音譜   ラブラブ   ドキドキ   ラブラブ   音譜


万寿二年(1025年)四月うづき二十八日。


       星   三日月   半月   満月   お月様   


それで,わたしが詠んだことには,


 京の都ではたくさんの人が待っているのでしょうね,そこから離れたここ東山では,不如帰が今日も一日中鳴き暮らしていることです。


などとばかり,ぼんやりとうち眺めていますと,一緒にいるお方が,


「今の今,京の都でも不如帰の音を聞いたような人がいるのでしょうか。私達二人がこのようにして不如帰の音を眺めていると思いをしてくれる人がいるのでしょうか。」と言って詠んだことには,


 こんな東山の奥深くにまで誰が思いをしてくれるのでしょうか。この今,月の明かりを眺めている人は多いのでしょうけれども…。


と言うので,わたしもこのように詠みましたよ。


 このような所で夜遅く月を眺めるときに,山里のことは初めて来たのでよく分かりませんけれど,まずはこちらの山里のことに思いを馳せることでしょうに。


(「不如帰への思い」 口語要約文の編集と「」タイトルはfiorimvsicali。)






「 都には待つらむものをほととぎすけふひねもすに鳴きくらすかな


などのみ,ながめつつ,もろともにある人,


「ただいま,京にも聞きたらむ人あらむや。かくてながむらむと思ひおこする人あらむや。」など言ひて,

 

 山深く誰か思ひはおこすべき月見る人は多からめども


と言へば,


  深き夜に月見るをりは知らねどもまづ山里ぞ思ひやらるる


【更級日記,菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ 原作】