長元九年(1036年)十月かみなづき七日,わたしが二十九の時。
移り住んだ西山の東側は,野原が広々と見えて,東の山一帯の空の部分は,比叡山を初めとして稲荷山などと言う山までそのまま綺麗に見え続いています。
南側は並びの丘の松風が耳元にしみじみと寂しげな風情で聞こえまして,
こちらの近くは目と鼻の先まで,田んぼというものが,獣を追いやる鳴子を打ち鳴らす音なども聞こえてきて,山里の感じがしてたいそう趣が深いのです。
そして明るい月夜などはたいそう綺麗なのを眺め明して過ごしていますけれど,知り合いのお人がたなどは,京の町から遠くなったのでわたしには便りもありませんね。
良いつてに「いかがお過ごしでしょうか。」と伝えてきた友がいましたので,これはと驚きまして,
「思い出しても貴女は尋ねて来てはくれませんね。その代わりに秋風がこの山里の垣根の荻の花に吹いてきますよ。」
と歌に言って,使いの者に渡したのです。
(「西山の有る様」 口語要約文と段付け,「」タイトルはfiorimvsicali。)
菅原孝標女が書いたのは,おそらくこの写真のような景色のことを言ったのでしょうね!
♪川o'-')フフ♪('-'*川フフ
「東は野のはるばるとあるに,東の山ぎはは,比叡の山よりして,稲荷などいふ山まであらはに見え渡り,
南はならびの丘の松風,いと耳近う心細く聞こえて,
内には頂のもとまで,田と言ふものの,ひた引き鳴らす音など,ゐなかの心地して,いとをかしきに,
月の明かき夜などは,いとおもしろきを,ながめ明かし暮らすに,知りたりし人,里遠くなりておともせず。
たよりにつけて,「なにごとかあらむ」と伝ふる人に驚きて,
思ひ出でて人こそとはね山里のまがきの荻に秋風は吹く
と言ひにやる。 」
【更級日記,菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ 原作】