愛知県では、ほんのごく一部の人たちが『大村秀章愛知県知事リコール署名運動』とかいう、とんでもにゃあ事で盛り上がっていたようだ。

愛知100万人リコールの会

 

結論から申しますと、「失敗」がほぼ確実となりましたw

 

11月6日に、愛知県内で集めた署名数が公表されたが、リコールに必要な署名数『866586』の約半数となる「435231」しか集められなかった。一部地域は12月中旬まで署名運動が続くが、もう無理だろう。

・名古屋テレビ(2020.11.06)

大村知事リコール署名、必要数に届かない見通し 高須克弥氏らの団体

 

 

という事で、「地方自治法」のおさらいを兼ねて、今回のリコール運動について記していく。

 

 

●事の発端

 

2019年8月1日に名古屋市中区栄の愛知芸術文化センターで開催された「あいちトリエンナーレ」の例の展示物が引き金になっている。例の展示物の内容は、開催直前に報じられ、たちまち大きな話題となった。

 

私自身もこの目で確かめるべく、開催して最初の土曜日(8月3日)に実際に観に行ってきた。

その時の感想や詳細は、以下のMYブログにまとめてある。かなり荒れて、右パヨ化する寸前だったw

https://ameblo.jp/firebird-1090/entry-12500772523.html

 

 

例の展示物に抗議した河村たかし名古屋市長や高須克弥院長が、愛知県知事のリコール(解職請求)を目指すべく「愛知100万人リコールの会」という団体を立ち上げた。

 

 

 

そのお供には、虎8軍団が加勢し、記者会見も行っている。

・THE PAGE(2020.06.02) ※音声が非常に小さいです

愛知県・大村知事のリコール呼びかけ 高須院長らが会見(2020年6月2日)

 

 

●有効署名の形式

 

有効署名として、「記入日」「住所」「氏名」「生年月日」「捺印(拇印)」が必要。

どれか一つでも欠けていたり、字が汚くて読めなかったりするものは有効と認められない。

特に、住所は住民票と同じ記載内容でなければならないようだ。

 

これだけでもハードルは結構高く感じる。

 

 

●必要な有効署名数

 

都道府県知事のリコールに必要な有効署名数の条件は、「地方自治法」第81条で定められている。

・電子政府の総合窓口e-Gov

地方自治法

地方自治法施行令

 

その内容を数式で分かりやすく表現すると、

 

選挙権を有する者(以下、有権者)の総数を X とした時、

 

(1)X≦40万 の時、

X/3

 

(2)40万<X≦80万 の時、

(X-400000)/6+400000/3

=(X+400000)/6

 

(3)80万<X の時、

(X-800000)/8+400000/6+400000/3

(X+800000)/8

 

愛知県の場合は、上記(3)の式で計算する。

 

2020年9月1日時点で、有権者数は6132684人。

必要な有効署名数は、(6132684+800000)/8=866585.5

ゆえに、866586人以上の有効署名が必要となる。

これは、有権者全体の約14.13%以上に相当する。

・愛知県

選挙人名簿及び在外選挙人名簿

 

 

●必要な有効署名は集められるものなのか?

 

結果として集まらなかったわけだが、そんな事は始めから分かり切っていた。

 

 

2019年2月3日に執行された愛知県知事選挙のデータを見てみると、

 

当日有権者数…6124636人

有効投票数…2130074票

 大村…1774763票 (得票数83.32%)

 榑松…355311票 (得票率16.68%)

無効投票数…28860票

投票総数…2158934票

持帰りその他…15票

投票者数…2158949人 (投票率35.25%)

 

国政選挙でさえ投票率50%程度だというのに、地方選挙の投票率が30~40%程度の愛知県で、86.6万筆以上の有効署名を集めるのは相当ハードルが高いのだ。有権者全体の10%あれば凄い方である。

 

 

●リコール署名運動

 

8月25日に、「地方自治法施行令」第91条2項に基づき、請求代表者証明書交付の告示がなされ、リコール署名運動が始まった。

・愛知県選挙管理委員会

愛知県公報

 

署名収集期間は、同法第92条3項に基づき2箇月間(62日間)となる。但し、首長選挙があって、署名収集できない期間が生じた市町(岡崎市、豊山町、豊橋市、稲沢市、知立市)は、別の期間にも署名収集期間が設けられる。

 

 

●有効署名の審査

 

街頭で集めた署名を区市町村の選挙管理委員会に仮提出する。(地方自治法施行令第93条の2による)

 

(1)仮提出された署名が有効無効に関係なく必要数に達していなければ、審査するまでもなくリコール失敗に終わる。(今回は、このパターン)

 

(2)仮提出された署名が有効無効に関係なく必要数に達していれば、選挙管理委員会が住民票と照らし合わせて本人確認を行い、署名の有効無効を審査する。

 

審査の結果、

(a)有効署名が必要数に達する事ができなければリコール失敗。

(b)有効署名が必要数に達する事ができれば、住民投票が行われる。

 

 

有効署名が必要数集まった実例はいくつもあるが、都道府県知事のリコール署名運動は前例がなく、集める数も多いため、相当ハードルは高いのだ。

 

今回のリコール運動で例えると、90万筆分を集めて提出しても、その中に無効署名が10万筆あると、条件を満たさなくなるのでアウト。だから、彼らは無効署名がある事も考慮して「100万人リコールの会」と謳っていたのだ。

