1.はじめに

 

道路・鉄道・港湾・空港 それらを支えているのはすべて「ドボク」です。

しかし、その分野の博物館を訪れる人の多くは、動くもの(車両・航空機・船)しか興味がありません・・・それが現実です・・・

また、「交通」という文字がついたミュージアムが絶滅の危機に立たされています。

 

10/18(木)、Society5.0(超スマート社会)の実現を目指すための展示会「CEATEC JAPAN」に行ってきました。

 

 

明治維新以降、急速な発展を遂げた日本の「交通」。

平成後の新しい時代には「道路交通」にも大きな変化、つまりCASE時代(C:デジタルでつながる・A:自動運転・S:シェア・E:電動化)が訪れます。5G(第5世代移動通信システム)でコネクテッドカー(インターネットへ常時接続機能を具備した自動車)が急増し、自動車がスマホのようになり、自動運転が実現してカーシェアが広がる。そしてMaaS(キャッシュレスですべての交通とつながり、すべての移動がシームレス化[

途切れのない、継ぎ目のない、複数のソフトやサービスを違和感なく同じ操作で利用できる}する!そう、交通システムそのものが変わるのです・・・・・な~んちゃって、カッコイイことを言ってしまいましたが、各企業の動きなどを見ていると現実化しそうな気がします。

 

 

CEATEC JAPANのトータルソリューションのフロアは、未来の交通科学館のようでした。

 

 

こういう時代だからこそ、未来の交通としての実験場を兼ねた、交通の進化の歴史と教訓を盛り込んだ大規模な「交通」ミュージアムが必要なのではないでしょうか?そのような未来を夢みながら、これまでの「交通」ミュージアムを振り返ってみたいと思います。

 

 

2. 巨大鉄道博物館オープンラッシュ

 

21世紀になって、「交通」博物館がなくなり、巨大「鉄道」博物館がつくられています。

 

①鉄道博物館(大宮)

2007年10月14日に開業した鉄道博物館、2018年7月5日に新館(南館)がオープン、巨大ミュージアムへと進化し続けています。

 

 

②リニア鉄道館(名古屋)

2011年3月14日、3.11東日本大震災の3日後にオープンしたのが、近未来型の鉄道博物館 リニア鉄道館です。

大津波によって巨大なインフラがめちゃめちゃに破壊されるのを見せつけられた「あの日」の3日後でした。

2011年5月、当時10歳の息子と訪れました。

 

 

③京都鉄道博物館(京都)

2005年4月25日のJR福知山線脱線事故から11年,2016年4月29日にオープンしたのが京都鉄道博物館です。梅小路蒸気機関車館と合体したことで鉄道博物館・リニア鉄道館とはまた違った魅力を醸し出しています。

 

 

 

④今はなき、東京の「交通博物館」と大阪の「交通科学博物館」

 

交通科学博物館(大阪・弁天町)は、子どもの頃から祖父に何回か連れていってもらい、その影響か?自分の子供たちも何回か連れて行きました。交通博物館(東京・万世橋)は、2004年9月に東京博物館巡りのひとつとして、子ども達を連れて行きました。子供が小さい頃、休日は必ずといっていいほど子ども達を外に連れ出し、全国の博物館・動物園・水族館・遊び場を巡るという今で言うイクメン?っぽい事をしていましたが、妻には「自分の趣味に子供をつき合わせているだけやんか」と鋭い指摘・・・

 

交通博物館の写真は残っていたのですが、交通科学博物館の写真はみつかりませんでした、残念。

 

 

【交通博物館】

交通博物館の前身は、1921年10月14日に「鉄道開通50周年」を記念して東京駅の神田駅寄り高架下に開設された「鉄道博物館」だったそうです。しかし、関東大震災で壊滅的な被害を受け、再建されたものの敷地が狭かったため本格的な博物館施設の建設が計画され、1936年4月25日に旧万世橋駅に移転されたということです。当初は鉄道省の直営だったそうですが、1946年から日本交通公社に委託されて「日本交通文化博物館」となり、、1948年に「交通博物館」とコロコロと名前を変えて2006年まで営業を続けました。1971年からは「財団法人交通文化振興財団」に運営が移管され、1987年の国鉄分割民営化後はJR東日本に継承(運営は交通文化振興財団)されたということです。

 

 

この博物館、鉄道がメインでしたが、鉄道・船舶・自動車・航空機がフロア別に展示されていて、国鉄バス第1号車やスバル360などの展示がありました。但し、日本を代表する交通博物館の規模としては中途半端なものでした。

