音譜   ラブラブ   ドキドキ   ラブラブ   音譜


仁四年(1020年)十二月しわす二十四日。


       チューリップオレンジ   チューリップピンク   チューリップ紫   チューリップ赤   チューリップ黄


わたしの継母(高階成行娘で後拾遺集に歌を残した才女)であったお方は,京で宮仕えしていたのが父に着いて東国の上総まで下ったのですから,


こたび帰ってみると思ってもみなかったことがたくさんあるなどしたので,夫婦めおと仲が面白くないという様子で,


よその場所に移ると言うことで,五歳ほどの子供を使いに遣らせて「親切にして下さったあなた(作者)の御心は如何ばかりでしょうか(お礼申し上げます。),ご厚意は忘れるときはありませんから。」などと言ってきて,


梅の木が家の軒先近くにあるので,そのとても大きな木を指して,「この木が花を付ける頃にはお伺いしましょうね。」と言い残してよそへ移って行ってしまったのですが,


わたしは心の中で継母が恋しく,とても切なく思いながら,声を忍んで泣いていて,その年,治安元年(1021年)も明けて始まったのです。


(「継母の渡り」 口語要約文の編集と「」タイトルはfiorimvsicali。)






「継母なりし人は,宮仕へせしが下りしなれば,思ひしにあらぬことどもなどありて,世の中恨めしげにて,ほかに渡るとて,五つばかりなる乳児どもなどして,「あはれなりつる心のほどなむ,忘れむ世あるまじき」など言ひて,梅の木の,つま近くて,いと大きなるを,「これが花の咲かむ折は来むよ」と言ひ置きて渡りぬるを,心のうちに恋しくあはれなりと思ひつつ,忍び音をのみ泣きて,その年も返りぬ。」


【更級日記,菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ 原作】