1. 吉村昭の高熱隧道
高専時代に読んだノンフィクション小説「高熱隧道」(吉村昭)。
現場への行きかえりで転落死する人が続出するだけでなく、トンネル掘削時の岩盤の温度が最高166℃の環境でダイナマイトが自然発火して爆発死する人も多く、挙句の果ては「ほう雪崩」で作業員宿舎が吹っ飛ばされるなど、死者が300人となった黒部川第三発電所建設のためのトンネル工事を描いた作品です。
吉村昭のノンフィクション小説は「史実にこだわる」ことで、なんとも言えないリアルな現場を描いています。
そんな吉村昭の「高熱隧道」に触れてみたくて、その近くまで行ってみることにしました。
関西電力のホームページから申し込めば、抽選で「高熱隧道」を含む関西電力黒部専用鉄道を通って黒四ダムまで行けるのですが、倍率が高く平日開催なので、竪坑エレベータを使って「高熱隧道」の手前まで行ける専用ツアーに参加しました。
下の写真は黒部峡谷鉄道の宇奈月駅の車両基地です。左側は富山地方鉄道の宇奈月温泉駅です。
2.黒部峡谷鉄道
まずは宇奈月駅から黒部峡谷鉄道に乗って欅平を目指します。黒部峡谷鉄道は関西電力の子会社ということをここで初めて知りましたが、よくよく考えてみると当たりまえですよね。ダムを造るための鉄道ですから・・・
しかし、ダムを造るための鉄道にしては車窓が良すぎる!!
これほど素晴らしいとは・・・まるでスイスの山岳鉄道のようです。
砂防景観もなかなかです。
後曳橋も渋い。
引き込み線用のトンネルもたくさんあり、工事の凄さが実感できます。
左下のまあるい構造物は冬期歩道。
冬期は鉄道が止まるため、明かり部(トンネルの無いところ)は冬期歩道と呼ばれるシェルターを歩くことになるそうです。
単線なので駅毎に列車交換があります。
お洒落な橋が見えてきました。昭和9年に架けられたフィーレンデール形式の目黒橋です。フィーレンデール形式の橋梁、トラスっぽい感じですがラーメン橋に分類されるようです。日本では東京の豊海橋が有名です。
途中では工事用の大型重機や各種プラントをみることができます。
橋を渡ると鐘釣です。
そして欅平に到着しました。
3.関電専用エリア
ここから、ヘルメットをかぶって関電専用エリアに入ります。
ED凸型機関車、なんだかカッコいい!
昭和10年頃から使われているそうです。
少し進んだ後、スイッチバックして、今度は高さ200mの竪坑エレベータ(昭和14年完成)に乗ります。
関門人道トンネルの感じににています。
この辺りは勾配がきつすぎて鉄道を造ることができなかったため、大型のエレベータを設置することになったということです。このエレベータ線路がついていて貨車を乗せることができるようになっています。建設当時は世界一だったとか・・・
竪坑エレベータを降りると、いよいよ高熱隧道です。が、しかし、今回はここまでです。
あとは、高熱隧道とは反対側のトンネルを歩き地上に出て北アルプスの絶景を見に行きます。
作業用のトンネル歩き、普通ではなかなか経験できません。
高熱隧道用の機関車はバッテリーカーになっているので、架線はありません。これがまた工事用らしくてなかなか渋いのです。
関電の職員から高熱隧道の説明があり、帰路に向かいます。
高熱隧道の先にはインクラインがあり、そのまた先に黒部の太陽や中島みゆきのロケ場所があり、黒4ダムまで行くことが可能になっています。3~4年後には一般開放されるそうです。すごい観光地になる予感が・・・
再び、竪坑エレベータに乗って戻ります。
ED凸型機関車にひかれて欅平駅に向かいます。
これは欅平駅の作業道です。
欅平付近をぶらぶらして名剣温泉の露天風呂に入って宇奈月に向かいます。
すべてを見ることはできませんでしたが、施設を体験するだけで、戦前の工事がどれほのものだったか簡単に想像できます。戦争という恐ろしいもののために作られた施設が、現在の生活を支え、さらに観光施設として人々に癒しを与えているという現実、不思議ですね・・・
4. ホタルイカミュージアム
この黒部峡谷の水が注ぎこむ富山湾、ホタルイカで有名です。
なぜホタルイカが身投げをするのか?そんな謎を知るために寄ってみました。