 

【交通科学博物館】

JR西日本が所有し、交通文化振興財団が運営していたのが交通科学博物館でした。大阪環状線弁天町駅の高架下にあり、狭い敷地にゴチャゴチャした展示が印象的な昭和のミュージアムでした。

当初は交通博物館の分館として設置することを検討していたようですが、交通博物館とは異なる現代・未来の交通に関する展示を中心とした「科学館」として準備が進められ、1962年にオープンしました。「交通科学」という名前とは裏腹に「鉄道」博物館の色が濃かったような・・・

私も、私の子ども達もお世話になったこの交通科学博物館、京都鉄道博物館がオープンする2年前の2014年に閉館しました。D51・DD13・DF50の各機関車は、京都鉄道博物館ではなく、津山まなびの鉄道館(津山)に移設されたということです。

 

下の写真は交通博物館です

 

どうしてミュージアムから「交通」という名前が消えて言ったのでしょうか?

 

各分野の交通系ミュージアムに足を運びましたが、その代表格を取り上げると以下の名前が浮かんできます。

 

自動車ではトヨタ博物館(長久手)、日本自動車博物館(小松)など。

航空機では各務原航空宇宙博物館、三沢航空科学館、所沢航空発祥記念館、航空科学博物館(成田空港)、航空プラザ(小松空港)など。

船舶では船の科学館(お台場)、神戸海洋博物館、横浜みなと博物館など。

自転車では自転車博物館(堺)

バイクではヤマハコミュニケーションプラザ(磐田)

バイク・自動車複合型ではホンダコレクションホール(ツインリンクもてぎ)、スズキ歴史館(浜松)など

バイク・船・新幹線・航空機の重工型ではカワサキワールード(神戸)

どのミュージアムも見ごたえ充分です。

 

下の写真はトヨタ博物館

 

下の写真は自動車博物館(小松)です。TOYOTAには申し訳ありませんが、テーマ型のこの博物館のほうがおもしろいです。

 

下の写真はカワサキワールド

             

 

下の写真は航空プラザ(小松)

 

各ミュージアムの内容を取り上げるときりがないので省略しますが、各分野で立派なミュージアムが存在しているので、「交通」といった大きなくくりでミュージアムを展開するには規模的に無理があるように思いました。

それに、交通博物館も交通科学博物館も最終的にJRという鉄道会社が所有していたこともあり、新たなミュージアムが鉄道に特化するのは自然な流れだと思います。

 

 

3. 現存する最後の?「交通」ミュージアム

 

私の知るかぎり、日本に残る最後の「交通ミュージアム」は、広島市交通科学館(ヌマジ交通ミュージアム)です。

その他、富山に交通安全博物館なるものが存在しています。ここには行ってないのでわかりませんが「交通」ミュージアムとは別物のイメージです。

 

 

広島県で計5回(滞在実年数5~6年)仕事をしてきたこともあり、子ども達を多くの博物館・科学館に連れて行きました。そのひとつが1995年(平成7年)3月18日に開館した広島市交通科学館です。

 

 

科学館のテーマは乗り物と交通で、2000点を超える乗り物の模型及びその情報と体験型展示を中心とした常設展示などが中心で、どちらかと言えば小さな子ども向けのミュージアムとなっています。模型が多いので、模型好きの大人にはいいかもしれません。また、近未来の様々な交通体系を表現した模型など「交通」を意識した展示内容になっています。

しかし、「交通」の発達と未来をビジュアル的に魅せるには物足らない内容かな?子ども達の反応は、実物大の車両が多数展示された巨大な鉄道ミュージアムとはまったく別物です。模型と実物の差は歴然で、特に最近のミュージアムのデザインは洗練されており、一昔前(20世紀)のミュージアムと比較して展示グラフィックや照明など劇的な格差が生まれています。

 

 

できることなら、旧街道→港湾→鉄道→道路→空港→リニア→自動運転といった交通の歴史から未来への流れと日本の発展を関連付けた、大規模で洗練された展示を魅せるミュージアムが見たい!ですね・・・

そのようなミュージアムは民間企業では無理だから、国立博物館にするしかないのです。そんな【国立交通博物館】をつくれないないでしょうか?場所は大阪湾の埋立地で、関空・神戸空港からは船、その他は鉄道で拠点まで来て、そこから博物館までは自動運転車によるライドシェアリングOnly。自動運転車は徐々に自動運転の自動レベルをレベル2(運転支援)からレベル5(完全自動運転)まで高めていく・・・そして博物館の中では交通の歴史と未来への科学技術を学ぶ。

