モノを買うとは何なのか、ニーズという言葉ではあらわせないモノへのこだわりを纏めた物語です。
第二話 焼肉屋の女将が信じた 真実 の愛
人がモノを買う理由は様々です。しかし、そこにはその商品を使ってしたい“コト”があります。
営業という仕事はたくさんのお客さまと知り合うことができますので、それが今でも自分の財産となっています。
その中でも横浜ではよく知られたフルーツパーラーも営むⅯ社の社長高田さま(仮名)があるときに私の営業所に来られ、
「今度、車を買うことになったんだよ、車が来たら面倒見てね!」と嬉しそうに言いました。
私は勿論、気持ちよく了解したのですが、「いい車ね?・・手に入れたって?・・どんな車だろう?・・」と思ったことを覚えています。
数日経って、約束通り高田社長が車を持ってお店にやってきました。
営業マンは自分が売った車はたいてい覚えているものです。 ベンツ450SLC・・どこかで見覚えがある・・ すぐには気がつきませんでしたが、ナンバーを見てハッとしました。
私はすぐに「社長、この車いったいどこで手に入れたのですか?」と驚いて聞くと 「いやこれね、競売物件なんだよ」とのことです。
競売物件・・・?
まさか・・・?
思い当ることがあったのです。
その日からさかのぼること、10か月ほど前のことです。 ショールームにベンツが欲しいという女性のお客様から電話がかかってきました。
その女性は電話口でこう言いました。
「ベンツの450SLCという車が欲しいのですが。できるだけ早いうちに一度見せてもらえませんか。」
その当時、このタイプのベンツは最高クラスのもので1台1700万円以上です。
私はどこかの車好きなお金持ちのご主人に代わって、奥様が電話をかけてきたのかと思いながら、めぐってきたチャンスに喜び直ぐに了解しました。
翌日、用意したベンツに乗った私を迎えてくれたのは、当時の私よりも10歳ほど年上ではないかと思う女性でした。
女性の隣には、私と同年代の20代後半と思える男性の姿がありました。
女性は男性を弟だと紹介すると、 弟は、何の遠慮もせずに 「そうそう。この車だよ。いいよね~欲しかったんだ」と無邪気に喜んでいます。
試乗の興奮が冷めやらない男性に「この車、欲しいの?・・この車でいいのね」と聞くと、その男性はっきり「この車だ」と答えました。
1700万円以上の車です。
私も何年も車の営業をしていて、その場で即断するということはあまり経験がありませんでしたので、さすがにこの時は、たとえ姉弟であっても、この値段の車を弟のために購入することには違和感がありました。
とは言え、このようなはっきりとした意志表示をされたので、
さぁ、ここからが、一番大事な営業の仕事です。
この車の支払方法についての確認をしなければなりません。
このクラスの車の購入方法については難しい条件が付いてきます。 今ではローンが簡単に使われますが、この時代にはまだローンなどありません。当然支払いが分割になれば信用状況が問われます。
分割にでもなれば営業の仕事が圧倒的に複雑になり負担が増えてしまいます。
話を進めるために弟さんが一人で住んでいるマンションに案内されました。
家(マンション)に入った途端、異様な雰囲気が感じられます。
真っ先に目にしたものが大きなダブルベットです。
一人で寝るには大きすぎます。
そう、まるでラブホテルの部屋に入った感じです。
なんとなくこの二人の関係が本当の兄弟なのかという疑問がうっすらと頭を過りましたが、契約のことが先に立ちそんなこともいつの間にか気にしなくなりました。
お姉さんの職業は飲食店経営。弟は公務員とのこと。
最終的に支払いは現金ということになり、無事に契約をまとめることができました。
契約も終わりほっとして暫く雑談になりましたが、その中で女性が、納車されたら一緒に京都に行くという話をうれしそうにしていた笑顔がとても印象的だったことを覚えています。
いよいよ納車の日です。 納車は、どんな車であってもお客様にとってうれしい瞬間です。
ご自宅までお届けする場合や、ショウルームにお越しいただく場合など、様々ですが、 営業マンもお客様も思いは同じです。
この女性は、弟と一緒にショウルームまでお越しになりました。
弟のためにこれだけ高額な車を購入した女性は、どんな思いでこの日を迎えたのでしょうか。
一緒に京都に行くだけではなくて、たくさんの様々な夢を車と共に思い描いていたのではないでしょうか。
今、まさに、この夢がスタートを切りました。
営業としても、納車が終わればここでひとまず仕事が一段落するものです。
納車後、3~4か月経ったころ。
2人の刑事さんが私の営業所にやってきました。
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物語が長くなるので、
今回はここまでになります。
続きはまた見に来て下さいね!