ささやかな積み重ね~彼女たちの12年~(超・長文注意)^^; | 妊活コーチ 松本亜樹子 オフィシャルブログ

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こんにちは。NPO法人Fineの松本亜樹子です。

今日は、NPO法人Fine主催 不妊ピア・カウンセラー養成講座
第12期の開講日でした。

今日、スクーリングを受講するために全国から集まったのは
12名の女性。
20代から40代の、不妊体験者の皆さんです。
これから3月の試験まで、講義とスクーリングを受講して
認定ピア・カウンセラーを目指されます。

毎年、開講日には冒頭のオリエンテーションに続き
団体の代表として、ご挨拶をしています。
毎年「何を話そうかなぁ」と、ギリギリまで考え
スライドも使ったり使わなかったり、自由にさせてもらってます。

数年前からは、その日の受講生の皆さんに合わせてお話ししているのですが
今日はかなり持ち時間が短く、
簡単な自己紹介と、毎年必ずお伝えすること、という
ギュッと絞ったエッセンスのみの挨拶となりました。

毎年必ずお伝えすること。

「まずは、自分がしっかりと立ってください」ということです。

Fineが任意団体として立ち上がったのは2004年。
NPO法人を取得したのは2005年。
ピア・カウンセラー養成講座は、2005年の4月にスタートしました。

そのころ日本には、いえ、世界にも
不妊体験者によるカウンセラーの養成講座は、ありませんでした。

でも、Fineの設立準備アンケートでは、77%の当事者が
「カウンセリングが必要だ」といいました。

みんなが必要と言ってる。
困ってる。

ないのなら、つくるしか、ない。

「本当にそんなことできるの?」
「でも、やっぱりカウンセリングは必要!」
「どうやってやるの?」
「わからない。でもとにかく考えよう!なにかやってみよう!」

臨床心理士の先生お二人にアドバイザーとして参画いただき、
試行錯誤の1年間を経て、満を持して開催した、2005年の春。

開講式の感動は、いまだに忘れがたいです。

あれから12年。
こんなに継続できるなんて、あの頃は想像もできませんでした。

ちいさなNPO法人Fine、ボランティア団体の私たちにとって
養成講座の運営は、決してらくなものではありません。
それでも、毎年何としてでも継続してきているのは
「仲間のサポートが必要」と願う不妊当事者が全国にいて
「仲間をサポートしたい」と思うピア・カウンセラーがいるから。
その仲間たちのために、何としてでも、講座を継続していきたい、と
スタッフ一同願って、頑張って続けています。

この12年で、一つだけ確信していることがあります。
それは、「ピア・カウンセラーのむずかしさ」です。

ピアというのは、同じ体験を持つ仲間という意味。
つまり、私たちFineのピアは、「不妊体験者」です。

不妊を体験して、とても悲しい思いをして
だけれども、自分には安心して話せる場や、わかってくれる人がいなかった。
話を聴いてくれる人がいなかった。
ひとりで抱えていて、とってもつらかった

「だからこそ」同じように不妊に悩む人の力になりたい。

ピア・カウンセラーを目指して受講する皆さんは、口をそろえてそうおっしゃいます。

その気持ちは、と~っても、よくわかります。

だけれども「だからこそ」難しいのです。

カウンセリングをするからには、自分自身はその不妊体験で
心が不安定にならないようにしないといけない。

これが「自分がしっかり立つ」ということ。

自分の不妊体験をまだ客観視できないと
講座の途中で辞めてしまうことになってしまいます。
残念なことに、開講からこれまでに、ひじょうに多くの、そういう方を見てきました。
だから、毎年必ず、お話させてもらっています。

「誰かを支えたい。誰かの力になりたい、と願ってここに集まってきた皆さんの気持ちは
素晴しいことだと思います。
ぜひ、そうなっていただきたいと思います。

だから、その前にまず、自分自身が、しっかりと立ってください」。

誰かを支えたかったら、自分が絶対にぐらつかないようにしないといけない。
自分自身の不妊体験を、そこまできちんと自分の中で整理していないと
サポートする側には、回れないのです。

けれど、だからといって、自分の不妊体験をすっかり忘れて
「私はカウンセラーです」になってしまったら、
今度は「ピア」ではなくなってしまいます。


自分の不妊体験は、いつもちゃんと持っていて、ベースになっていて
その思いは決して風化していない。
けれども、その思いを熱く持ちながらも、
自分自身は、絶対にぐらつかないようにしっかりと立って
かつての自分と同じように、悩める仲間の力にならなければならない。

不妊ピア・カウンセラーは、その、ギリギリのバランスで、成り立っています。


すごいなぁ、と、思います。

彼女たちの頑張りは、本当に、すごい。
12年前から、コツコツと、ゆっくりと、でも確実に
活動を続けてきた彼女たちの力は、今、全国に広がって、
小さくてもそれぞれ美しい
花添咲かせたり、実を結ぼうとしています。

12年前は、何もなかったから
「自分たちが欲しいと思っていた、仲間のカウンセラーを、作りたい」
そう思って、集まった。

それが、数年後に、こんな声が聞こえました。
「不妊ピア・カウンセラーを目指して頑張っている人がいる、という話を新聞で見て
 自分も目指したいと思った」
そういって、集ってくれる人が、出てきました。

今日は、思いがけず、とっても嬉しいことに
受講のきっかけとして、こんな声が上がりました!
「自分が通っていたクリニックで、○○さんというピア・カウンセラーさんが講演をされ
それで、自分もこんな風になりたいと思って」
「自分が通っていたクリニックで、○○さんというピア・カウンセラーさんのカウンセリングを受けて、とっても心が落ち着いたので、自分もこんな風になりたいと思って」

初めてこんな声を聴いて、もう、じーーん。(/_;)
感無量で、胸が熱くなりました。

12年前、日本で不妊ピア・カウンセラーが、こんな風に活動できる日が来るなんて
誰が想像したでしょうか。
私だって、ここまでは想像できませんでした。

それを実現したのは、他の誰でもない
ひとりひとりの、ピア・カウンセラーの皆さんです。

卒業後もFineのサポートメンバーとして、カウンセリングチームに所属し
毎月、たゆまない努力と研鑽と活動を積み重ねてきた
Fine認定ピア・カウンセラーの皆です。

みんな、本当に、すごい!
心から、尊敬しています。

広い社会の中では、まだまだ小さな砂粒ぐらいかもしれません。
でも、ゼロからここまで形を作り、
今彼女たちを必要として、毎月電話カウンセリングや面談カウンセリングに
「現在の不妊体験者」の皆さんが集ってくる。
そして、彼女たちが目指した通り「ピア・カウンセラーとして、仲間の力になっている」。

彼女たちの12年に伴走している一人として、
心から拍手を贈りたいです。

皆様、どうぞ、これからも、Fineピア・カウンセラーを
応援していただけますよう、心からお願いいたします。
m(__)m


感動のあまり長くなってしまった
2016年7月23日の夜に・・・

Fine代表 松本亜樹子