そろそろ、研究所という閉ざされた空間を飛び出して、たくさんの人とお金を集め、技術を高めていく・・・そんな実験場が必要な時期にきているかもしれませんね。

 

4. おまけ   日本全国 鉄道ミュージアム巡り

 

①三笠鉄道記念館

 

北海道で最初の鉄道として明治15年に開業した幌内線の終着駅、幌内駅跡地にあるのが三笠鉄道記念館です。

昭和62年9月6日に開館したということです。

 

DD14という、ごっついディーゼル機関車にひとめぼれ・・・

1960年から1979年にかけて汽車製造・川崎重工業で43両が製造されたの除雪用ディーゼル機関車(ロータリー式)です。

 

 

ディーゼル車王国北海道、やっぱ鉄道はディーゼル車がええな~

 

 

幌内鉄道の客車が「鉄道博物館」に展示されていました。(下の写真は大宮の鉄道博物館)

「ほろない」ではなく「ぽろない」だった?

 

 

ほとんどの車両が場外展示、管理が大変そうです。

 

 

道外禁止! なぜ?

 

 

屋内展示もあります。

 

 

②小樽交通記念館(現在は小樽市総合博物館)

 

最初は北海道鉄道記念館として昭和37年オープン、平成8年に展示範囲を海運や陸運にまで拡大して総合的な交通博物館として再オープンしましたが、小樽交通記念館に改称されました。子ども達を連れてきたのは、平成16年でした。

 

 

しかし、その小樽交通記念館、利用者の減少などのため2年後の平成18年3月に閉館しました。

ここでも「交通」の名前がついたミュージアムが消滅していたのです。

平成19年に、小樽市青総合博物館となり再オープンしたということです。この車両の展示は残っているのでしょうか?

 

 

③小坂鉄道レールパーク

 

平成6年に旅客営業が廃止された小坂鉄道、車両や駅舎などの施設を無償譲渡する形で、平成26年に「小坂鉄道レールパーク」としてオープンしました。

 

特急「あけぼの」は宿泊施設になっています。また、ディーゼル機関車は、構内で体験運転が可能となっているようです。

 

 

小坂鉄道、東京駅より5年も前に開設されたそうです。

 

 

④鉄道博物館(大宮)

 

日本の鉄道博物館の中では、最も大きくビジュアル的にもNo.1だと思います。

 

 

コンセプトは以下のとおり

1.日本と世界の鉄道に関する遺産と資料を広く人々に公開し、かつ旧日本国有鉄道の改革および東日本旅客鉄道に関する資料を保存し調査研究を行う。

2.鉄道システムの変遷を鉄道車両などの実物展示を中心に各々の時代背景を交えながら産業史として公開する。

3.鉄道の原理・仕組みと最新の鉄道技術、将来の鉄道技術を子供たちに模型やシミュレーション、遊具を使いながら体験的に学習できる。

 

 

なつかしい車両も多いです。

 

 

スケール感は、他の博物館を圧倒しています。

 

 

ほとんどの車両の中に入れて、うれしいです。

 

 

EF58大好き

 

 

手押しの車両も展示されています。

 

 

日本では珍しい、ラックレールの展示もあります。

 

 

子供向けの施設も半端ない!

 

 

⑤碓氷峠鉄道文化むら(安中)

 

電気機関車の宝庫、そして鉄道の「峠越え」をテーマしたミュージアムが碓氷峠鉄道文化むらです。

JR東日本の信越本線横川 - 軽井沢間の廃止とともに役目を終えた、横川駅に隣接した横川運転区跡地に建設にあります。

 

 

平成11年4月18日に開園。碓氷峠交流記念財団が運営しているそうです。

碓氷峠の歴史や資料、碓氷峠で活躍した電気機関車、その他国鉄時代の貴重な車両などを展示しています。

憧れのデッキつきの機関車、カッコイイっす!前から出入りするっていう発想、今はないですよね。

 

 

なぜ?関門トンネルで活躍したステンレス車両がここにあるの?

