1.世界で唯一の交通システム「スカイレール」(1998年開業)

 

懸鋼桁のレールにぶら下がったゴンドラ車両をワイヤロープで引っ張る(駅構内ではリニアモーター駆動)という、懸垂式モノレールとロープウェイを組み合わせたようなシステムで、神戸製鋼所と三菱重工業が共同で開発したという世界で唯一の交通システムで「スカイレール」と呼ばれています。

 

JR西日本の瀬野駅と接続しています。

 

 

神戸・横浜・広島・大宮・お台場など大都市や地方中枢都市のフィーダー路線や環状路線に導入されている新交通システムに比べると建設費が3分の1と低価格だということです。輸送力は毎時2200人で新交通システムの3分の1程度となっており、多くの輸送力を必要としないエリアに向いているようです。

 

リニアモーターで駆動する駅構内はスキー場のゴンドラステーションと似ています。

 

 

2.急勾配の住宅地

 

スカイレールは、広島県広島市安芸区瀬野町で開発された住宅団地「スカイレールタウンみどり坂」にあります。JR瀬野駅と直接つながっており、みどり口駅からみどり中央駅までを結んでいます。自動販売機で切符(170円)を買い切符のQRコードを読みとらせて駅構内に入場するシステムとなっており、QRコード=空港という固定観念があったせいか、かなり戸惑いました。ここのQRコード導入は鉄道では初めてのことだったようです。

 

 

このスカイレール、最大22.3%という急勾配に索道が引かれています。

このシステムは、27.0%の急勾配を登り切れる登坂性能と半径30mの急カーブにも対応可能で、省スペースで建設でき、低騒音で住宅地にも導入しやすいというメリットがあります。こうした特性から、導入空間が限られた都市内での輸送手段や、高低差のある場所間の移動手段に適しているとされ、最初に導入されたのが、ここ瀬野のニュータウン「スカイレールタウンみどり坂」(積水ハウスと青木あすなろ建設が開発)でした。

 

 

終点側を見ると確かに急勾配です。

 

 

中間の「みどり中街」を超えると最大勾配区間になります。

視覚的にはスキー場のゴンドラに乗っている感覚ですが、乗り心地はモノレールかな~

なんで、ゴンドラ式のロープウェイにしなかったのでしょうか?

その方が、安くつくと思いますが・・・

 


その答えは、ロープウェイのゴンドラと違い、桁をしっかりつかんでいるため風に強いということのようです。また、駅部ではロープの推進から離れリニア駆動にすることで、減速、停止、発進をスムーズ(システムとしては最短75秒の運転間隔で運行できる)にしており、ラッシュ時と閑散時にあわせて柔軟な運行が可能ということが大きいのではないかと思われます。

運行は6時40分から22時まで便が設定され、日中の10時台から16時台は15分間隔で運行。通勤通学時間帯は最短5分間隔で運行されています。

 

 

車両の見かけはロープウェイ、上部の桁はモノレール、走行の方式はロープウェイとリニア、それぞれの良い所を取ったようなシステムなのです。なんとなくわかりました。

 

 

みどり口駅 ~ みどり中央駅間の所要時間は5分で、あっという間に終着駅です。

 

 

申し訳ございませんが、駅の背後に広がる住宅地を見て思いました、バスで十分・・・
 

 

3. 2024年4月末、運行終了

 

2022年11月、維持費を含めた採算性の面から当路線の運行を2023年12月末で終了する方針が決まり、電気バスへの切り替えを検討していることが報じられました。しかし、11月初旬に運行開始を予定していたEVバスの施設整備や関係機関への許認可に遅れが出ていることから2024年4月末に変更となったということです。

 

 

世界唯一でこれだけの施設、廃止はもったいないですよね・・・

なんとかならないのでしょうか?

 

 

悲しいかなこの「世界唯一の交通システム」、1998年の開業以降でここのスカイレール以外に導入されることがなく、システムとして全国そして世界に普及することはありませんでした。結果として、スカイレールは「世界唯一の交通システム」として希少価値があったものの、設備更新や部品調達にコストがかかる状況に陥りました。年間の軌道旅客収入は5,800万円程度で、9,900万円の営業赤字を計上とのこと、これで設備更新費用をまかなうのは困難だと思います。

 

革新的な技術でも、その市場が広がらなければ生き残ることはできない、悲しい現実です。

 

予定されている代替バスは、住宅団地内に16カ所の停留所を設けるとのことで、住民の利便性が向上しそうです。乗り物マニアには残念ですが・・・