1.妙高大橋の架け替え

 

平成21年12月、PCケーブルの異常が発見されました。

コンクリート表面の異常が発見されて、そこをはつってみたらPCケーブル9本が破断していたということです。その後、補強ケーブルで応急対応し現在(架け替え工事中)に至っています。

 

 

笹子トンネル天井版落下事故が平成24年ですから、妙高大橋のPCケーブル破断発見はその3年前ということになります。

笹子トンネルの事故は業界を根本的に変えたと言ってもいいでしょう。補修補強は大規模な交通規制が伴い積算も複雑で、発注者である道路管理者も建設業者も本当に危ないところは対応していましたが、建設不況も影響して全体的に「見たくないところは見ない」感(業界全体で優先順位の考え方が甘かった)がありました。

 

 

平成25年、日本政府は同年を「インフラメンテナンス元年」と位置づけて、インフラ長寿命化基本計画を策定し、平成26年には道交法を改正してトンネルや橋を5年に一度、定期的に点検するよう義務づけ、インフラ長寿命化に舵を切りました。

 

Ⅰ.

 

平成26年4月14日に社会資本整備審議会 道路分科会が発表した「最後の警告」(一部削除)です。

 

【最後の警告-今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ】
 
静かに危機は進行している
 
高度成長期に一斉に建設された道路ストックが高齢化し、一斉に修繕や 作り直しが発生する問題について、平成 14 年以降、当審議会は「今後適切 な投資を行い修繕を行わなければ、近い将来大きな負担が生じる」と繰り 返し警告してきた。
   ~デフレで予算・人員削減等   ~省略~
 今や、危機のレベルは高進し、危険水域に達している。ある日突然、橋が落ち、犠牲者が発生し、経済社会が大きな打撃を受ける…、そのような 事態はいつ起こっても不思議ではないのである。我々は再度、より厳しい 言い方で申し上げたい。「今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切らなければ、 近い将来、橋梁の崩落など人命や社会システムに関わる致命的な事態を招 くであろう」と。
 
すでに警鐘は鳴らされている
 
笹子トンネル天井板落下事故。この事故が発した 警鐘に耳を傾けなければならない。また昨今、道路以外の分野において、 予算だけでなく、メンテナンスの組織・体制・技術力・企業風土など根源 的な部分の変革が求められる事象が出現している。これらのことを明日の 自らの地域に起こりうる危機として捉える英知が必要である。
 2005 年 巨大ハリケーン「カトリーナ」による危険性は、何年 も前から専門家によって政府に警告され、その危険性は明確に指摘されていたのに もかかわらず投資は実行されず、巨大な被害(死者 1330 人)を出している。「来るかもしれないし、すぐには来ないかもしれない」 という不確実な状況の中で、現在の資源を将来の安全に投資する決断がで きなかったこの例を反面教師としなければならない。千年に一度だろうが、可能性のあるこ とは必ず起こると。笹子トンネル事故で、すでに警鐘は鳴らされているのだ。
  
行動を起こす最後の機会は今
 

道路先進国の米国にはもう一つ学ぶべき教訓がある。1920 年代から幹線 道路網を整備した米国は、1980 年代に入ると各地で橋や道路が壊れ使用不能になる「荒廃するアメリカ」といわれる事態に直面した。インフラ予算 を削減し続けた結果である。連邦政府はその後急ピッチで予算を増やし改 善に努めている。それらの改善された社会インフラは、その後の米国の発 展を支え続けている。
笹子トンネル事故は、今が国土を維持し、国民の生活基盤を守るために 行動を起こす後の機会であると警鐘を鳴らしている。削減が続く予算と 技術者の減少が限界点を超えたのちに、一斉に危機が表面化すればもはや 対応は不可能となる。日本社会が置かれている状況は、1980 年代の米国同 様、危機が危険に、危険が崩壊に発展しかねないレベルまで達している。「笹 子の警鐘」を確かな教訓とし、「荒廃するニッポン」が始まる前に、一刻も 早く本格的なメンテナンス体制を構築しなければならない。
そのために国は、「道路管理者に対して厳しく点検を義務化」し、「産学 官の予算・人材・技術のリソースをすべて投入する総力戦の体制を構築」 し、「政治、報道機関、世論の理解と支持を得る努力」を実行するよう提言 する。
いつの時代も軌道修正は簡単ではない。しかし、科学的知見に基づくこ の提言の真意が、この国をリードする政治、マスコミ、経済界に届かず「危 機感を共有」できなければ、国民の利益は確実に失われる。その責はすべ ての関係者が負わなければならない。

 

 

 

2. 北陸地整初、連続鉄筋コンクリート舗装

 

妙高大橋架け替え工事の一部である土工部の舗装工事に、北陸地整初の連続鉄筋コンクリート舗装が採用されました。これも長寿命化対応のひとつになっています。

 

 

アスファルト舗装とコンクリート舗装、どちらの寿命が長いか?

適切な設計と施工が行われれば、コンクリート舗装の寿命が長いのは当然です。しかし、日本のほとんどの道路がアスファルト舗装なのです。どうしてアスファルト舗装ばかりなんでしょうか?

それは単純に補修が容易だからなのです。

コンクリートの耐久性は誰もが認めるところですが、コンクリート舗装の最大の弱点はコンクリートの膨張伸縮に対応しなければならないことなのです。その膨張収縮によるひび割れを防止するために、コンクリート版の設計に合わせて5~10mの目地を設置する必要があります。また目地を設置しても、その目地から劣化が進み破壊が始まることから、それを維持していかなければならないのです。

その悩みを解決するのが連続鉄筋コンクリート舗装なのです。

 

 

連続鉄筋コンクリート舗装は,コンクリート版の横断面積に対して約0.6~0.7%の縦方向鉄筋を設置して、横目地を省いたコンクリート舗装なのです。コンクリート版に生じる横ひびわれを縦方向鉄筋で分散させ,個々のひび割れ幅を交通車両の害にならない程度に抑え,狭く分布させようとする舗装です。つまり耐久性に影響することがない小さなひび割れを容認するという考え方なのです。

ひび割れを容認?そんなことが許されるのか?それが許されるのです。基本的にコンクリートはひびわれするものなのですよ・・・我々土木技術者はこのひび割れと戦ってきたのです。つまり許されるひび割れと許されないひび割れがあると考えていただければいいと思います。

この鉄筋ですが、床版の配筋とはまったく別物です。目地がないので、通常のコンクリート舗装に比べ、振動や騒音が軽減され、 走行性が向上します。高速道路ではアスファルト舗装を組み合わせたコンポジット舗装(長寿命化プラス維持管理の容易さ)が標準になりつつあります。

 

 

機械はマシンコントロール技術で施工しています。

トータルステーション3台を使い、事前に入力した座標に基づき自動で高さ管理を行っています。

トータルステーションの設置作業は大変ですが、平坦性はバツグンです。

無人で施工できるようになればいいのですが、5G時代になってもまだまだ先が見えません。

 

 

この工事が終了したら、いよいよ橋の架設が始まります。