特徴
外国為替証拠金取引には、外貨預金・外貨建てMMFなど、他の外貨建て金融商品と比較して、以下の特徴がある。
- 多くの外貨建て商品では、通常外貨を買ってから後に売るという取引になるが、外国為替証拠金取引では逆に外貨を売ってから一定期間後に買い戻すことも可能である(いわゆる「売りから入る」取引)。また、日本円(JPYと略する)しか持っていなくても、「米ドル(USD)を売ってユーロ(EUR)を買う」といった取引も可能である。
- レバレッジを利用することによって証拠金の何倍もの外貨を取引することができる。但し、証拠金以上の損失を受けることもある。->追証
- 株式現物取引とは異なり差金決済のため同一通貨を何回でも取引できる。
- 為替レートが同一の時の、売り相場と買い相場(他の外貨商品でいう、電信買相場(TTB)と電信売相場(TTS))の差(スプレッド)が他の金融商品に比べて小さい。
- 金利が高い通貨の買いポジション(ロング)の場合の、金利差による受取スワップポイントも、他の金融商品より有利な場合が多い。(但し、受取スワップポイントによる利益を享受できるのは、買いポジションにある通貨が上昇している時だけで、下降時には受取スワップポイント以上の多大な損失を受ける)
- 一方の貨幣価値が上がると他方の貨幣価値が下がる事から、取引の儲けは必ず他方からの損から成り立っており、株式のように為替市場全体の富が増加する事はないと考えるのが一般的である。しかし、別の考え方も十分に成り立つ。なぜなら、市場全体が投機筋による取引では決してなく、実需筋の取引も無視できないからである。すなわち、外国為替(外貨両替)を行う者全員が投機目的であれば、誰かが得をした分、別の誰かが損をする(「ゼロサム」)ことになる。しかし実際には実需筋による取引も多い。例えば、アメリカに海外旅行に行く日本人が、現地での消費に備えて日本において日本円でドルを買い、アメリカにおいてそのドルを消費した場合、これを損失ないし利得と言いうるのかは疑問なのである。すなわちゼロサム論は、「全取引者が、やがて元の自国通貨に戻そうとする」ことが前提となっているのである。もちろん、FXという投機目的の市場が、実需筋の市場とは完全に切り離されていればゼロサムなのであるが、FXの市場でも、結局は実需筋を含む外国為替市場の価格にほぼ従って取引されているので、そのようなことはない。 実需者による片道取引をも、損失ないし利得と観念するのであればゼロサムだと言えるのであるが、片道取引においては損得を判断すべき基準レートがない。なお、実際は実需が全体の取引に占める割合は1,2割に過ぎないとも言われている。投機筋全体として、プラスとなることもマイナスとなることもあることは言うまでもない。
- 取扱い事業者および外務員は登録制(改正金融先物取引法:2004年12月成立、2005年7月1日施行)であるが、FX事業者の破産や詐欺行為などを事前に予防・担保する法的・財務的規制が十分でない状態であり、委託証拠金が分別管理されていない事業者の場合、預け入れ金が返還されない可能性があるなど事業者リスクを十分検討のうえ配慮する必要がある。証券会社の取り扱うFXについても、通常は分別保管の対象外や日本投資者保護基金の補償対象外となっているので確認する必要がある。なお、委託証拠金が分別管理されているという前提での話であるが、FXの場合、事業者が破綻しても顧客の資産は保護されるため、破綻時に保護対象でない外貨預金より、破綻リスクに対しては強いという見方もある。
課税方法
外国為替証拠金取引(FX)は取引方法により2種類の課税方法に分かれる。なお、その他の外国為替取引では、為替差益に対する課税は外貨預金の場合は雑所得(総合課税)、外貨MMFの場合は非課税となり、利子に対する課税は外貨預金・外貨MMFとも利子所得(所得税・住民税合わせて20%の源泉分離課税)となる。
- 店頭(相対)取引: 差益・スワップポイントとも雑所得(総合課税)。投資収益(日経平均先物、商品先物等の先物取引に係る雑所得等)との損益通算・損失繰越は不可。ただし、投資収益以外の雑所得との損益通算は可能。
- 取引所取引(2009年7月現在、くりっく365(東京金融取引所)と大証FX(大阪証券取引所)): 差益・スワップポイントとも雑所得(所得税・住民税合わせて20%の申告分離課税)。他の投資収益(株価指数先物、商品先物等の先物取引に係る雑所得等)との損益通算や3年間の損失繰越が可能。
レバレッジ
外国為替証拠金取引では、レバレッジを利用することにより、証拠金以上の外貨を取引することができる。レバレッジは、取引業者との契約によって定まる最大レバレッジと、預け入れている証拠金と実際の取引量の比率である実効レバレッジがあるのだが、両者はしばしば混同される。実効レバレッジの倍率を高くするほど為替相場の変動によるリスクは高まる。最大レバレッジは、(実効レバレッジが同じであれば)高いほど後述するロスカット(LC)が起きにくくなって、取引余力が大きくなる。取引業者によっては500倍もの高レバレッジ[1]も設定可能であるが、100倍以上の実効レバレッジではロスカット(LC)されやすくリスクが高いとされる[2]。逆に証拠金と同額の外貨を取引する(レバレッジ1倍)という外貨預金に近い比較的低リスクな取引もできる。
