1.ウォーキングで行く?ランニングで行く?サイクリングで行く?新潟島を楽しむ!
新潟島が新潟島になったのは、1972年の関屋分水の完成の時です。
周囲を水に囲まれ橋を渡らないとそこに行けないことから、「新潟島」と呼ばれるようになったということです。
周囲約15kmはサイクリングコースになっており、海と川沿いの走りやすいフラットな道でランナーの聖地としても親しまれています。ウォーキング、ランニング、サイクリングそれぞれのスタイルの方々を魅了する新潟島を観察することにしました。
2.萬代橋と柳都大橋
スタートは萬代橋です。
頑丈な石づくりの萬代橋は美しい連続アーチが特徴的で、橋の長さは306.9m、幅は22.0mと規模としては中規模の橋ですが存在感はバツグンです。
1929年に架け替えられた現在の三代目萬代橋は、2004年7月に国の重要文化財に指定されました。国道にかかる橋梁で重要文化財に指定されたのは、東京の日本橋に次いで2番目ということだそうです。1964年に起きた新潟地震に持ちこたえたこともあり、耐久性の面でも評価の高い橋となっています。
萬代橋のお隣は新潟島で最も新しい橋、柳都大橋(2002年開通)です。
橋の形式は上部アーチの要素を持たした3径間連続PC箱桁橋となっています。
この橋の特徴として、塩害に強いファインセラミックスによる化粧張りが、全国の道路橋梁としては初めて施されることになったということです。そして萬代橋との調和を考えてつくられたということもあり、派手さはないものの美しい橋だなぁ~と思っています。
3.新潟西港周辺
新潟には西港と東港があるのですが、元々新潟港として栄えたのがこの西港であり、信濃川の河口両岸に開かれた河口港で佐渡航路や北海道航路のターミナルがあります。河口港という立地条件上、定期的に港内の浚渫を行って水深を維持しなければならないため、年間の浚渫量は約85万㎥にも及ぶということです。西港一帯はみなとオアシスとして登録されていて、左岸にみなとぴあ新潟市歴史博物館、右岸にトキメッセやピアBandaiを代表施設とするみなとオアシス新潟として整備されていますが、観光施設としては中途半端な立ち位置であることは否めません。
トキメッセの隣には佐渡航路のターミナルがあります。北海道航路はもう少し東側の離れたところにターミナルがあります。
佐渡汽船の財務状況は危機的なものとなっており、今後が心配です。
みなとぴあは、2004年信濃川のほとりに誕生した新潟市の歴史博物館です。
「郷土の水と人々のあゆみ」をテーマとした展示や体験、旧新潟税関庁舎・旧第四銀行住吉町支店をはじめとした明治・昭和初期の歴史的建造物など、情緒豊かな古くからの港町・水の都にいがたの歴史と文化が紹介されています。
新潟交通の入船営業所には昭和の雰囲気が残っています。
4.みなとトンネル付近
新潟島一周自転車道と離れ新潟島の先端を目指します。
新潟島の先端には信濃川の川底を横断する新潟みなとトンネル(2002年暫定開業2005年全線開通)があります。
延長1,423mの沈埋トンネルで新潟市東区平和町と中央区西船見町とを結んでいます。車道は往復分離4車線で、車道の両側には自転車歩行者道が設けられています。先端側からもトンネル内に入る通路が設置されています。
誰の目にも見えない部分、信濃川を横断する水底部の区間は川底に埋設された8函の沈埋函によって構成されており、1函あたりの寸法は全幅28.6 m、全高8.9 m、全長105 m及び108 mで、総重量は約26,000 tというとんでもない土木構造物なのです。
先端から関屋分水に向かう方向には歩行者専用のアンダーパスも設置されています。
5.新潟島一周自転車道と海岸浸食対策工事
新潟島を一周するサイクリングロード「新潟島一周自転車道」と合流します。愛称は「ぐるりん新潟島」といいいます。ここから始まる西海岸の本格的な自転車専用道路は本当に素晴らしい!これは新潟の誇りに値すると思っています。
新潟には「1日たった2000円でスポーツ自転車に乗れます!」というスマートクルーズというシステムがあります。
街の活性化やスタイリッシュな都市生活を目的としたレンタル自転車サービスで誰でも気軽に利用できます。通常のレンタサイクルとは違い、世界のトップメーカーのスポーツバイクに乗ることが可能です。「なんちゃってスポーツ自転車を試してみたい」「いつもと違う自転車で街を走りたい」という人は、ぜひ利用してみてください。但し、本当の自転車乗りには???です。
海岸沿いの砂丘の上部を走る気持ちのいいコースです。下部の車道を見下ろしながら走る気分は上々です。
