1. 徳島県上勝町

 

徳島市内から車で約1 時間の上勝町。四国の酷道ドライブ(193号・438号・439号・492号)のついでに寄ってみました。今回は酷道の紹介ではありません。四国山地の国道のほとんどが酷道で、整備されているほうが珍しいくらいなので・・・

 

今回紹介する「葉っぱビジネス」で有名になった上勝町(人口約1500人)、四国の山地部にしては道路も整備されているので四国特有の山奥の町という感じではありません。想像していたほど不便でもない普通の田舎町です。

なぜ、この町に興味を持ったかと言えば、2003 年に自治体として日本で初めての「ゼロ・ウェイスト(Zero=0、Waste=廃棄物)宣言」を行い、2020年5月に建設されたゼロ・ウェイストセンターを見てみたいと思ったからです。

 


 

ごみをゼロにする?

言うのは簡単だけど、現実的にはどう考えても困難だとあきらめてしまうでしょう・・・

ごみをどう処理するかではなく、ごみ自体を出さない社会を目指している上勝町。

ここでは、ごみ収集は行われておらず、生ごみなどはコンポストを利用して各家庭で堆肥化しています。地元の人に聞いたのですが100%だそうです。また、瓶や缶などのさまざまな「資源」を住民各自が「ゼロ・ウェイストセンター」(ごみステーション)に持ち寄って45 種類以上に分別しているのです。「ゼロ・ウェイスト宣言」から17 年経過した現在、リサイクル率80%を超えているということです。

 

 

2. ゼロ・ウェイストセンター

 

「2020年までに焼却・埋め立てごみをゼロにするという目標を掲げ」2018年にリサイクル率80%を達成したのですが、残りの20%という数字は、町民だけの力では成し遂げられません。

ごみの種類によってはリサイクルに高い費用がかかるものもあったり、そもそもリサイクルが難しいものがあったりします。そのため、生産者やリサイクル業者などとのパートナーシップが重要で、その問い「残り20%という問題を解決する」に答えるため、2020年5月に建設された施設がこの「ゼロ・ウェイストセンター」であるとと理解させていただきました。

 

通常、一般のごみは清掃工場(ゴミ処理場、ゴミ焼却施設、クリーンセンター、ごみ処理施設、環境美化センターなど自治体によって呼称はまちまち)というところでリサイクル可能な資源の分別・可燃ごみの焼却処理・残渣の無害化処理などを行い、残ったものは最終処分場で埋め立て処分になるのです。

 

町全体のごみを、焼却のないこの施設だけで解決しようとしているのですから、ものすごい取り組みです。

その施設が下の写真(ゴミステーション部)です。
 

 

ホームページ見てみると、下記のような問いかけから始まります。

 

WHY do you buy it? なぜそれを買うのか?
WHY do you throw it away? なぜそれを捨てるのか?

私たち消費者は問いかけられます


WHY do you produce it?なぜそれを作るのか ?
WHY do you sell it?なぜそれを売るのか?
私たち生産者は問いかけられます


上勝町ゼロ・ウェイストセンターでは、WHYという疑問符を持って生産者と消費者が日々のごみから学び合い、ごみのない社会を目指します。(※公式Webサイト 上勝ゼロ・ウェイストセンター(WHY)より)

 

 
この施設ができるまでの歴史を少し紐解いてみましょう。
この町には、1997 年まで公営の野焼き場がありました。
.当時大きな話題となったダイオキシン問題で、行き場を失ったゴミの焼却委託費を減らす必要に迫られました。
そこで上勝町は 2001 年から 35 分別により資源化促進を図りました。
これが活動家の目に留まり、2003 年に日本初の「ゼロ・ ウェイスト宣言」を行うことになりました。
そして2018 年に SDGs 未来都市の一つに選定されることになりました。
 
 

ごみ関連の施設は、一般的にはなるべく存在を消すように設計されます。しかし、ここはわざと見えるような設計となっているのです。

上勝町にはごみ収集車がなく生ごみはコンポストで、それ以外のごみは45分別されているので、町民がクルマに乗ってゼロウェイストセンターのゴミステーションにやってきて少し時間をかけて処理していきます。したがってこの分別回収施設は、町民が常に集う開かれた町のコミュニティになる可能性があるのです。※但し、ごみというプライベートなものを扱う施設であるため、プライバシーにも配慮しているそうです。ゴミステーションには町民以外はいることはできません。

 

 

3. 2021年日本建築学会賞

 
この建物は、2021年日本建築学会賞(作品)を受賞したそうです。
?の半円部分がゴミステーション、続いて直線部分に管理事務所、くるくるショップ、交流ホール、コインランドリー、トイレ、オフィスラボとなっています。特に面白いのがくるくるショップで、簡単に言えば不用品交換所です。自分には不要だけど、まだ使えるものを持ち込んで、誰でも欲しい人が無料で持ちかえることができるリユースショップです。家族連れの人が多くみな楽しそうで、素晴らしいシステムだと思いました。
設計や建設工事には、「域外から物を持ち込まない、廃材を出さない、地域資源を活用する」 ということが徹底されており、建物の主材は町内産杉丸太材を利用、そして町内の製材所を活用するなどゼロ・ウェイストを突き詰めた施設となっています。

 

 

この建物の最大の特徴は、町民から集 めた廃材建具 700 枚によるパッチワークのペアサッシだと思います。

自分の家の廃材が、このようにアート建築として残るのってうれしいですよね!

 

 

4. HOTEL WHY

 

?の・の部分がすごくお洒落なホテルになっています。

ゴミステーションとホテルがなぜ共存できるでしょうか?

最大の理由は、ここには生ごみがないから・・・

全町民がコンポストで100%生ごみを堆肥化させているので生ごみの匂いがないのです。そのような理由で衛生面も担保されているので、ホテルとゴミステーションが共存できるのだと思います。素敵ですね~、ぜんぜん臭くなくて、まるでリゾートホテルのようです。

 

※1994年、上勝町で出るごみの3割を占めるのが生ごみだということがわかり、1995年、町は自宅で堆肥化できるように、全国に先駆けて電動生ゴミ処理機へ補助金を拠出し始めたそうです。その結果、普及率はほぼ100%になり、WHYのごみ分別所でも生ごみが回収されていません。