました。
少年は箱の中の白飯ゾーンを付属の仕切りで圧縮し、一言、
客「この中に……」
俺「……………」
取り敢えず言われた通りにしてみました。
すると、なんということでしょう。
あんなに殺風景だったお弁当箱が、見違えるように彩り豊かに!
もうクラスのみんなに「妖怪手抜き弁当」などという不名誉なあだ名をつけられ、わいのわいのと囃立てられる事もないでしょう☆
お昼の時間、お弁当の蓋を開けると辺り一面に広がる豊潤な酸化した油の香り。
水蒸気によってふやけた衣が剥がれ落ち、お弁当箱に容赦なく油汚れをすり付けます。
なんて斬新なお弁当……。
うちのフライドチキン、こいつがあればご飯が進む系の味じゃなかったと思うんですが……。
冷食の唐揚げかなんか二、三個放り込んだ方が味的にもコスト的にも良かったんじゃないでしょうか。
余計なお世話ですが。
世の中には色々な人がいるんだなぁ…。
また一つ賢くなれた気がしました。
では。
‐くろ‐