仮に実効レバレッジが100倍で取引した場合、1%の変動(1ドル=100円から1ドル=101円)が100%の変動になる。利益なら証拠金が2倍になるが損失なら証拠金全額を失う。
高い実効レバレッジであるほど、リターンが高まる分リスクが高まることを理解しなければならない。注文後はすぐにストップロス(逆指し値)を必ず使い、被害を最小限に留めることが大切である。
実際には商品先物の証拠金取引と同様、損失が一定額を超えると、ロスカットルールによって強制的に反対売買がなされる。またそれよりも損失の小さい段階で追加証拠金の差し入れ(追証)を請求される(マージンコール)場合もある。ロスカット判断は取引時間中はほぼリアルタイムで行われているが、システム状態によっては必ずしもリアルタイムとならない場合もあるほか、週明けに大きな変動があることもあるため、特に高い実効レバレッジの損切りではロスカットルール以上の損失が発生するケースも多い。
外国為替を原資産とした場合、そもそも通貨の両替から派生しているが故に、上場の有価証券とは本来的にその性質が異なる。ここにおいて、レバレッジの概念は想定元本のみならず評価損益をどの程度の頻度で管理すべきかというきわめて高度な信用リスク管理と表裏一体であるがゆえに、この部分を行政・立法という公権力若しくは業界団体による自主ルールでの制定を行おうとする試みがあるが、一方でリスク管理手法は各金融機関によって大きく異なるというのが実状である。将来、最大レバレッジ25倍の規制が金融庁より導入される予定であるが、金融庁が投資家保護を目的として掲げているにもかかわらず、投資家の大半はレバレッジ規制導入に批判的である。
ロング・ショート
外国為替証拠金取引では、「買い」の方の通貨をロング、「売り」の方の通貨をショート、と呼ぶ。常に何らかの通貨を売り、何らかの通貨を買う、という取引をする。これは、日本円でバナナを買う際に、バナナを買って日本円を売っているわけでもあるのと同様である。外国為替証拠金取引ではバナナの代わりに通貨を用いており、日本円を売って米ドルを買う、米ドルを買ってユーロを売る、というような取引をしている。上記の例では順に、ドルロング円ショート(またはドル円ロング)、ユーロショートドルロング(またはユーロドルショート)という言い方になる。
通貨のペアはUSD/JPY、EUR/JPY、EUR/USDなどと表記が決まっているので、「ドル円ロング」といえば円はショートされている。同様に「ユーロドルショート」と言えば、ドルはロングされている。ただし同じ取引を、円ドルショート、ドルユーロロングなどという言い方は慣例としてしない。
外国為替証拠金取引の例
1ドル=120円、レバレッジ20倍で取引する場合、60万円(5000ドル相当の円)を証拠金として預託すると、5000ドル×20倍=10万ドルの取引が可能となる。つまり、証拠金は取引額の5%になる。1ドル=120円のときに取引開始して10万ドルを買い、その後、円高となって1ドル=115円になったとする。このときの収支は、
- 1ドルあたり 115円-120円=-5円 であるから、10万ドルでは50万円の損失である。
- また、証拠金は1ドル=120円のときに、5000ドルであるから60万円である。
- 初めの証拠金の60万円に対して50万円の損失を差し引くと、残るのは10万円だけであり、初めの1/6となる。
上記と逆に、円安となって1ドル=125円になった場合は、50万円の利益となる。つまり、初めの証拠金の60万円が110万円となり、およそ2倍となる。
一部の取扱通貨について
近年成長著しい中国の元を取り扱っている業者は少なく、扱っていてもスワップ金利が付かない場合や、中にはスワップ金利が売り買い共にマイナスというケースもある。これは、中国元の元市場が先進国の通貨に比べて自由化されておらず、通常の方法で取引できないためである。
主なリスク
以下のようなリスクが指摘されている[3]
- 相場変動リスク
- 相場の変動がある以上、利益が期待できる反面、損失を受ける場合がある。証拠金の何倍もの取引を行うことができるため、損失が預託した証拠金を超え、さらなる証拠金を請求されることもある。
- 流動性リスク
- 外国為替は1日約300兆円取引されているが、短期間に大量の注文を出した際は、希望した金額で取引が成立しないリスクがある。
- システムリスク
