術前の検査や処置を済ませて、車椅子に乗ったまま手術室へ向かいます。

今まで見た事のない表情をした旦那さんがついてきます。

ふと、「自分もこのまま死ぬかもしれないんだな。」と思ったら、旦那さんの顔が見れなくなりました。

「心配しないで。」って言いたかったけど、言ったら涙が出そうで、6文字が言えませんでした。

ホッペの筋肉だけ使って、かろうじて口角をあげました。

「行ってくるね。」

手術台の上に寝転び、横になりました。
背中に麻酔を打ちます。

「海老のように、背中がこちらに良く見えるように思い切り丸まってください。」

麻酔の激痛、手術の恐怖と、赤ちゃんへの心配でパンパンになっていた自分の心が注射針を刺された瞬間に破裂しました。

感情と涙が一気に噴き出しました。

しばらくすると麻酔が効き始めますが、お腹にメスが入ってくる感覚はわかりました。

肺ができてない赤ちゃんは泣くのかな…?とぼんやり考えていたら、

「オギャー!オギャー!オギャー!」

元気な泣き声がきこえました。

「赤ちゃん、生きてる…」

今度はホッとして、とめどなく涙が溢れました。

「可愛い女の子ですよ。」看護師さんの声がきこえました。