彼は微かに微笑んだ気がした。
閉じていたくちびるが軽く開いていて
真剣だった瞳も、これから始まる事が
楽しくて仕方がないようにキラキラしてる。

無邪気すぎる…。
そう思ったら動きが一瞬止まってたみたい。
彼の腕が待てないとでも言うように、彼女を引き寄せ
バスローブが緩んで、顕わになった肩にそっとくちづける
その熱さに肌が泡立ってきて、声が漏れてしまう。
彼のくちびるが肩さきから鎖骨のくぼみを通って
肌を微かに触れながら行き過ぎる。
息がかかるだけでも全身に熱い波紋が広がってくるのに
触れられると他に何も考えられなくなって。
彼の首に手を回して、無意識に動きを止めようとしていた。

「こっち見て」

彼はカオリの手をそっと外して指を絡める
見てと言われてるから、まっすぐに彼を見つめてた。
照れくさそうに視線を伏せて笑っているのも
再び彼女を見つめて、キメ顔風なポーズ取ってるのも
全部…。

瞬きしたら負けな気がして。
視線を逸らさずに彼を見つめてたら。

「あ~~~」
って急に声だして
バフって抱きついて来て
こっちがビックリするって!
なにこの人www面白すぎる。

力の篭る腕が男らしくて
肩に回った手からも暖かさが伝わってくる。
息苦しいほどのHUGだけど
嬉しいから酸欠になっちゃいそうだってことは黙っておこうw

「どうかした?」
って抑揚のない声で尋ねる…。
感情が出ちゃうのが嫌だから控えめにしたのに。
あたしの声が冷たく聞こえたのかな?

腕に余計に力が…。
思わず
「痛いっ」
って声漏れちゃったし。
いきなり力緩めて、おでこにキスされても
そんなんじゃもう足りないんだって、分らないかなぁ~~

多分スネスネな不貞腐れ顔してたよね?
隠せれば良いけど、なんか出ちゃうんだもん。

そんなローテンションのあたしの視界にまで
視線落としてくるけど。
でもあたしの機嫌とるってコトはしないのね?
すっごく不細工な顔してる…と思う。
そんなあたしの顔を両手で包んで

「…好きになった。気がする」

って勝手に言うだけ言って。
すごく優しいキスをくれる。
『気がする』ってそれ、気のせいかもしれないじゃん!
なになになにぃぃぃ~あたしは本当に好きなのに
って反撃したいけど。

甘く絡んでくる彼のくちびるにただ吐息で応えてる
それが精一杯で、言葉を紡ぐことも出来ずに。
何も考えられなくて…。