信濃川から関屋分水路までを「西海岸」と呼びますが、港湾の海岸として位置づけられているのは入船タワーから寄居町までの区間です。新潟海岸・新潟港西海岸は明治以降、大河津分水や関屋分水その他河川改修工事やその他支流の砂防工事による流送土砂の減少、海岸部に築造された 構造物による供給土砂の遮断、更には昭和30年代頃の急激な地盤沈下などにより、堆積性の海岸から著しい侵食性の海岸に変化してしまいました。河口部に位置する新潟港西海岸では、海岸汀線の後退が始まり、大正年間には平均5m、昭和初期には年平均2.5mと侵食は進行し、明治の後半から現在に至るまでに、最大約350mもの後退を余儀なくされということです。
昭和初期から始まった侵食対策工事は、当時の工事が局所的かつ簡易なものであったため、侵食対策を実施しても容易に破壊され、その都度復旧するといった状況だったそうです。
本格的な工事は、昭和21年に設立された「新潟港技術委員会」により昭和26年11月に新潟港西海岸侵食対策工事の全体計画が決定されたことに始まります。この計画の基本的な内容は以下の通りです。
①海岸から100m~150m沖合の水深3.0mの位置に潜堤を設ける
②横の流れを防ぐために突堤を設ける
また、新たな海岸侵食対策として、昭和61年度から海岸地形をより安定的、持続的に防護、維持し、且つ、より快適で潤いある海岸環境の創出が可能となる「面的防護工法」を導入しているということです。この「面的防護工法」とは、約500m沖合の潜堤及び海岸から直角に伸びる突堤等の構造物を複合的に配置し、さらに潜堤背後に砂浜を造成する工法です。従来の工法が海岸侵食の主要因である波浪を浅海域の離岸堤で一気に遮断するのに対し、面的防護工法は、沖合の幅広天端の潜堤及び砂浜等により波のエネルギーを漸次減衰させる方式であり、潜堤前面の海底面を含め海岸地形を安定的に維持することが可能となっています。このような対策を実施することにより、親水空間として市民が楽しめる海岸になることを目指しています。
日和山展望台に上ってみます。
新潟島は海岸沿いの砂丘が高台になっており、信濃川側の市街地は低地になっており、信濃川が氾濫すれば市街地は完全に水没します。
日和山展望台から見る新潟島一周自転車道です。全国屈指の自転車道であることが理解できます。
「新潟島一周自転車道」といいながらも自転車よりランナーの方が多いのが特徴です。
「新潟島一周ランニングロード」と言った方がいいかも?
日和山より西側に行くと、自転車道とは別にウォーキング用のトレイルがあります。
所々にベンチや休憩所が設置されており本当に快適です。
車道との交差はほとんど立体交差になっています。
少し歩くと「ドン山」があります。
大砲により正午を知らせる大砲が置かれていたところです。
時を告げる「何か」が最近なくなったような気がします。大砲はマズイとは思いますが、何かあると心が和みますね・・・
途中には、戊辰戦争から第二次世界大戦までの新潟県出身の戦死者を祀る立派な護国神社があります。
トレイルの途中には水道があります。夏にはありがたい!
ここまで親切なトレイル見たことない!
西海岸公園には木道も整備されています。
展望台から新潟島の砂丘と市街地が望めます。
6.新潟島をつくった関屋分水
国の直轄事業として1972年に通水した関屋分水。
洪水から新潟市を守ることが役割で、1978年の信濃川下流域の洪水の際には新潟市内での氾濫を防ぎ、また2004年に起きた新潟・福島豪雨の際にも治水対策機能を実証しました。上流からの土砂を分水路が引き受けることによって、本流下流の新潟西港への土砂堆積の防止に役立ち、分水路河口付近の海岸侵食対策にも貢献しているということです。
2022年(令和4年)、関屋分水路は通水から50周年を迎えます。来年は「関屋分水路50周年記念事業」が実施されるということだそうです。
関屋分水、ここにも専用の歩道があります。
JR越後線をくぐって信濃川を目指します。
信濃川に合流します。
信濃川水門から信濃川左岸を歩きます。
この付近には新潟競馬場があったのですが、関屋分水の工事により移転したということです。
道路上には距離標があるので、ペース配分を考えることができるなど便利です。
信濃川の堤防沿いもしっかりと整備されています。
途中に水道と休憩所があるのがGood!
12km歩いて疲れてきた私には、このベンチがありがたい!
7.親水型堤防「やすらぎ堤」
当時全国初となる「5割勾配」(底辺と対辺の比率が5対1、角度にして約11度の傾斜)が採用された堤防です。
堤防の高さは平均で約2m、幅は広い箇所で約15mを有し、市民の憩いの場として機能しており、この「やすらぎ堤」は世界に誇れる土木工事ではないかと思っています。
1987年に工事が開始、1988年7月に市民が緑や水に親しむ緑地として完成し翌年に一般開放されました。川底を浚渫して掘り下げることによって断面積を広げて流量を確保し、川底から掘削した土砂を利用して堤防を嵩上げするという工法が採用されました。
新潟島一周、市街地にこれほど充実した専用の自歩道が他にあるでしょうか?