1.  笹川流れ北側(越後寒川~勝木)の不思議なトンネル

 

 先日、新潟から山形(庄内)方面に向かったときに、昔から気になっていたことが甦ってきました。

 国の天然記念物でもある笹川流れ。その北側にクルマを走らせると、不思議な光景に出会うのです。

北行き車線は普通の道路なのですが、南行き車線は狭いトンネルというか洞門の中を走るのです。そのトンネルのようなものは、羽越本線のトンネル群とよく似ているのです。あ~これは旧線路跡を道路に転用したのだな~と想像されるのです。

 

 

 南行き車線を走るとこんな感じです。鉄道仕様であることは明らかです。

 

 

 隣に羽越本線が走っていますが、南側が複線トンネルで北側は単線で別々のところを走っています。

 

 

2. 勝木~府屋の不思議なトンネル

 

 今度は府屋付近で2つの放置されたトンネルをみつけました。1つは道路用でもう1つは鉄道用のようです。下の写真では一番左が鉄道用、中間が道路用、右が国道7号線となっています。写真には写っていないのですが、更にその右側に羽越本線が走っていますが、その新線は単線です。

 

 

 ひとつ南側の山を越えるとやはり廃止されたトンネルが確認できます。

 笹川流れから温海温泉まで、ずっと道路側から羽越本線をみていると、複線になったり単線になったり、上下別々の複線になったりと本当に複雑な形態を見せてくれます。一体何があったんでしょうか?

 

 

3. 温海温泉南側(小岩川~あつみ温泉)の不思議なトンネル

 

 温海温泉の南側にある天魄山(てんぱくざん)の南側(鶴岡方面への裏道)を走ると、ここに使われていないトンネルが見えてきます。道路用?鉄道用?立派な複線用トンネルで、少し年期が入っているので結構目立ちます。最初に抱く感想は「もったいない!」です。

 2010年に日本海東北自動車道工事で、この天魄山の未使用トンネルを見つけて不思議に思っていたのですが、2017年になっても何も変わらない姿を見ることになりました。なぜ?こんな立派なトンネルが放置されているのでしょうか・・・

 

 

 この廃線跡と未使用トンネルについて検索してみると、相当有名な場所(廃線マニアにとって)であることがわかりました。また、鉄道ジャーナル誌の今月号でも紹介されていたことを思い出し(立ち読み)、書店で急遽購入することにしました。

 

4. 越後寒川~勝木を詳しく見てみよう

 

 まずはクルマで走ります。不思議な光景で、私のようなマニアックな人間はどうしても調べたくなってしまいます。

 

 

 鉄道の廃線跡を、道路拡幅の変わりに利用できたので、海側に大規模な土木構造物を構築せずにすんだようです。このような柔軟な発想は大切ですよね。

 

 

 羽越本線は、東北日本海の新津~秋田間271.7kmを結び長距離貨物列車が走る幹線鉄道です。全線にわたって電化されていますが、複線区間は138.2kmと約半分となっています。

 複線化工事は、余目~酒田間が1962年完成。新発田~余目間は1964年に着工されたということです。同じころに酒田~秋田間も複線化が決まったようです。私が生まれた1964年にはほぼ全線が複線化される計画が決定したようですが、1983年に国鉄の経営悪化で複線化事業は凍結、工事は中止に追い込まれたようです。

 

 

 

5. 勝木~府屋間を詳しく見てみよう

 

 この区間は地形が複雑で、海岸側がどうなっているのか分からなかったので、ドローンを飛ばす前にSUPで海側を探ってみました。

 

 

 洞窟の向こうに廃線トンネルが見えます。この区間は1982年、新線に切り替えられたようです。

 

 

 海の洞窟探検も楽しいです。

 

 

 ドローンを飛ばしてみました。廃線跡を確認することができます。

 

 

 SUPで入った洞窟と向かいの小さな入り江がトンネルとして向き合っているように見えます。

 

 

 このあたりは大きな川が流れ込んでいないので本当に水が綺麗です。休日に天気が良くてべた凪だとどうしても笹川流れに来たくなります。

 

 

 羽越本線が海岸線ギリギリを通っていたことがわかります。今はやりの観光列車を走らせることを考えると「もったいない」と思ってしまいます。

 

 

 左側に3本のトンネル、そして右下端っこに羽越本線の新線が見えます。この新線のトンネルですが、複線仕様で完成しているのに、単線で暫定使用されています。勝木側の新線トンネルが単線(もう1本は着工前に中止)になってしまったため、勝木~府屋間全線を単線にしているのでしょうが、複雑です。廃線になっている旧線を使えば勝木~府屋間は複線化になったはずなのに・・・

 

 

 府屋方面を見てみます。

 

 

6. 小岩川~あつみ温泉について(羽越本線高速化で変化はあるのか?)

 

 未成線という言葉を知っているでしょうか?

構想段階や計画中の鉄道路線、または建設の段階で中止され実現しなかった鉄道路線のことをいいます。この小岩川~あつみ温泉間の2つのトンネルは、まさに羽越本線の複線化構想の未成線ということなります。なぜ、ここまで立派なトンネルを造っておきながら、何十年も未成線のままなのか?疑問です。

 鉄道ジャーナル誌の2017年11月号の記事によると、1983年に国鉄の経営悪化で工事凍結が決定し、1984年に複線化工事自体が中止されたと記されています。羽越本線の高速化でいろいろな検討策も考えられてきたようですが、ずっとほったらかしのままのようです。

 

 

7. 羽越本線高速化と日本海東北自動車

 

 日本海縦貫線の衰退と日本海東北自動車の延伸で、羽越本線の高速化・複線化は混迷し続けるのでしょうか?しかし、羽越本線の高速化は少しづつ進んでいるようで、まずは新潟駅の新幹線と在来線の同一ホームの乗り換えが近々に実現しそうです。その次に来るのが、小岩川駅 - あつみ温泉駅間かもしれません。振り子車両やフリーゲージトレインの導入とともに、中期的課題として検討されているようです。

 ただ、日本海東北地方の人口減は深刻で、JR東日本という巨大企業であってもこの路線を高速化して維持するのは難しいのではないかと思われます。日本海東北自動が全通するとますます羽越本線の存在意義が薄れてくるのではないのではないでしょうか・・・特に貨物において重要路線であることは間違いないのですが、その動向が注目されます。