約10年前。勤務先で夕方頃から、突然上腹部付近の激しい痛みに襲われることがあった。
痛みの度に嘔吐があり、一度落ち着いても30分〜1時間程するとまた激痛が走り嘔吐。
ただ、この痛みには心当たりがあった。前日の暴飲暴食である。前日は、先輩の家にお邪魔し、焼肉パーティー✨ビールやワインを片手に次々と脂たっぷりのレア肉を頬張った。
あまり胃腸が強くないのは知っていたが、肉の旨さには我慢できなかったのだ。
朝になっても症状が改善しなかった為、泣く泣く近くの内科を受診。胃腸炎で間違いないと思っていたため、薬だけでも出してもらい、いち早く症状さえ回復してくれれば…と思っていた。
順番待ち後、先生の往診。念の為、心電図も測定するとのこと。
別室で心電図検査をし、10分程待機していると先生が訪れ一言。
先生『心電図でちょっと異常があって、もしかしたら心筋梗塞かもしれない。救急車呼んだから。』
私は『……はい?』
唐突すぎて言葉も出ないとはこのことである。
私『いや、間違いなく胃の調子が悪いだけなので、薬だけでも出してもらえれば大丈夫です!』
先生『いや、それだけ胸付近の痛みがあって心電図異常あるんだから、危ないよ。大きな病院にもう連絡しといたから。』
本当に話が通じない。
そこから何度も話をして、必ず大きい病院を受診すると約束し、なんとか救急車は断ってもらった。
その後、自身で大病院を受診。診察後に結果を聞く。
先生『このくらいの心電図異常は若い方はよく見られますね。おそらく胃腸炎でしょう。胃腸薬処方するので、飲んで様子見てください。
『ほれ、見たことか!』思った通りの診断であった。
その後、薬を飲むと日に日に改善。
2日後には何も無かったかのように、体調は絶好調。
後々、そこのクリニックの話を聞くと“オーバートリアージ”する、大げさな先生だと聞いた。
時間も費用もかなりかけたのにこの結果。この時点でいわゆる『街のクリニック』は自分の中では全く信用出来ないものであった。
それもあったため、今回も病院受診を決めるまで時間がかかったのである。
6月19日。
ギリギリ駆け込んだ病院では直ぐに名前を呼ばれる。
先生の問診が始まり、事情を説明。
症状と私の内出血を確認した上で、優しそうなおじいちゃん先生はすぐに
『とりあえず、血液検査しますか。』
と別室に移り、採血をする。
10分程、待ち合い室で待機していると、結果が出たのか白い紙を看護士さんが急いで先生のところまで搬送する。
先生と看護士さんがバタバタし始めた。
すると、直ぐに私の名前が呼ばれ、先生の説明が始まる。
先生『血液検査の結果ですが、血小板の数値がとんでもなく低い。正常数値の1/10しかない。白血球の数値も非常に悪い。』
先程まで優しく話していた先生の顔が、険しい表情に変わる。
少し間を明けてからだった。
先生『急で驚くかもしれないけど、急性白血病の可能性がある。』
私『……はい。』
唐突すぎて、流石に驚きを隠せなかった。
先生は続ける。
先生『今、脳出血とか消化管出血とか大きな出血があると、出血が止まらずに亡くなってしまう。連絡はしておくから、今すぐ大きい病院を受診してください。』
そこから先生や看護師さんは大病院との調整を始めだした。
待ち合い室で病気について調べながら、会計と妻の迎えを待つ私。
病名だけに検索したページによっては、あまり良い事が記載されていない。
心をざわつかせながらも、以前の胃腸炎の事を思い出す。
『本当に白血病なのかな?こんなに元気なんだし。そういえばあの時も驚かされたけど、ただの胃腸炎だったもんな。』
妻が到着し、大病院へ向かう。
車内では半信半疑になりながらも、異常なく帰宅した後に、何をしようかと考える、この時点ではまだまだ前向きな私であった。
続く…。