音譜   ラブラブ   ドキドキ   ラブラブ   音譜


わたしは十八になりました。万寿二年(1025年)四月うづき二十八日。


       晴れ   雷   雨   くもり   雪の結晶


お念仏を唱える僧が明け方近くにお勤めする声が尊い様子で耳に入るので,戸を押し開けてみると,ほのぼのと夜が明けていく山ぎわ


-それも木々が生い茂って梢の辺りが暗く見えている辺り一面が霧に包まれて,桜やもみじ葉が見頃な時よりも,何となく,山が茂り続いている御空の様子は,


どんよりと曇った感じがしてとても趣深く思われて,そして不如帰までもが,たいそう近い枝に飛んできて,幾度となくさえずっていますねぇ。


 誰に見せて,そして誰に聞かせようか,山里のこの暁の景色も,不如帰がさえずって枝を行き来するさえずりの音も


寿二年(1025年)四月うづき三十日の日に,谷間いにある木の上に不如帰がやかましいくらいにさえずっています。


(「木こ暗きこずゑども」 口語要約文の編集と「」タイトルはfiorimvsicali。)






「念仏する僧のあかつきに額づく音のたふとく聞ゆれば,戸をおし開けたれば,ほのぼのあけゆく山ぎは,


木暗きこずゑども霧り渡りて,花・紅葉の盛りよりも,なにとなく,茂り渡れる空のけしき,


曇らはしくをかしきに,ほととぎすさへ,いと近きこずゑにあまたたび鳴いたり。


 たれに見せたれに聞かせむ山里のこの暁もをちかへる音も


このつごもりの日,谷の方なる木の上に,ほととぎす,かしがましく鳴いたり。 」


【更級日記,菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ 原作】