一年生の壁 2 | 勝者=敗者 ~越えられない背中を目指して~

勝者=敗者 ~越えられない背中を目指して~

曙五郎の高校生活、柔道に打ち込んだ青春時代を書いています。

気分で更新しますので気長にお付き合いよろしくお願いいたします。

尚、登場人物はすべて架空の人物です。

4月も第二週に入り、今週末はいよいよデビュー戦でもある地方大会の地区予選が迫っていた。

試合に向けて月曜、火曜はみっちり練習して水曜日からは調整と言って各自が対戦相手を想定して技の確認や投げ込みを行い試合に向けて準備をしていった。

といっても五郎達はまだ1年生だったので先輩方の投げ込みを受けたり、対戦相手を想定した組手の相手をする為、ほとんど調整らしきことも行わずに試合に臨むことになった。

 

高体連及び県柔道連盟の試合は毎年4月の第二週から地方大会(近県5県で行う大会)の地区予選、県予選、地方大会、インターハイ(総合体育大会)の地区予選、県予選、インターハイ、全日本ジュニア大会の県予選、全日本ジュニアの地方予選、全日本ジュニア、国民体育大会の地区予選、県予選、ミニ国体(地方予選)国民民体育大会と大きく分けて4大会あり、その県予選までを7月半ばまでに行う、ハードなスケジュールとなっていた。

 

その試合日程の一番最初が地方大会の地区予選となる。

五郎が出場する階級は60㎏級の軽量級となっていた。

試合当日、柏陵高校の伝統で他校の生徒より先に会場についておかなければいけないという決まりがあり、試合会場でもある県立武道館の開館が8時30分なのに一年生は1時間前の7時30分に集合となっていた。

五郎達1年生5人は7時30分に武道館前に着き、誰もいない静かな入り口で、不満を言いながら時間が過ぎるのを待った。

それから8時ごろに2年生が集合し、8時過ぎから3年生や他高校の生徒、保護者が集まりだして8時30分開館となった。

 

基本的に競技人口が男子にくらべて少ない女子は地区予選はなく県大会からなので今回の試合では多くの女子生徒は試合会場の係り員をしており、五郎の姉の恵も双子の妹の紀絵も会場でかかり員をしていた。

 

会場に入り最初にみんなで畳をひき会場を作り、その後は各学校に分かれてアップを行った。

開会式の前に各階級に分かれて計量を行い、柏陵高校の生徒はみんな計量をパスして、再びアップを始めた。

今回はまだ入部して間もない、大国と柳川は登録してなかったので五郎は大国を相手にアップを行った。

 

開会式も終わり、いよいよ試合が開始になり、五郎は高校デビュー戦と言うことでかなり緊張していた。

五郎の1回戦はトーナメントで小さい山だったので2試合目だった。

相手は県立高校の2年生、緊張しながら畳に上がった五郎だったが、結果は開始数秒で大外刈り一本勝ちで2回戦に進んだ。

2回戦は私立長尾高校の3年生で組んだ瞬間に物凄い圧力を感じて、腰が引けて膝をついてしまった。そのまま寝技になったが何とか粘り待てがかかった。

しかしその後組んだ直後に体落で宙を舞い一本負けとなった。

 

この時五郎は中学時代の組手や技が全く通用しないことに気づき、2学年違うだけでこんなに差があるのかと力の差を痛感した。