 

 

●住民投票(解職投票)

 

今回は失敗確実だが、もしリコール請求が有効となった場合は、「地方自治法」に基づき、

・請求(署名提出)した日から60日以内に住民投票を行う。

・住民投票の告示は、都道府県知事については少なくとも投票日の30日前までに行う。

 (署名提出から30日以内に署名数が公表される事になる)

・投票前に、対象の首長が辞職したり死亡したりした場合は住民投票は行われない。

 

有効投票総数のうち、賛成多数なら、その首長はリコールされて失職する事になり、後に選挙が行われる。

有効投票総数のうち、反対多数か同数なら、その首長は続投し、残り任期を全うする。また、住民投票日から1年間は再リコールできない。

 

リコール失職が成立した実例はいくつもあるが、都道府県知事のリコール住民投票は前例がなく、規模も大きいため、相当ハードルは高い。

 

署名してくれた人が投票所に行くとは限らないし、行っても「賛成」と書いてくれるかどうかはわからない。

 

 

 

●個人的には反対

 

私は、このリコールには反対の立場であった。

 

リコールそのものを否定しているわけではない。法律の範囲内だし、やりたい人はやればいい。

 

だが、あくまでもトータルで考慮しなければならないとも思っていたのでね。従って、例えあんな展示物であろうと、その1点の理由だけで、地方選挙で信任された知事をリコールするのは、私の中では違うと思っている。

 

但し、勘違いしてほしくないのは、トリエンナーレの例の展示を"公金"で行った事に関しては一切許容していないし、断じて許す事はできない。

 

日本国憲法第21条にある「表現の自由」とは、何でも自由ににやってもいいという事ではない。好き勝手の無法地帯ではないのだ。その事は日本国憲法第12条にも書かれてある。

日本国憲法第12条

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

個人展覧会だったり、クラウドファンディングでお金を募ってやるのであれば自由だが、"公金"を使うとなると話は違ってくるのではないか。

 

 

●大村知事の評価点

 

トリエンナーレの件はともかく、冷静に客観的に見れば、大村知事を評価できる部分もある。

その最たるものが「ジブリパークの誘致」である。2005年に開催された愛知万博の跡地「愛・地球博記念公園」(モリコロパーク)に作られ、2022年秋に開業予定となっている。

・愛知県
・公益財団法人 愛知県都市整備協会
 
そこまでに辿り着くために、スタジオジブリとの交渉を何度も重ね、ジブリの事務所や東京・三鷹市の「三鷹の森ジブリ美術館」などにも何度も足を運んだ。下調べも行い、ようやく万博公園に設置する事で合意して締結した。
 
2005年の万博開催当時は、周辺の道路が渋滞する事も多くあったが、あの頃と比べて今は更に発達してきた。あとは、公共交通機関や直行バスを活用する事で緩和していくものと思っている。
 
ジブリは昔から大人気だし、固定ファンもいるし、開業する頃に新型コロナウイルスがどうなっているかはわからないが、それを差し引いても多くの収益を見込めるのではないか。
 
 
トリエンナーレの件やツイッターブロックの事ばかりがクローズアップされた大村知事だが、評価できる部分はしっかりあるという事。どこかの県知事とは違って、リニアにも積極的だし。
 
 
●維新の会や緑の小池との関係は?
 
かつては、河村市長と中京独立戦略本部を立ち上げ、いわゆる「中京都構想」などという公約を掲げていた。
 
だが、河村市長は名古屋市と近隣市町村が連携する「尾張名古屋共和国」を、大村知事は司令塔を一本化する「中京都ホールディングス」を掲げるなど、中身はかなり違っており、足並みが揃わずに頓挫した。議会でこの議論はあるものの、具現化はしていない。
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更に、維新の会や緑の小池東京都知事に接近して「三都物語」などというものまで掲げたわけだが、ここでも足並みが揃わずに頓挫し、やがて大村知事は距離を置くようになった。
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しかし、今度は河村市長が、小池東京都知事(希望の党)の応援に回ったり、維新とタッグを組んで参議院議員通常選挙の公認候補者を愛知県選挙区に送り込んだりなどして接近した。その時点で、維新的には、大村から河村にシフトしている。
 
 
そして、高須院長も、大阪都構想を支持したり、松井大阪市長や吉村大阪府知事を応援したりするなど、維新との親密ぶりは顕著である。
 
 
事ある毎に、大村知事と河村市長の両者は、仲が悪い……というふうに見せかけたプロレスを仕掛けてきた。
 
しかし、維新の"自称"看板政策「大阪都構想」が否決となった事で、二番煎じの「中京都構想」は完全に芽を詰まれ、もはやプロレスをする意味もなくなった。大村知事は、もう河村市長には遠慮しないだろう。
 
だが、維新の会には警戒し続けなければならない。国政選挙や地方選挙で、河村市長や維新の息の吹きかかった候補者を送り込まれる可能性を否定してはいけないし、人気取りのパフォーマンスなんかに負けるわけにはいかないから。
 
 
年内には、岡崎市なども含めた愛知県内全ての署名数が明らかになるが、45万筆も集まればいいほうだろう。
 
お疲れさまでしたw