 

 

このミュージアムのテーマは、鉄道の「峠越え」です。ドボクの匂いがプンプンします。

 

 

山岳鉄道といえばスイス。

スイス人のアプト氏が考案したので、アプト式と呼ばれています。ラックレール方式のひとつです。

山岳観光王国スイスでは、現在でもあたり前に存在しています。1997年にスイス鉄道を結構乗りつぶしたのですが、アプト式があったかどうかは覚えていません。

 

 

ラックレール式鉄道も様々ですが、この「アプト式」とは、2枚または3枚のラックレールおよびピニオンギアを位相をずらして設置する方式をいいます。複数の歯の位相をずらすことにより駆動力の円滑化および歯の長寿命化を図るとともに、常にピニオンのいずれかの歯がラックレールと深く噛み合っていることにより安全性の向上が図られています。

 

 

碓氷峠越えの歴史がよくわかります。アプト式鉄道を観光列車として復活させてほしいのですが・・・

 

 

⑥リニア鉄道館(名古屋)

 

他の鉄道博物館とは別物で、最新の鉄道技術を紹介しています。鉄道博物館のエリートといった感じです。

さすがJR東海です。

 

 

コンセプトは以下のとおり

 

1.高速鉄道技術の進歩の紹介

2.鉄道が社会に与えた影響について学習する場を提供

3.楽しく遊べるよう模型などを活用し、バリアフリーを徹底した設備

 

開業したばかりの頃、息子と運転シュミレータを体験しました。

 

 

当時凄い人気だったので、抽選で当ってラッキーでした。

 

 

エリートですが、昔の車両も展示しています。ただ展示はビジュアル的にイマイチ・・・

 

 

リニアと新幹線だけに絞ってもよかったんじゃない・・・かな?

 

 

⑦京都鉄道博物館

 

梅小路蒸気機関車を拡張して出来た感じの京都鉄道博物館。他の鉄道博物館と比較して、鉄道をインフラとして意識した展示内容になっていて、鉄道の歴史を知るには最も優れた博物館だと思います。

 

 

コンセプトは以下のとおり

 

1..地域と歩む鉄道文化拠点。「鉄道を基軸とした事業活動を通じた地域の活性化に貢献する」という基本ミッションを掲げ、地域との共生を目指します。
2.博物館として、学校教育、周辺施設など、地域との連携を図り、地域の活性化に寄与するとともに、広く皆様に受け入れられる「憩いの場」となるとともに、「見る、さわる、体験する」ことで誰もが楽しむことができる「学びの場」となることを目指します。
3.先人が築いてきた鉄道の歴史をふまえ、その安全・技術・文化の継承・発展・創造のために活動することで、鉄道事業の社会的意義の浸透を図るとともに、豊かな感性と知性にあふれる社会の一端を担える博物館にします。

 

 

車両展示は、イマイチ・・・中に入れる車両が少なく少し残念ですね。

 

 

しかし、ドボク屋にはうれしい展示がいっぱいです。これは他の博物館にはありません。

 

 

JR西日本だから、安全に関する展示をもっと全面に出してほしかったですね・・・少なすぎる。

 

 

土木工事もしっかり紹介してくれています。ありがたいです。

 

 

圧倒的なのは鉄道模型のジオラマです。鉄道模型ファンにはたまらんやろな~他の博物館を圧倒しています。

 

 

京都鉄道博物館の最大の展示は、やはり蒸気機関車でしょう。

大宮の鉄道博物館の規模と展示がいくら凄いといっても、博物館の価値として捉えると、この動態保存の蒸気機関車の威力には勝てないと思います。

 

 

⑧旧梅小路蒸気機関車館(現京都鉄道博物館)

 

子どもの頃、祖父に連れてきてもらったので、私も子ども達を3回くらい連れてきました。

 

 

私は、蒸気機関車よりヨーロッパの電気機関車が好きなのですが・・・

 

 

やっぱ、カッコイイですよね。

 

 

梅小路蒸気機関車館は、ほぼほぼ昔のまま残ってる。

 

 

⑨九州鉄道記念館

 

平成15年8月9日に開館した九州鉄道記念館、北九州市の門司港駅の近くにあります。

平成18年に子ども達をここに連れてきました。メインは「いのちのたび博物館」でしたが・・・息子は鉄道より恐竜が好きでした。

 

 

ボンネットの「にちりん」、なつかしい。

 

 

憧れの「月光」です。幼い頃、この特急を姫路の市川橋梁の踏切でよだれをたらして見ていました。

祖父が子守で、いつも私を市川の踏切に連れて行ってくれてました。

 

 

ほとんどが山陽本線を走っていた車両なので懐かしいですね。

 

 

私の子どもの頃には、デパートの屋上にこんな感じの乗り物がありましたよね。これに乗っている子どものかわいいこと・・・