- インターネットなどのシステムを通じて取引を行う際のリスクである。つまり、証券会社によっては、毎朝、スワップポイントをつけるタイミングで、メンテナンスを行う証券会社がある。そして、その際、その時間帯に、損切りの逆指値も自動ロスカットの処理も行わない証券会社がある。そのため、その時間帯に巨額の損失が発生する可能性がある。場合によっては、自動ロスカットが効かなかったため、追証となることもある。このような証券会社でデイトレード以外を行う場合は注意が必要である。2009年現在、そのような証券会社の例として、外為オンラインなどがある。
- 信用リスク
- 業者が破綻などすれば客も損失を被るおそれがある。例えば、客から委託された証拠金を、自社の資産とは別勘定で信託銀行に信託分別管理するといった保全管理をしていない業者の場合、破綻した際には預託していた証拠金が戻ることは期待できない。エフエックス札幌では、取引者が持っているポジションが強制清算されて、かつ証拠金が返金されない事態が発生している。業者によって証拠金の(保全)管理方法が異なるので、約款などで確認する必要がある。また、一部分の信託保全か、または、100%信託保全かどうか、どこの銀行に信託保全しているかも確認する必要がある。
金融商品販売法の適用
本取引は、2004年4月1日施行の「金融商品の販売等に関する法律」(「金融商品販売法」)の改正により、「直物為替先渡取引」に該当することが明確になった。(金融商品販売法 第2条1項12号、同法施行令 第4条)
直物為替先渡し取引とは、通常スポット取引とされているもので二営業日後(本邦の休日のみならず、原則として二つの国の重複する営業日)に該当する。 したがって、空港などである通貨とある通貨をその場で両替する行為は、該当しない。 また、直物為替先渡取引が該当すると明確になったが故に、一般投資家への事前のリスク説明ばかりか、担保金等の取り扱いも厳格に適用され、有担保が今後の主体になりうる。 ここにおいて既存の与信取引の取り扱いが大きく影響を受けるのではないかという危惧が横たわっている。
このため、業者はリスク等に対する説明義務が課せられる。説明が尽くされておらず顧客が被害を受けた場合は、業者は損害賠償責任を負うことになる。(同法 第3条1項2号、第4条)
法規制
本取引は、かつては取引に関する法律(いわゆる「業法」)がなく規制もなかったため、多額の手数料を顧客から騙し取るといった悪徳業者が多発した。2005年7月1日に金融先物取引法が改正されたことで以下の規制が設けられたが、過当競争状態になっている証券会社などでのトラブルや、本取引を騙っての詐欺事件が後を絶たない。
- 業者は登録制となり、金融庁の監督下に置かれるようになった。
- 以下の禁止行為が設けられた。
- 不招請勧誘の禁止
- 契約をしない旨の意思表示をした人に対する再勧誘の禁止
- 断定的判断を提供しての勧誘の禁止
- 広告規制
- 手数料やリスクなどについての表示を義務づけられた。
- 書面の交付義務
- 契約締結前、取引成立、証拠金受領時にそれぞれ書面の交付が義務づけられた。
- 外務員が登録制となった。
この規制は、2007年9月30日に施行された金融商品取引法の一部として再構成された。
問題点
FX取引を巡って、所得税の脱税や申告漏れが多数報告され、納税意識の低さが問題視されている。 取引所取引は20%の申告分離課税だが、その他の店頭取引は雑所得として総合課税の対象となる。 同じような取引でも税率に違いがでるなど、制度上の問題がないわけではない。
なお、2009年1月から、取引所取引だけではなく、店頭取引についても、支払調書が税務署に提出されることとなった。
注文の処理の仕方
FX取扱い会社が注文を処理する方法には複数ある。FX事業者によって異なる。
- 相対取引 - 直接売り買いする人同士を結びつけるのではなく、外国為替を売り買いする人は、FX会社と売り買いする(相対取引、OTC-Over The Counter)。大半のFX事業者はマーケットメイカー方式である。FX事業者はその注文を受けて、カバー銀行などに発注する。流動性をFX事業者が保証するが、その代わり、大きなロット数を受け付けない場合が多い。スプレッドが固定のFX事業者は主にこのタイプ。
- ECN(電子証券取引ネットワーク) - Electronic Communications Network。電子取引システムによる私設の取引所。売りと買いを直接結びつける。気配値に対するロット数が公開されていることが多い。マーケットメイカー方式よりも、大きなロット数を受け付けることが多いが、逆に最小取引金額が大きめな場合もある。自分の取引所ではさばききれない注文の場合、流動性確保のため、ギブアップ制度により、よその銀行や取引所に注文を流すこともある。海外では私設ECNマーケットが複数存在するが、日本では公設(くりっく365)によるECNのみ。
- NDD - No Dealing Desk。注文を受けたら、他の流動性を提供する会社に注文を流す。他のカバー銀行などから、もっとも条件のよい値段を客に提示する。