音譜   ラブラブ   ドキドキ   ラブラブ   音譜


万寿元年(1024年)十二月しわす二十七日。


       星   星空   キラキラ   夜の街   流れ星


雪の日がうち続いて降るこの師走の頃に,吉野山に住む尼君のことを思いやって詠んだ歌は,


 このように雪が降り続いては,珠に訪れる人も途絶えてしまっているでしょうね,そちらの吉野山の険しい道筋の方では。


その翌年,万寿二年(1025年)一月むつき十日。


の一月の国司任命式にわたしの父が心躍らせるはずのことがあったはずなのに,その期待の甲斐もむなしい早朝に,父と気持ちを同じくしていたお気遣いのお方達のところから,


「たとえそのようではあっても今年ばかりはと思ってきましたけれど,夜明けを待ち続けた心許ない気持ちで一杯です。」と寄越してきて,


 夜明けを待ち続けたその夜の鐘の音にも目が覚めてしまって,まるで秋の百夜ももよのような気持ちで一杯でした。

 と言ってきたので,そのお返事として,このように返しました。


 夜明けをどうしてそのように待ち続けたのでしょう,思いを巡らしていても,それが実になって(鳴って)叶うとも限らない夜の鐘の音を耳にするために。


(「なにに待ちけむ暁」口語要約文の編集と「」タイトルはfiorimvsicali。)






雪の日を経て降るころ,吉野山に住む尼君を思ひやる。


  雪降りてまれの人目も絶えぬらむ吉野の山の峯のかけ道


 返る年,睦月の司召に,親のよろこびすべきことありしに,かひなきつとめて,同じ心に思ふべき人のもとより,


「さりともと思ひつつ,あくるを待ちつる心もとなさ。」と言ひて,


  あくる待つ鐘の声にも夢さめて秋の百夜の心地せしかな

と言ひたる返りごとに,


  あかつきをなにに待ちけむ思ふことなるともきかぬ鐘の音ゆゑ


【更級日記,菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ 原作】