「みんなのひっこし」 へい太
空っぽになった家は
背中が縦に割れたセミの抜け殻
背中の殻を打ち破り 白い命があらわになる
打つ蝉の身は
市中心部の高層マンションに移り住む
空中都市からの眺めは
街と空が調和しているはずなのに
羽の生えた背中がまた閉じて
茶色く変色してゆく
鬱にこもった蝉の命
羽化できぬヒトは
こうして羽を持つようになったけれど
羽ばたく前に
再び殻に閉じこもり
もがいている
遷都してきた空蝉の命は最早
大切にしまっておく場所もなく
むき出しのままさらされて
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