以前、日本で二匹の犬を連れて散歩へ出かけた時に、おかしな体験をしたことがあります。

 

家の近くで徒歩一分ぐらいのところにかなり開けた草地があったのです。ここへは毎夜、犬の散歩に行ってました。その場所は夜でもありますし、近くに街灯もなく、人通りなどはまず無いような場所だったので、犬を放すには良い場所だったのです。

 

その草地で犬達は互いにじゃれ合ったり、駆けたりで自由に遊んでいたのです。犬はオスのドーベルマンピンシャーとクリーム色のメスのスピッツ雑種犬です。

 

このド~ベルマンは私の少ないアルバイト料でためたお金をトホホ、、とはたいて買った犬で、警察犬訓練所にその子犬を頼んでおいて購入したものです。黒光りの精悍なオス犬で走る姿は鹿のように優雅でとても気に入っていたのです。

 

                  ド~ベルマンピンシャー

                      この写真は借り物ですけど、こんな姿です。

 

忠実というか頭の良い犬で私が‷待て“と座って待たせ、遠くへ離れて行っても、ヨシと言うまでよそ見もしないで、ジッと座ったまま動かないのです。すごい集中力を持っていました。

 

雑種の方は知り合いの若いカップルが可愛がっていたのですが、そのカップルが事情で別れることになり、犬を貰ってくれと言われて引き受けたものです。

 

散歩には草地に行くのに、ド~ベルマンは繋いで、スピッツの方は紐なしでトコトコついて歩いていたのです。

 

その夜、道から草地に入って行き、いつものようにド~ベルマンを放し、スピッツと遊ばせていたのです。犬達は適当に駆けまわったり、私は遊んでいる犬達を見たり、道に人は来ないかと暗い中で目を凝らして、交互に見ていたりしていたのですが、、

 

急に犬達が遊びを止めたのです。おまけにスピッツ犬が尻尾と頭を下げて、何かに怯えるようにスゴスゴと自分一人で勝手に帰ろうとするのです。他の私達を置いてです。確かにその姿は犬が何かに怯えている時にとか怒られた時に見せる様子なのです。

 

ド~ベルマンの方はどうかと見やると、その方は帰ろうと歩きだしているスピッツをジーと不思議そうに見ているだけでいつもとそうは変わりはない。私はもうすでにスタスタと怯える様子で勝手に帰ろうと歩いているそのスピッツを呼びとめた。けれど一瞬、振り返っただけで、また逃げるように歩き出す。

                            

 

遊び好きな犬がその途中で自分一人、帰ってしまうなんて、これまで一度も無かった。私は瞬間、、草地の闇の中に何かがいるかも知れないと思ったので、持っていた犬の革紐をびゅんびゅんと自分の身の回りに鞭のように力一杯振り回した。防御のつもりです。

 

急いでスピッツの後を追うように、途中でド~ベルマンを繋いで家に帰ったのです。

 

ところがこれで終わりでは無かった。

 

帰宅してしばらくして家族からその首の傷はどうしたのかと聞かれた。え、と驚いて何がと聞き返すと、右耳の後ろから下にかけて細い赤い糸のような線が10㎝ぐらいだろうか、ついていた。全く新しい傷で古傷にはとうてい見えなかった。

 

けれど皮膚が切れたりの傷にはなってはいないし、痛くも何ともない。爪かなにかで引っ掻いた覚えもない。赤い色は充血はしていたけれど、線そのものは細い糸ぐらいでまぁ、たいしたことは無いから、すぐにもとに戻るだろうと簡単に考えていた。

 

ところがです。またもやこれで終わりでは無かった。

翌日には赤みも引くだろうと軽く考えていたのですが、その線は日ごとに太くなり、とうとう何日か経つうちに、ついに水ぶくれまで持つようになってしまったのです。

 

水ぶくれまで持っては火傷みたいです。何だこりゃ、です。そうこうしているうちに、皮膚まで破れてぐちゅ、ぐちゅになってしまって、中々しつっこい傷になってしまうのです。治るのにひと月以上かかることになってしまいました。たかだか糸のように細かったただの赤い線がです。

 

この赤い線と草地での出来事と関連があるかどうかはいまだに正確には分りませんけど、あの時、何かが起こったかも知れないと疑ってはいます。

 

しかし翌日もまたいつものように、犬を連れてまたあの草地に行きました。今なら絶対に二度と行かないのですけど、、。しかしあの出来事のようなことは幸い、その後は一度も起こらずに済みました。

翌日に連れて行ったのですけど、スピッツの様子も通常と何も変わらない様子で遊んでいたし、怯えた様子も見せなかったのです。犬が勝手に一人で帰ろうとしたこともあれ一度きりで、以後は無かったのです。

 

私の手がけた手乗り文鳥