いったいどこから間違えたんだろう、私は。
午後十一時真夏の夜
薄暗い夜も更けてきたころ。深い森の中は月明かりが遮断させる。
夏のセミは朝も夜も関係ないらしい。ときおりなくとりの声が新鮮さを感じさせる。
暗いくらいその中に
赤い点が一粒、遠目に見えた。端末が灯る夜。ときおり服風が日をゆるめかし、二人の面影が見える。
一人は体のいい中年と、少し痩せ気味の青年。二人とも腰に猟銃を吊って、型にベルトをかけ固定させていた。腰のベルトには巾着袋がぶら下がって、中には弾が数発。火は中年が持っていた。二人とも恰好はとてもラフで、草履は改良された足に紐を結び付け走りやすくされていた。
「気をつけろ。さっき一発打ち込んだが、それでもひるむことなく走って逃げた。つまり、あと軽く見積もって五発だ。
確実に仕留めるぞ。我々の顔を持たせるためだ。なんとしてもだ。」
中年の男は厳つい顔をしてそういった。火の明かりがよりいっそう顔の影を濃くし目が獰猛に光のが見えた。
若い男は貌をよりいっそう険しくし固唾を飲んだ。緊張によって腕が少し震えて、目が不審に辺りをキョロキョロと見回していた。
慎重に、一歩ずつ森に足を踏み入れていく二人を、近くの木々から多くの鳥が鋭い目で睨んでいた。
「少し、疲れたな」
森の中心部に向かって走り数十分が既に経っていた。
歩き疲れながら、遠目で月明かりが刺している空間を見つけた。
森の中に円形のサークルがあった。さほど広くもない半径が三メートルほどの場所で、
星がよく見える場所だった。乾燥した固い地面には雑草や石がなく、落ちているのは空から時折落ちてくる
葉っぱぐらいだった。
サークルの中央にはところどころが丸い少し大きな石があった。
そして、そこには一人の人影が石の上で鎮座していた
「やあ、久しぶり」
「………」
「…やっぱり、駄目だったんだね」
「……」
「でも、仕様がないよ。結局は人と狐、もとい化け者。交易はあっても、馴れ初めは難しい」
「別に、…好きだったわけではない」
「なら何故?何故にあんなに固執したんだい」
そこから先は、私は何も喋らなかった。岩の近くに寝そべり、ゆっくり目をつむった。
「そろそろ起きてよ!」
そう耳元で怒鳴られ、鬱陶しくも体を動かす。
「なにさ、五月蠅いな。まだ眠いんだよ。黙っていてくれ。」
頭がまだ少し痛いし、胸部の傷もまだ痛む。血は止まっていた。
「なっ!五月蠅いとはなんぞや!君が連れ込んできた猟師が未だに帰らないから森の動物や虫は困っているのに、君はもしかしてのもしかして、朝まで寝ようとしたよね!?さっさと退治してよ!こんな夜更けまで迷惑を食らっているのはこっちなんだからね!?お子さん持ちの親だって明日は朝早いんだか。」
「ちょっと、聞いてるの!?早く追い出してよ!君の責任は君がとるしかないんだから!僕は君に何もしてやれないんだよ!」
「手伝いだなんて、ほっとけば時機に帰るだろ?」
鬱陶しく片目を開けて見やるとギョッとした。
直ぐ近くに口をへの字に、むすっとした表情でこっちを睨んでいる顔があった。
「帰ってもまた明日、明後日にまた探索しに来るでしょ‼」
耳元でそう怒鳴られて耳が痛い。キンキンするよ。
はあ、いつもどおりだ。いつもどおり、やっぱりお前はお前らしい。
態度も声も大きい。煙たくされてもいつも付きまとってくる。
嗚呼、普通なことが一番なのか。
月は穏やかに光を放ち、風が穏やかに髪をたなびかせる。
草が音をたてながら揺らめく。
私はきれいな月に見蕩れていた。
「………ふう」
彼女の小顔にきれいな月の光が当たる。優しく微笑み私を送り届けてくれる。
「行っていきます」
「行ってらっしゃい」